物価が上がったり電気代が上がったりと、日常のなかで「出ていくお金が増えてる…」と感じることの多い2023年のはじめ。そんななか、2023年10月に酒税法改正によりビールの酒税が変わることを知っていますか?
それに伴い、ビールの値段は引き上がるのか、はたまた引き下がるのか。さらに、「新ジャンル」や「発泡酒」はどうなるのか。ビール好きのみなさんが気になる酒税や値段についてまとめました!
・そもそもビール・発泡酒・新ジャンルの違いって?
・10月の酒税法改正で、ビールは値上げ?値下げ?
・今後はビール系飲料類の値段が統一されていく
・「より安いもの」から「より好きなもの」を選べる時代に
そもそもビール・発泡酒・新ジャンルの違いって?
ビール、発泡酒、新ジャンル。
グラスに注いだら一見違いがわからないかもしれないこれらのビール系飲料。
店頭で値段を眺めてみるとそれぞれ相場が異なるため、「今日は特別な日だからちょっと高めのビールにしよう」「今月はピンチだから手ごろな新ジャンル」など、シチュエーションによって買うものを変えていた人も少なくないはず。
でも、具体的には何がどう違うのかあまり知らない…という方へ、まずは「ビール」と「発泡酒」、「新ジャンル」の違いをさくっとおさらい!
■「ビール」の定義
「ビール」はご存知のとおり麦芽、ホップ・水を原料として発酵させたもののことをいいます。
そのうえで、麦芽の使用割合が100%の場合はもちろん「ビール」。さらに、麦芽の割合が50%以上、かつ定められた副原料が5%におさめられているものが「ビール」と定められています。
ビールで使用できる特定の副原料はこちら。
- 【ビールに使用できる副原料】
①麦、米、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、デンプン、糖類、または苦味料もしくは着色料
②果実・果汁や香味料
③コリアンダー・コリアンダーシード
③香辛料(胡椒、山椒、シナモンなど)
④ハーブ(カモミール、バジル、レモングラスなど)
⑤野菜(かんしょ、かぼちゃなど)
⑥そば、ごま
⑦含糖質物(はちみつ、黒蜜など)、食塩、みそ
⑧花または茶、コーヒー、ココア(これらの調整品を含む)
⑨牡蠣、こんぶ、わかめ、かつお節
■「発泡酒」の定義
麦芽の割合が50%以上でも、上記に定められた副原料以外のものを使った場合は「発泡酒」に。また、麦芽の使用割合が50%未満のものも「発泡酒」に該当します。
さらに、「発泡酒」は麦芽の含有割合によって税率も3つにわけられていて、「50%以上」「25%以上50%未満」「25%未満」で税金も変わり、「50%以上」になると、ビールと同じ酒税がかかります。
…ここまででも十分ややこしいですね。嗜好品であるからこその使命なのだろうかとも思ったりしますが、「ビール」「発泡酒」だけでもこれだけの違いがあります。
■「新ジャンル」の定義
そして「新ジャンル」はというと、麦芽ではなく大豆やえんどうを発酵させたり、「発泡酒」に、大麦や小麦を発酵させたスピリッツを加えたもの。そのため、「ビール」「発泡酒」「新ジャンル」のなかでは、酒税がこれまで一番低く設定されていました。
“麦芽”がどれだけ含まれているか、副原料は何が入っているのかで決まっていたビール系飲料の酒税。では、来る2023年10月に「ビール」の酒税はどのように変わるのでしょうか。
2023年10月の酒税法改正で、ビールは値上げ?値下げ?
2023年10月の酒税法改正によって、「ビール」の酒税が変わります。
では「ビール」の酒税は、引き上がるのか、引き下がるのか。答えは…
2020年10月から70円(350ml換算)になったビールの酒税ですが、2023年10月には63.35円となり、2023年2月現在と比べると6.65円の引き下げに! これによって、ビールの価格は下がる見込みです。
では、「発泡酒」と「新ジャンル」はどうなるのか。
2023年10月の時点で、「発泡酒」の酒税はこれまでと同じ46.99円で変わらず。
では「新ジャンル」はというと、2023年10月に、これまで「新ジャンル」として定義されていたものが「発泡酒」の品目に取り込まれることに。
つまり、これまで通り「新ジャンル」の製法でつくり続けた場合、「新ジャンル」の酒税37.8円→「発泡酒」の酒税46.99円となり、実質酒税が上がることになります。
「発泡酒」は引き上がり、「新ジャンル」という呼称はなくなって、「ビール」のみ引き下がる。でも、2026年にはさらなる続報があるんです。
今後はビール系飲料類の値段が統一されていく
酒税の上げ下げについて、ここ最近よく聞くという人もいるのではないでしょうか。
じつは、酒税改正は2020年10月から2026年10月にかけて、段階的に行われているのです。
その理由としては、似ている酒類、今回取り上げている部分でいうとビール系飲料の「ビール」「発泡酒」「新ジャンル」の税率格差があることで、商品開発や販売数量に影響を与えているという考えではじまったそう。
酒類間の税負担の公平性を回復するなどの観点から、税収中立(減収分を増税による増収分で補う必要があるという考え方)のもと、2026年10月の税率一本化に向け、6年かけて酒税が変更されているのです。
2020年9月時点での「ビール」「発泡酒」「新ジャンル」を比べると、ビールと発泡酒では30.01円もビールが高く、ビールと新ジャンルについては49円も酒税に差がありました。
しかし、2026年には酒税格差がなくなり、一律の54.25円となります。
手ごろで手に取りやすいと言われていた「発泡酒」や「新ジャンル」の税率は段階的に引き上がり、「ビール」は2020年9月以前と比べると22.75円も税率が引き下がるのです。
これまでは「安いから」という理由で「発泡酒」や「新ジャンル」を手にしていた人も、税率の違いによる販売価格の差を気にすることなく、「味わい」に注目して手に取ることができるのは、飲み手にとっては嬉しい限りです。
「より安いもの」から「より好きなもの」を選べる時代に
これまでコンビニやスーパーでビール系飲料を買おうと思ったとき、「安いものを買おう」という第一思考があったとしたら、これからは「(値段が同じなら)おいしいもの・好きなものを買おう」という思考に変わっていくのではないでしょうか。
ビールも発泡酒も新ジャンルも、メーカーや醸造家が試行錯誤しよりよいものをという思いで開発されたもの。今後はさらにさまざまな味わいのものが生まれ、新しいものが世に放たれていくのだろうかと考えると、楽しみな気持ちが止まりません。
2023年10月の動きはもちろん、2026年10月の税率一本化も要注目しておきたいところです。値段ももちろんですが、どんな味わいのものが展開されていくのか、今後が見逃せません。