デヴィッド・クローネンバーグ監督の1996年公開の傑作を4Kリマスターした『クラッシュ 4K無修正版』が1月29日(金)より公開。J・G・バラードによる原作「クラッシュ」の翻訳者としても知られる、映画評論家の柳下毅一郎が本作について語った特別映像が到着した。
本作では、“交通事故”に性的興奮を覚える人々の危険な欲望が描かれる。J・G・バラードの原作小説「クラッシュ」が発表されたのは1972年。当時から物議を醸していたが、1996年にクローネンバーグの手によって映画化されると、「こんな映画をやっていいものか」と賛否が飛び交い、小説が発表された時代を上回るほどの叩かれっぷりであったという。
柳下氏は、本作の当時の反響を振り返りながら、「改めてクローネンバーグとJ・G・バラードがいかに危険な作家であるかを再認識した」とその印象を明かす。
また、『クラッシュ』を改めて観た感想として、自身のことを“モラルに関しては緩い捉え方をしている人間”としながらも、「これはたしかに叩かれるよね」と世間の反応に理解を示す。その理由は、本作の特異なスタンスにあるという。“社会では禁じられる欲望”を描くことについて、本来の映画であればそういったものを否定する描き方をするものの、本作では「その欲望を断罪しない」「(その欲望に)身を投じる人たちのことを肯定もしない、否定もしないという意味で、非常に突き放して描いている」と分析する。
この立ち場に囚われない描き方は、「今見ると逆に新鮮な気がする」と柳下氏。その裏には、考え方や表現の自由が認められていく一方で、保守化も進む現代では、ここまでインモラルで危険な作品を描くのは難しいだろうという見解がある。「この20年間でどれだけ社会が保守化したのかな、っていうのを思い知らされる感じがありますね」とコメントを締めくくった。
『クラッシュ 4K無修正版』
1月29日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開