圧倒的な映像美、世界観で現代日本が抱える闇をあぶり出す 衝撃のサスペンス・エンタテインメント『ヴィレッジ』が4月21日より公開となります。
大ヒット作『余命10年』など多くの話題作を手掛ける藤井道人監督と、日本映画の変革者として絶えず注目作を世に贈り出してきた故・河村光庸プロデューサーの遺志と遺伝子を受け継いだ注目のスタジオ・スターサンズの制作チームが結集し、人々のリアルに迫る物語を作り上げています。
村長の息子で、主人公・優たちを暴力で屈服させる、透を演じた一ノ瀬ワタルさんにお話を伺いました。
――映画拝見させていただき、素晴らしかったです。一ノ瀬さんが演じた透はとても悲しいキャラクターですよね。
そう思ってもらえたことが嬉しいです。演じている時から普通の悪役ではないと思っていたので。
――この役を演じることになったきっかけを教えてください。
昔スターサンズ制作の『宮本から君へ』(2019)という作品に出演させていただき、その時から河村さんとご縁があって、河村さんが「お前、絶対売れるから頑張れ」と励ましてくださったこともありました。そこから藤井監督に知っていただくきっかけになったのだと思っています。
――撮影の時はまだ河村さんもご存命だったんですよね。
そうです。衣装あわせの時にお話させていただきました。(河村さんがお亡くなりになったことは)とても悲しいことですが、河村さんの遺作のひとつに出演できたことは、本当に良かったなと思っています。役者をやる中で、『宮本から君へ』という作品がすごくターニングポイントでもあったから。そして、今回の『ヴィレッジ』もすごく面白いと思って。出演が決まって本当に嬉しかったです。
――藤井監督とご一緒してみていかがでしたか?
今回の『ヴィレッジ』をきっかけに、『インフォーマ』という作品でもご一緒させていただくことになったんですけど、すごく優しい方なんです。物腰も柔らかいし。気を遣った話し方をしてくださるんですけど、でも妥協もなくて笑。だから、たまに自分の演技に自信を無くすこともありましたが、藤井監督のアドバイスや指示を受けて演技をすると、あぁなるほどなと。信じて間違いなかったというか。藤井監督には絶大な信頼が生まれましたし、もちろん好きな監督さんです。
――『ヴィレッジ』のインスタで見たのですが、藤井監督は「一ノ瀬さんには日本のマ・ドンソクになってほしい」と。
ああ!(笑)。いや嬉しいっす。マ・ドンソクさんになれたら(笑)。
――私もいち観客として、世界で活躍する一ノ瀬さんを観たいです!
っしゃあ!ありがとうございます(笑)。
――透という役柄はとても難しいと思うのですが、どうアプローチしていきましたか?
藤井組って、「キャラクターシート」くれたんです。自分が演じるキャラクターについてすごく細かに書いてくれていて、キャラクターの内面を的確に教えてくれるので、役作りの面ですごく助かるんですよね。だから、迷いはなかったです。。
――例えば、透にはこういう過去があるとか、そういう内容ですか?
そうです。透の好きな歌手は、『YOASOBI』みたいな。だから、現場に行く前はずっと『YOASOBI』を聴いていました。演じる上で大事になってくることが、ぎゅっと書かれている感じです。
――透が『YOASOBI』好きなのはちょっと意外でした。でも、よく考えると確かに透って繊細ですよね。
作品単位で考えたら、透って悪役だと思うんですけど。透からの目線で言えば、これは壮大な恋愛作品なんですよね。透にとっては悲しい恋愛作品を撮っていたっていう感じで。そのことを忘れない様に演じていました。優以上に村にしばられている人物ですし、美咲を口説く時に、「俺と一緒になって、もうこんな村出ようぜ」って言うので、やっぱり出たかったんだろうなっていうのは、悲しいですよね。
――一方で村長の息子という立場と恵まれた力を活かして、村の皆を屈服させていきます。圧倒的な佇まいが印象的でしたが、そういった圧迫感を出す様な演技で心がけたことはありますか?
