
歌舞伎俳優尾上松緑(50)坂東亀蔵(46)、講釈師神田松鯉(82)が27日、都内で、「四月大歌舞伎」(4月3~25日、東京・歌舞伎座)で上演する、講談を歌舞伎化した新作「無筆の出世」について取材に応じた。
文字の読めない主人公が、仕えていた主人の元を出奔した後に努力して出世する物語。松緑が手がける講談からの歌舞伎化作品は、3作目となる。
松緑は「講談と歌舞伎が本当にいい意味で融合できるように、いろいろと知恵を絞っています。講談ファンの方々にも、歌舞伎ファンの人たちにも喜んでもらえるように作っています」と話し「歌舞伎にしたい講談はまだまだある」とした。
講談からの歌舞伎化は、「荒川十太夫」「俵星玄蕃」に続く。「無筆の出世」も含め、どの作品もまっすぐな主人公が魅力的。松緑は「割とど真ん中の、ストレートな感情を持っている人たちなので、物事を考えすぎてしまう人間からしてみるとあこがれのようなものがある」と話し、さらに「私は不器用な人間なので、その役で人生を歩んでいるつもりでやらないと、舞台の上に出ていけないタイプなので、そういう意味では3作ともに入り込みやすい役でございます」と解説した。
公演期間中の水曜日に主人公を演じる亀蔵は「ダブルキャストでと聞いた時、正直驚きました。松緑さんが講談を歌舞伎化することに熱意を持ってやっておられるのを知っているので、僕がやっていいのかなと思いました」と言った上で、「台本を読み込んでいくうち、(主人公が)一生懸命に生きているのをお客さまに伝えられるのではないかなと思っています」と話した。
松緑は「すでに2人での稽古は始まっていますが、キャラクターの違いが出ている。かなりおもしろくなると思います」と手応えを語った。
松鯉は講談の提供だけでなく出演もする。「歌舞伎座は日本のお芝居の殿堂ですから、出していただくと思うと本当にありがたい。頑張ります!」と意気込みを語った。かつて「三階さん」と呼ばれる名題下の歌舞伎役者だったこともあり「歌舞伎や歌舞伎座には思い出が残っています」と感慨深げだった。