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温泉ワーケーションを推進するBIGLOBEが 別府の温泉旅館でオンライン記者発表会を実施


「温泉ワーケーション」を推進するため、2021年3月17日(水)に「ONESEN WORK」というサイトをグランドオープンさせた通信大手のビッグローブ株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:有泉健、以下BIGLOBE)。同日東京で行われた記者会見に続き、23日(火)には大分県の別府温泉でオンライン記者発表会を行いました。会場にはワーケーション中の有泉健社長や長野恭紘別府市長が登壇。さらには、実際にワーケーションを行っているビジネスマンや温泉マニアも出席し、温泉でワーケーションを行う効果について検証。まさに温泉ワーケーションの最前線からの中継となりました。

現地の人たちとのリレーションから生み出される“something”に期待

今回のオンライン会見は、別府市の築90年の日本旅館「山田別荘」より配信されました。その非日常の空間でまず有泉社長が語ったのは、今回の取り組みの背景です。

1つ目は同社がオフィスと在宅、サテライトオフィスを活用したハイブリッドの働き方を実践していること。2つ目は事業として光回線、モバイル、Wi-Fiを提供していること。そして3つ目が「温泉大賞」です。

温泉大賞は同社が12年に渡り主催している人気温泉ランキングイベントですが(ちなみに別府温泉は不動の西の横綱)、このコロナ災禍で状況が一変。温泉地に観光客が足を運ばなくなったのは周知の通りです。そこで温泉大賞のネクストノーマルとすべく、目をつけたのが“温泉ワーケーション”です。

その発想の元になったのが、同社社員へのテレワークに関する意識調査です。それによると、おおむね満足しているけれど不満な点もある、特に64%の社員が「コミュニケーションが取りにくい」という不満を抱えているという事が分かりました。具体的には「言いたいことが伝わらない」「事が進まない」「経験できなくてなかなか育たない」といったストレスが現場に現れていたのです。

こうしたテレワークという非対面でのワークスタイルにより生み出されたたストレス、ペインを、温泉ワーケーションなら解消できるのではないか? さらには温泉地にも平日に連泊客を誘致できるメリットがあるだろうと、同社が導き出したのが「ワーケーションで三方よし」という仮説です。

企業にとってはハイブリッドな働き方の提供と健康経営、社員にとってはストレスからの解放と非日常による発想の転換、そして温泉地にとっては平日連泊のニーズ──この“ウィンウィンウィン”が回る構図は、まさに「三方よし」です。

実際、同社社員で実験的に温泉ワーケーションを行ったところ、感覚的に「スッキリした」ということ以外に、医科学的にも自律神経のバランスが好転することがわかりました。さらに社員のモチベーションやエンゲージメント、会社に対するロイヤリティーなどの向上にも寄与するというデータが出たそうです(検証実験の成果については3月17日に行われた記者発表の記事をご覧下さい)。

こうしたデータをより一般化させ、ワーケーションを浸透させるために、同社では「効果検証・生声とデータを収集」と「試しやすい環境づくり」に取り組むことをミッションとしています。そのために立ち上げたのが「ONESEN WORK」というサイトです。

「ONESEN WORK」は、法人企業と温泉地・温泉宿とをマッチングさせるのが目的のサイトです。「目標として1000を越える宿を登録する」と有泉社長は宣言しました。

さらにこのサイトを活用して開始したのが「TRY ONSEN WORKATION」プログラムで、〈宿・温泉地向け〉〈ワーケーション実施企業向け〉があります。

宿・温泉地に対しては、リモートワーク・テレワークの通信環境のチェックや整備の援助を行い、サイトに登録することにより企業とのマッチングを支援します。企業に対しては、その中から温泉地・温泉宿を選んでもらい、実際にワーケーションを行ってもらいます。そして、ワーケーションに関わる宿泊費、ヘルスチェック費用はBIGLOBEが負担します。

このプログラムはすでに開始しており、第1弾が静岡県の伊東温泉、そして第2弾が今回の会場の地である別府温泉郷です。別府温泉郷では、「TRY ONSEN WORKATIONプログラム募集」「ワーケーション研究拠点を設置」を行うとしています。