そんなに心がけるってことはなかったです。「役を意識して作る」という感じがあんまりなくて。そのまま、その役が俺になるという感じで、終わると開放されるんですけど。何個か意識していることはありますが、演じる上で、威圧的にするにはどうするか?みたいに考えることはないです。やってみて違うってなったら、監督と相談しながら軌道修正していく感じです。
――本作は特に終わった瞬間、ホッとしそうですよね。荷が降りるというか。
一個一個の作品にのめり込めば、のめり込むほど、やっぱり終わった後は疲れますね。今回でいうと、藤井さんはそれを一緒にやってくれる感じなんですよね。俺一人に背負い込ませるってことがなくて、ちゃんとバックアップしてくれる安心感がありました。役者の気持ちもわかってくださっているというか。あと、現場で古田さんと話している時は楽しかったです。俺がちょうど『サンクチュアリ -聖域-』で肉体改造中だったので、飲みには行けなかったことが残念でした(笑)。
――今回、横浜さんと黒木さんとのシーンが多かったと思うのですが、ご一緒していかがでしたか?
黒木さんとは昔ドラマで共演したことがあるんですけど、そのドラマで黒木さんの役が飼っていたウサギを最終話で俺が引き取るっていうシーンがあって。そのウサギを実際に自分が引き取っていまでも飼っています。今では奥さんのウサギもお迎えして、8羽になりました。そういう話を黒木さんとしてましたね。ウサギの名前が『たっちん』って言うんですけど、「たっちん、奥さんをもらって、いまは子どももいるんですよ」って。そしたら、黒木さんが撮影の合間に絵を描いてくれて。俺はTwitterでウサギのアカウントを持っているのですが、アイコンにしているのはその時に黒木さんが描いてくれた絵です。
――なんと素敵なお話でしょうか!
黒木さんは、透が美咲に惹かれているくらい素敵な方なんです。黒木さん自身がすごく魅力的な方なので、俺は透として壮大なラブストーリーを演じられたと思います。
――ちょっと重ねて質問させてください。ウサギとはどの様に暮らしているのですか?
基本的には個室があって、男の子グループ、女の子グループで分けて飼っています。かわいいんですよ。みんな仲良しだし、この子たちのために仕事頑張ろうって、思えるんですね(笑)。
――私も猫と暮らしているのですごく分かります。横浜さんとの共演はいかがでしたか?
横浜さんとは初めてだったのですが、ドラマ『4分間のマリーゴールド』とか、すごくキラキラしているイメージを持ってたんです。でも現場入って初めて会った時には、俺が想像していた横浜流星さんではなく、本当に闇を抱えていた『優』がそこにいて。アクションシーンなどでもすごく気遣ってくださり、素敵な役者でした。
――横浜さんも一ノ瀬さんも、ジャンルは違えど格闘技経験者ですから、お互い安心してアクションが出来そうですね。
アクションがすごくやりやすかったというか、やっぱりちがいましたね。安心感がありました。俺がやりたいことも分かってくれるし、リアクションもすごく安全で。体幹もやっぱり強いんですよ。胸ぐらを掴むとそれがすごくわかるんです。相手にケガをさせたら大変なことになるっていうプレッシャーがある中、横浜さんの様にしっかり動ける方だと、安心してアクションに集中できました。
――他に、この方と共演して楽しかった、嬉しかったって方っていらっしゃいますか?
