愛する者を失った人間の喪失感は何が癒すのか。

悲しみの暗い落とし穴に落ちててしまった人間は、どうやって穴をよじ登り再びその目に光を見るのか。

この映画は、6歳の我が子を失うという悲劇を経験した女性が、過去と決別できないまま彷徨い、やがて未来へと確かに歩き出そうとする、再生の物語。

映画の冒頭は、監督が2017年に制作し、世界各国の映画祭で50以上もの賞を受賞した15分間の短編がほぼそのまま使用されている。

そこでは、遠く離れた地から1本の電話で助けを求めてくる息子と母の緊迫感に溢れたやり取りが描かれる。

子を持つ親なら誰もが想像すらしたくないような恐怖の描写、そのインパクトと余韻は、その後映画が10年後に時間軸を移しても、容易には消えない。

息子が失踪した外国の海辺に10年間住みつき働いている主人公の表情はどこか死んでいて、10年の歳月ですら彼女を癒すに足りなかったことを物語る。

生気に欠けた彼女が海辺で息子の面影のある少年と出会い、親交を深めていく過程は、痛々しさと愛おしさに満ちているが、一方で2人の関係が一体どこに行き着くのかは全く想像ができない。

まるで海辺に寄せては返す波と同じでどこまでも終わりがないようにも思える。

そういう意味ではミステリーの要素も強いが、2人の関係の中に描かれるものは、理屈では説明できない、人が人を癒す愛だ。

ここにまさに、主人公を変人扱いする周囲の人たちはもちろん、主人公を心から支えようとしている今の交際相手ですら癒せない主人公の深い傷が浮き彫りになる。

この世にもう存在しない息子と触れ合うような追体験に身を任せながら、それでも主人公は悲しみの先を歩む決心を固め、行動する。

その凛々しくも爽やかな表情。

そこには人が前を向いて生きるための癒しと、赦しの希望がただ美しく宿っていた。

 

『おもかげ』 あらすじ

エレナは離婚した元夫と旅行中の6歳の息子から「パパが戻ってこない」という電話を受ける。ひと気のないフランスの海辺から掛かってきた電話が、息子の声を聞いた最後だった。10年後、エレナはその海辺のレストランで働いていた。ある日、息子の面影を宿したフランス人の少年ジャンと出会う。エレナを慕うジャンは彼女の元を頻繁に訪れるようになるが、そんな2人の関係は、周囲に混乱と戸惑いをもたらしていった――。

■監督・脚本:ロドリゴ・ソロゴイェン
■共同脚本:イサベル・ペーニャ 
■出演:マルタ・ニエト、ジュール・ポリエ、アレックス・ブレンデミュール 他
■配給:ハピネット
■配給協力:コピアポア・フィルム

©Manolo Pavón

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情報提供元:YESNEWS
記事名:「【レビュー】我が子を失った母親が、我が子を想起させる少年と出会う―『おもかげ』