特に注目されるのはワーケーション研究拠点の設置です。有泉社長は、「現地の企業の方々、学生の方々、様々な方と交流を持ち、そのリレーションからsomething new、 something surpriseが生まれて欲しい」と期待を寄せます。

別府では“宇宙”をテーマにした体験プログラムも

続いて、BIGLOBE 社長室・芳賀耕平氏より、別府温泉郷での「TRY ONSEN WORKATIONプログラム」の内容が発表されました。

大変ユニークだったのが体験プログラム。1つ目が「宇宙ビジネスワークショップ」、2つ目が「地獄蒸しによるヘルシー食体験」です。

「宇宙ビジネスワークショップ」は、大分空港がアジア初の宇宙港の候補になったことに起因します。今後大分では宇宙ビジネスが盛んになることを見込み、スペースポートジャパン理事の青木英剛氏、片山俊大氏を講師に、また宇宙ビジネスに関心がある地元企業の方々も呼び、企業交流プログラムという形で行う予定です。

「地獄蒸しによるヘルシー食体験」は、別府の鉄輪温泉エリアでの名物である温泉蒸気の蒸し料理「地獄蒸し」がモチーフになっています。地獄蒸しは温泉のミネラルが含まれるため、栄養価を落とさずミネラルを摂取でき、塩味も感じるため調味料による体への負荷も少ないというメリットがあります。

有泉社長からも発表があった「ワーケーションスペース」の設置についても詳しく説明がありました。この施設では、別府での温泉ワーケーションの魅力開発とエビデンスづくり、並びに各宿泊施設のWi-Fi 等ネットワーク課題の解決の支援に取り組むそうです。

芳賀氏は、「これらの活動を通して温泉ワーケーションの普及に貢献し、ひいては新たな旅行需要を創出、日本全国の温泉地が活気を取り戻す“未来づくり”に貢献していきたい」と抱負を語りました。

ワーケーションは“ワーク”をベースに考えると成功する

後半はトークセッションが行われました。

まずは、有泉健・BIGLOBE社長と長野恭紘・別府市長の対談です。

長野別府市長は別府でワーケーションを行うメリットについて述べました。具体的には、別府が全国の温泉量の10分の1をしめるほど豊富で泉質の種類も多いこと、そして「食」を支える居酒屋の質が高いことを挙げました。そして、ワーケーションにより、繁忙期や週末に集中する客の“平準化”と、宇宙港の開港による宇宙関連産業のワーケーション利用に期待を寄せました。

有泉社長は、ワーケーションが右肩上がりに伸びていく条件として、企業が投資対効果を認め、福利厚生として人事制度の中にしっかり組み込まれることが重要だと述べました。そのため今回の「TRY ONSEN WORKATIONプログラム」では、人事担当者に参加してもらうことを条件としています。

続いて、国内外合わせて500の温泉を巡り、書籍「女ひとり温泉をサイコーにする53の方法」の著者で“温泉オタク会社員”の永井千晴さんと、実際にプログラムに参加した損害保険ジャパンの久野俊彦さん、そして司会のタレント・三原勇希さんによる鼎談が行われ、それぞれ温泉ワーケーションの体験談を語り合いました。

特に温泉の達人である井上さんの発言はどれも示唆に富んでいました。

例えば、これからワーケーションをやろうと思っている人の心構えとして参考になると思ったのが、「ワーケーションでは、バケーションよりもワークをベースに」という発言です。

「バケーションだと思うと、そのワークが邪魔しに来てる感じがするけれども、ベースがワークだと思えば、いま打ち合わせの間だからちょっとだけ温泉入ろうという気持ちになれて、すごく贅沢で楽しいワークになります」

さらに食事時間が決まっていることで、「朝起きるのが早くなった」と永井さんは言います。

ちなみに、仕事内容によって泊まる場所は選んだ方が良く、「オンライン会議など話しを聞かれたくない時は防音環境の良いホテルなどを利用すべき」とのアドバイスもありました。

また、ホテルを変える場合、チェックアウトからチェックインまでの間のすき間時間を効率的に仕事にあてるためには、「温泉街でのWi-Fi利用可能施設の充実度もチェックポイント」だといいます。

実際の温泉旅館で行われたこともあり、終始リラックスムードの会見でした。これなら、ワーケーションによる仕事の効率化も期待できそうですね。

 

取材・文・写真 にいがた けん

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