藤井さん・横浜さん・黒木さん・古田さん、みなさんそれぞれ楽しかったですし、ゴミ処理施設のメンバーも楽しかったですね。僕はエキストラから俳優をやっているんですけど、その時の仲間もいたので、昔話をしたり。奥平君や作間君とは、絡むシーンがほんの少ししか無いのですが、現場で楽しく喋らせてもらいました。気がいい二人というか。二人ともすごくいい子で。奥平君のキャラクターだけずっと明るいじゃないですか。だから、すごく異質な存在ではあったんですよ。ゴミ処理施設のみんなって、ダークサイドに堕ちているというか、あの空気に飲まれているけど、奥平君の演じた龍太はそれでもまだ希望があるというか。
――この映画って、観終わった後誰かとすごく話をしたくなりますよね。
本当そうですね。「村」と「能」という、とっつきづらいテーマではありますが、ぜひ皆さんに観てほしいです。本当に後悔しない映画だと思っています。お面を皆被って、お祭りに行くシーンも異質ですが、俺はすごく好きです。
――少し『ヴィレッジ』の話から離れた質問をさせていただきます。さっきの肉体改造のお話も出ていましたが、作品ごとにアプローチが変わってくるのはハードそうですね。
『サンクチュアリ -聖域-』では40キロ増量しなくてはいけなくて、専属の栄養士さんが食事の指導をしてくれました。でもなかなか太ることができなくて・・・。確か105キロだったと思いますが、その壁が全然越えられなくて。それで共演の元力士に太り方を教えてもらったんです。それを参考にしたら、やっぱ太ったんですよね。お昼寝とか、食事を食べるタイミングとか。昔から受け継がれているお相撲さんの伝統って、やっぱりすごいなと。とても良い経験になりました。
――撮影中に違う作品の体作りが入ってくるというのは本当にすごいですね。
でも、本当にありがたいことですね。栄養士さんとかトレーナーさんとかついてもらって、全然苦では無かったです。
――今後こういう役をやってみたいというのはありますか?
いろいろやりたい役があって、メモってきました(笑)。まず、「怪物」という設定が俺は好きなんですよ。言葉も喋れない、圧倒的な力を持つ怪物。
――『黄龍の村』(2021)の様な感じですかね?
『黄龍の村』観てくださったんですね!ありがたいです!あの役は近いですね。ああいう人知を外れている化け物みたいな役をやる時は、自分の中にあるものをすごく爆発させることができるから。普段の芝居って抑えることが多いすけど、怪物ってなったら、どこまでもいけるというか(笑)。楽しいんですよね。
――あの作品の時に阪元監督にインタビューさせていただいたのですが「一ノ瀬さんが演じる圧倒的な説得力」といったことをおっしゃっていて。(https://getnews.jp/archives/3123194)
いやあ、ありがたいっすな!笑。作品の中で、土を掘って虫を食うシーンとかも、もともと台本に無いんですけど、もうやりたい放題というか。そういう役はやっぱ楽しいですね。
あとは学校の先生を演じてみたいです。体育の先生もいいですけど、社会や国語の先生とかをやりたいです(笑)。教え子たちに諭す役というか。そして、どストレートな恋愛ドラマにも挑戦してみたいですね。『101回目のプロポーズ』の武田鉄矢さんみたいな役。こんなドラマの様な恋してみたい!みたいな(笑)。『サンクチュアリ -聖域-』でデートシーンがあるのですが、そういうシーンの経験が今までなかったから、「楽しい!!」と思って(笑)。
――ぜひ、一ノ瀬さん主演の恋愛ドラマが作られますよう、楽しみにしています!
もう、本当に。やってみたいですね。よろしくお願いします(笑)。
――今日は素敵なお話をありがとうございました!
撮影:オサダコウジ
ヘアメイク:小林雄美
スタイリスト:吉田麻衣
ヴィレッジ
公開表記:4月21日(金)全国公開
配給:KADOKAWA/スターサンズ
(C)2023「ヴィレッジ」製作委員会
横浜流星 黑木華
一ノ瀬ワタル 奥平大兼 作間龍斗/淵上泰史 戸田昌宏 矢島健一/杉本哲太 西田尚美 木野花/中村獅童 古田新太