フードロスや食料自給率、また栄養不足や孤食化が進むなど、今、日本の食に関する問題は深刻なものとなっており、関心を持っている人も多いのではないでしょうか?
そんな中、日本女子大学とミツカングループ、若者から見た“これからの日本の食”をテーマに共同で研究を行う「にっぽん食プロジェクト」を2022年春より始動。 先日プロジェクトの成果として、新しい食の形“にっぽん食”の概念と、研究結果をもとに学生が考案したメニューを紹介する記者発表会が開かれました。
これからの食の未来を探求する「にっぽん食プロジェクト」
“にっぽん食”とは、多様化する食の価値観や山積する食の課題に対して、様々な角度から食を捉えなおすことで、これからの食の概念を表したもの。
日本で古くから受け継がれてきた“和食”が食文化の多様化とともに現代の“日本食”となり変化したように、“にっぽん食”も日本食の先にある、未来の食のあり方を示す名称となっています。 そんな“にっぽん食”を考える「にっぽん食プロジェクト」は2021年に創立120周年を迎え、食を科学するスペシャリストを育成し続けている日本女子大学家政学部食物学科の飯田研究室の学生が中心となり、219年に渡って日本の食文化の発展に寄与し、「ミツカン未来ビジョン宣言」を掲げて食の可能性の追求に取り組むミツカングループとタッグを組んだ産学連携事業です。
プロジェクトの活動から“にっぽん食”の概念を発表!
2022年度の「にっぽん食プロジェクト」では、まず、飯田研究室の学生が学生及び社会人を対象とした、若者の食の実態を探るアンケート調査を行い、その結果が発表されました。
結論として、未来を担う女子大学生の食は簡便化が進み、一方で空間を共にする食事や身近な作り手との空間を隔てた食事などの共食を求めているということが導き出されたそうです
その後、約半年にわたり、学部・学科を超えた授業として『課題解決型ワークショップ にっぽん食を考える』を実施し、様々な講師から食を多角的に学び、“にっぽん食”の概念を探求。最終的に以下5つの項目を満たすものを“にっぽん食”の概念としてまとめました。
①持続可能な食
食の自給率向上や食品ロス問題を解決するとともに、簡便な調理法で作り続けられること。
②おいしくて健康的な食
食べ続けられるおいしさであり、食べ続けられることで健康につながり、日本人が抱える栄養上の問題を解決できること。
③共食を通じてコミュニケーションを生む食
共食がもたらす食のコミュニケーションを通じて、食の喜びや楽しみを感じられること。
④日本らしさをいかした食
日本の旬の食材を活かし、四季を感じられること。
⑤味覚をはぐくむ食
日本の調味料の良さを活かし、味覚をはぐくむおいしさであること。
この内、美味しさ・簡便性・そして楽しさがなければ持続可能性は産まれないという観点から、①②③の3つは特に重要と捉えているそうです。
アイデア満載!“にっぽん食”メニューを学生が考案
授業を通した学びを踏まえて、受講学生を4つのチームに分け、“にっぽん食”に必要な要素は何かを討議しながらそれぞれが考える“にっぽん食”のメニューを考案。その一部をご紹介します。
【土鍋パエリア】は見た目にも華やかで、一つの鍋をみんなで囲むことでコミュニケーションが生まれ、“にっぽん食”のポイントである「共食」を体現した料理。
日本の伝統調味料である酢や、だし、かつお節を活かした味付けにすることで、味覚をはぐくむおいしさも目指したそう。
【カオマンガツオ】は特に若い女性から人気を集めているエスニック料理の中で自給率が高いお米を使った料理「カオマンガイ」を“にっぽん食”にアレンジ。鶏肉の代わりに比較的高い自給率を誇るかつおを使用。
炊飯器で具材も一緒に炊き込むことで、誰でも作りやすい工程で鍋を汚さずに調理ができる簡便化を実現。長く作り続けることができる、作り手にも優しいメニューとなっています。
他のメニューも今の若者に好まれるテイストのものに、古くからある日本ならではの調味料や食材を掛け合わせ、新しく、美味しい“にっぽん食”が提案されています。
来年度以降も「にっぽん食プロジェクト」は継続され、“にっぽん食”を探求し続けるとのこと。身近にある食を見直しつつ、若者が考える面白い新たな食の提案にもぜひ注目してみてはいかがでしょうか。