今、職場でのメンタルヘルス対策にBGMを活用する企業が増えています。聴くとリラックスするBGMなどは良く耳にしますが、世の中には“仕事がはかどるようになる曲”や“残業の手をとめて帰りたくなる曲”をコンセプトにしているものもあるそうです。
そんなBGMがあるならば編集部にもぜひ欲しい!(なんなら個人的に欲しい)。
手掛けるのは、ご存知、USEN-NEXT GROUPの株式会社 USEN。飲食店やアパレルなどの店内や私たちの生活のありとあらゆるシーンで音楽を提案し、業界を牽引してきた会社です。
なかでも、オフィス向けに特化したBGM「Sound Design for OFFICE」は、会社の業績さえも向上させてしまうかもしれない!? スゴイBGMサービスらしいのです。気になる!
そこで今回は「株式会社 USEN ICT Solutions」事業企画統括部 オフィスデザイン部 部長 野村大河氏にBGM開発の裏や最新事情について、また、USENの広報担当である株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS コーポレート統括部 広報部 マネージャー 清水さやか氏に事例企業の話しなどを伺いました。
写真)野村大河氏
「Sound Design for OFFICE」とは?
野村: オフィス向けのBGMサービス「Sound Design for OFFICE」(以下SDO)は、快適で働きやすい空間デザインをサポートする音のオフィスソリューションです。「集中力向上」「リラックス」「リフレッシュ」「気づき」という4つの機能でチャンネルをカテゴライズし、約90のチャンネルご用意しています。
清水:SDOに関しては、USEN-NEXT GROUPでBtoB領域の営業を得意とする「株式会社 USEN ICT Solutions」が営業担当し、働く方々のメンタルバランス対策をサポートします。
BGMは職場の雰囲気を明るくする用途で活用されてきましたが、そのなかでも働く人たちにとって本当に良いBGMとはどのようなものかと、各分野の専門家や大学教授に監修をしてもらい2013年の2月からサービスを開始しました。
野村:5年程前は「オフィスで音楽をかけたら仕事にならないのではないか?」という意見も聞かれたのですが、最近では「働き方改革」の影響からSDOに興味をもち、お問い合わせいただくことが増えました。意外に思われるかもしれませんが、大企業からの問合せも多いんですよ。
帰宅を促す曲ってどんな曲?
清水: SDOのなかで、もっとも人気なのが「気づき」のチャンネルです。昼休みや終業を知らせるサイン・ミュージックや適度な運動を促すラジオ体操などで、なかでも終業に関するチャンネル「ノー残業デーアナウンス(女性)」(S-03チャンネル)を利用している企業は多いです。
終業のテーマというのは、終業のお知らせであるとともに次の展開にいざなう切り替え効果も必要で、そういった意味では、哀愁を誘う淋しげな曲というのは少し違うのかも知れません。
例えば「三井ホーム」さんでは「ロッキーのテーマ」を流しています。ハウスメーカーさんの営業の方は夕方~夜が勝負。でも総務の方は夕方が終業時間なんですね。「ロッキーのテーマ」は、(さあ!これから頑張るぞ)という高揚感と(仕事を終わらせて帰るぞ!)という2つの異なった気持ちを盛り上げます。このチャンネルを利用して終礼をしたところ「三井ホーム」さんでは、残業率を24%カットできたと報告がありました。我々以上にお客様もただ、USENを使うのではなく工夫して下さっていることがとても有り難いです。
音楽による気づきは大きい!
清水: 実は今、USENでは東京芸術大学の研究をもとに、新しく“帰りたくなる曲”をコンセプトにした曲を制作中です。楽曲からオリジナルで制作するため、ここでしか聞けない曲ができる予定で、15分の長さがあり第3楽章に分れています。
言葉で「早く帰れ」と伝えるよりも、ナレーションやBGMを流して“気づいてもらう”アプローチが大事、まずは帰りたくなる気持ちを醸成することが大切だと思っています。
野村:先程、清水が勧めた「ノー残業デーアナウンス(女性)」のナレーションでは、声優の日髙のりこさんの声で終業を知らせてくれます。朝・昼・夜で少しずつ伝える内容を変えて、より耳に届くような工夫がされており、実際、私のいる部署もこのナレーションのおかげで帰宅時間が1時間は早くなりました。
他に『サザエさん』のマスオさん役でおなじみ増岡弘さんによる「プレミアムフライデー」も好評です。お酒を飲みに行きたくなるようなセリフを10パターンほど考えていただいて弊社でテスト放送を行ない、もっとも人気があったナレーションを選んだと聞いています。
BGMによって免疫力も高まるらしい!
