落語家桂文枝(81)が8日、大阪・池田で審査委員長を務める 「第16回 社会人落語日本一決定戦」に出席した。
決勝戦は10人で行われ、神戸市の鍼灸マッサージ師宮永真也さん(45=高座名呆っ人)が、自身の職業にちなみ、自由の女神や考える人に鍼(はり)治療を施すネタを披露し優勝した。
宮永さんは20歳の時に、徐々に視力が失われる網膜色素変性症と診断され、現在は明るさがうっすらと分かる程度。落語との出会いは、図書館で桂枝雀さんの落語「崇徳院(すとくいん)」に出会ったことだった。
社会人落語には十数回参加。決勝進出は2回目で「優勝しか狙ってなかった」
前回の決勝進出時はセリフが飛んでしまったこともあり、「今回は失敗しないように。お客さんにも喜んでもらえた。所作や声が聞こえやすいように」と基本的なことを意識した。結果につながり、「いまだに現実味がない。夢か現実かよく分からない」と夢見ごこちだった。
文枝は「ダントツだった。リアリティーがすごく感じられた。発想がおもしろかった」と評価。「ただただ笑わしたら良いというものでもないので、これから人情とか工夫してもらえれば」と、さらなる深みに期待した。
社会人落語については「パイロットさんやお医者さん、学校の先生がいたりする。そういう人の周りで起こることは僕らはまったく発想できない。それぞれの仕事を生かして落語をされているのが社会人らしい」と面白さを語った。
一方、プロの世界では、先日発表された繁昌亭大賞で弟子の三実が奨励賞を受賞したが、大賞は12年ぶりに「該当者なし」となった。
文枝は「若い落語家も頑張っていると思うが、皆さんに負けないようにもっともっと頑張ってほしい。私も28歳の時に、2つ上に(2代目)春蝶さんがいて、その2つ上に枝雀さんがいて、その2つ上に(笑福亭)仁鶴さんがいた。そういう若い人の勢いが上方落語を盛り上げた。三実とか二葉さんとか、そういう人がもっともっと出てきて盛り上げてほしい」と奮起を期待していた。