2月も終わりを迎え、いよいよ寒さも和らいできたかな?と感じる今日この頃。暖かくなってくると、気分もウキウキしてくることかと思いますが、何か新しいものに触れてみたい、という思いも芽生えてくるのではないでしょうか?そこで今回取り上げてみたいテーマは、グルメでございます。
フランス・パリを拠点として世界100ヶ国に4600を超えるホテル、リゾート、レジデンスを展開している世界最大級のホテルチェーン・アコーホテルズが、東京は田町に構えるラグジュアリーでアップスケールなブランドホテル、「プルマン東京田町」。このホテルにあるレストラン「KASA」では、3月1日より「味わう旬の春野菜」をテーマに作り上げたスプリングメニューをスタート。その日に先駆けて、メディアに向けた試食会がおこなわれました。
写真)ダレン・モリッシュ氏
この日はホテルのジェネラルマネージャーのダレン・モリッシュさんと、今回のメニューを作られた料理長トーマスさんも登場。和食とヨーロッパ風料理の融合など、近年流行のフュージョン料理的な料理が得意とおっしゃるトーマスさんですが、メニューの方も食材でテーマをしっかりと押さえつつ、“むっ?これは!?”と思えるような、ユニークで大胆、それでいてカジュアル、反面繊細な味付けを楽しめるものばかり…
■昆布〆キングフィッシュ カルパッチョ イカスミ 小松菜エミュリッション タピオカクリスプ
キングフィッシュとは、ハマチのこと。ハマチを日本酒で洗った昆布とともに真空パックをおこなって24時間、昆布〆(こぶじめ)にし、小松菜のピューレとイカスミのアイオリソース、さらにコールラビの浅漬け、およびイカスミとタピオカのクラッカーを盛りつけたもの。軽い味わいとともに、昆布〆のキングフィッシュとクラッカーがよい歯ざわりを生み出します。
■レッドチコリ ゴートチーズ ビーツのガスパチョ ブルーベリー
ビーツをボイルし作られたガスパチョにシェリービネガー、塩味のゴートチーズ、さらにリンゴ、ブルーベリーと果実を加えたもの。ガスパチョに果実という組み合わせはユニークですが、それぞれすべて組み合わせて口に運べば、個々の素材の味からは想像つかない絶妙な味わいが楽しめます。
■和牛ビーフタルタル ロースト麦麹クリーム オーガニックエッグ エノキピクルス
ここから少しボリュームを感じられる料理へ。和牛ランプ肉のローストとグラモラータソースを合わせたタルタル(生の食材を細かく切って調理したもの)ですが、近年和食でもよく見られる麹をミックス。ここでは麦麹をクリームにしてあしらい、さらにエノキ茸をアクセントとして配置。そして中心にあるオーガニックの卵を崩し混ぜ合わせながら食べます。肉の味を感じつつ、その周辺の食材がその味を盛り立ててくれる感覚があります。
■ポーク&フォアグラバロティーヌ キュウリピクルス 梅干し ハイビスカスジェリー
フォアグラを、桜チップでスモークしたベーコンを巻き、付け合わせにキュウリピクルス、梅干しのペースト、ハイビスカスジュエリーを付け合わせとしており、その種類、組み合わせによりフォアグラとベーコンの味がバラエティに富んだテイストとなり、食べた人の舌を楽しませてくれます。
■天使エビのカツレツ ダシクラスト オーロラソース
天使エビとは「パラダイスプロン」と呼ばれるエビの品種で、添加物を一切使用せず養殖された最高品質の品種です。それをここでも和洋折衷、鰹節とパン粉で作っただしクラストで覆いムニエルにしました。これを西京味噌とトマトソースで作ったスペシャルオーロラソース、そこにアクセントとして七味をまぶす。ジューシーなカツレツがこれまた舌触りがよく、お酒などにもよく合いそうな味となっています。
■本日の魚のグリル レンズ豆&桜スモークウッドベーコン スモークトマトブロス
市場から仕入れたその日おススメの魚を鉄板でグリル、これにレンズ豆、ベーコン、スモークしたプチトマトをアサリジュースで煮込んで作ったブロス(肉や鳥を蒸し煮にして得た出し汁)を添えたもの。燻製トマトというのもなかなかユニークなアイデアですが、これらがシンプルにグリルした魚の味を一層引き立ててくれます。
■オーストラリア産ジョンディービーフフィレ オジブランカオイルマッシュポテト アスパラガス&グアンチャーレのソテー 赤ワインソース
そしてメインは、オーストラリア産ジョンディービーフのテンダーロインをグリルし、赤ワインソースを合わせたもの。これに豚頬肉の生ハムとアスパラガスを組み合わせたもの、さらにマッシュポテトにオジブランカオリーブオイルを合わせたものを付け合わせとしています。ボリューミーな肉に、またユニークな付け合わせとの組み合わせが、絶妙な味わいとともにしっかりした食べ応えを感じさせてくれます。
■ラベンダー&ハニー アイスクリーム
デザートも工夫を凝らした味が満載。バニラとハチミツにより作られたアイスクリームに、ラベンダーの花びらを組み合わせ、花の香りが上品に感じるアクセントとしており、たっぷり楽しんだ料理のデザートにも程よい味わいを生み出しています。
■桜チーズケーキ コットンキャンディ
そしてラストは、ビジュアル的にも強烈にアピールしてくれるもの。グラハムビスケットをアクセントにした桜チーズケーキの上に、桜の綿あめで覆ったものが出され、お客さんの目の前でウェイターが桜シロップをドロップ。
すると綿あめが溶けて内部のチーズケーキが現れるという、ちょっとインパクトのある演出を楽しませてくれます。味は見た目ほど甘過ぎず、上品な味わいが楽しめます。
いかがでしょう?なかなか画だけでもカラフルですが、料理メニューやそのレシピなど、あちこちに斬新なアイデアが満載。常に料理のアイデアが頭に浮かんでしょうがないというトーマスさんですが、このカラフルなメニューの特徴は、単に大胆さ、奇抜さだけが際立っているわけではなく、トーマスさん自身の優れた味覚によるおいしさにもあるといえます。
写真)料理長・トーマス氏
例えばビーフのフィレに付け合わせされたポテトに、オリーブオイルを合わせた理由をたずねると「マッシュポテトにバターという組み合わせはよくあるけど、バターだとちょっと味が強すぎるような感じがしたんです。だから、オリーブオイルにしてみて…」と語られており、明確に目指す味を自身で持たれているような印象を感じました。
フュージョン料理は“これは!?”と思わせるアイデアが勝負ではありますが、こういった行き届いたセンスも当然重要な要素ではあります。その意味では、ファーストフードなど比較にならないくらい高い食事ではありますが、確かにその価値はあり思ってもみない刺激を受けられる可能性もあります。新たな春を迎えるにあたり是非一度、思い切って試してみてはいかがでしょうか?
- HOTERES(週刊ホテルレストラン) 第54巻8号 (2019年02月22日発売)
Fujisan.co.jpより