野村: 「ノー残業デーアナウンス(女性)」と同じくらい人気で支持されているものが、音楽療法の第一人者である埼玉医科大学短期大学の和合治久名誉教授に監修いただいた「Concentration ~働く人の集中力UP~」(S-01チャンネル)です。聴くと副交感神経が刺激され心身がリラックスできるようUSENがオリジナルで楽曲を制作しました。
このチャンネルの曲を聴く前後での唾液分泌量を調べたところ、聴いた後は唾液の分泌量が増加し、ストレスホルモンといわれる唾液コルチゾールが減るなどの現象が見られました。また、唾液IgA の増加や手の甲の体温が上昇するなど、口腔内および体表面の免疫が上ることも確認されています。
S-01チャンネルの曲を聴くことで会社の業績が右肩上がり!…とまでは言いませんが(笑)、働く方のメンタルヘルスが安定すれば、集中力がアップしおのずと生産効率が良くなるのではないか?と思っています。
BGMで作業音はどの程度抑えられる?
野村: 最近では、エレベーターやATMなど公共の場でもBGMを流す例が増えました。狭く無音な空間に見知らぬ者同士でいると緊張しますし、静かすぎるので会話をすることもためらわれます。そんな時に雰囲気を明るくするだけでなく、マスキング効果としてBGMが流れていると便利です。
ある一定の周波数帯で音を発生させることで、同じ周波数帯の音を掻き消す現象をマスキング効果といいますが、その効果を狙い早い段階でBGM取り入れたのが歯科医院です。キーンというあの機械音を緩和するためで、他にも、電話の内容が聞こえにくくする音量やテンポを調節したBGMを流す会社さんもいらっしゃいます。
作業音や話し声を完全に遮断することはできませんが、BGMにより会話の内容までは聞こえません。逆に完全に遮断してしまうとコミュニケーションが取り辛くなりますから、適度に作業音や話声が聞こえるBGMは良い塩梅なのかも知れません。
写真)話題にのぼったS-01のBGMのサンプルを検索中!実際に聞かせていただきました。
社内でも噂の“神の耳”をもつ者が制作を担当
清水:弊社には、500以上のチャンネルを熟知し、企業様の要望にピタリと応える神ワザ―いわゆる “神の耳”を持つと言われている社員がUSENの編成に携わっています。
USENの豊富なチャンネルで流れる曲を把握しているのはもちろん、さまざまな街や店舗を訪ねて音を収集したり、ホスピタリティが高いと評判のホテルなどで、かかっている曲や、逆にかかっていない曲を調べたりと、何千曲と聴きくらべて耳を鍛えているそうです。
また、制作と同じくらいとても素晴らしいスキルがあるのがコーディネーターです。SDOを担当するコーディネーターは、BGMで働く環境をより快適な場所にするため、お客さまとのコミュニケーションのなかでオフィスの課題や問題点などをみつけ、番組を組み合わせてオフィスの一日のBGMプログラムを作成、提案しています。
朝・昼・夕と働く方々のバイオリズムにあわせてコーディネートするのですが、曲の波長が急に変わり違和感を覚えないよう、ふと、気が付いたらBGMの雰囲気が変わっていた…くらいの自然な流れをプロデュースします。音楽は香りと違いすぐに無音にできるところも便利です。オフィス環境の変化にすぐに対応できるところがBGM、ひいてはUSENの強みです。
写真)レジや決済の案内など、所狭しとお店が必要となるサービスが並んでいる空間。
音楽配信依存からの脱却
清水: USENといえば、音楽というイメージがまだまだ根強いかもしれませんが、今のUSENは、店舗総合支援サービスを展開しています。長年、音楽配信を通して多くのお店の開店準備からお付き合いさせていただいてきたUSENならではのノウハウを活かし、資金調達・不動産・損害保険・電気・ガス・レジ・Wi-Fi・多言語対応のアナウンスアプリ、おもてなしキャスト…と、店舗や商業施設に寄り添うサービスは何でもご提供できる体制が整っています。
音楽配信はもちろん、それだけではない、皆様にとってもっとも身近で必要としていただける存在でありたいと私たちは思っています。
写真)ミーティングも行えるショールーム。
写真)社内にカフェが併設されていました!
伺ったUSENやUSEN ICT Solutionsのオフィスは想像以上に快適空間でした。ショールームを兼ねたミーティングルームはどの部屋もオシャレ。いつまででもいたくなる居心地の良さで、逆に残業したくなってしまうかも?! そうなるとBGMの出番ですね。USEN×東京芸大との取り組みによる“帰宅を促す音楽”が解禁になるのを楽しみにしています。
突然の取材にも快く応じてくださったUSEN-NEXT GROUPの皆様ありがとうございました。