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実体験から生まれたアイデア? 真夏のエクストリーム・スラッシャー映画『アクアスラッシュ』監督インタビュー[ホラー通信]



ウォータースライダーの出口に何者かが鋭利な刃物を仕掛け、何も知らないティーンたちが景気よく突っ込んでいく、ぶった切りX級スラッシャー映画『アクアスラッシュ』。7/22にレンタル先行、8/5にはDVD発売と各種配信が始まった。8/21には、東京・池袋の新文芸坐にて一夜限りの上映が決定している。ジャストワンアイディアで乗り切った思いきりの良さには賛否両論。この夏、話題の作品だ。


監督はルノー・ゴルティエ。ディスコ音楽を聴くと幼少期のあるトラウマがよみがえり、無差別に人を殺してしまう男を描いた、前作の『Discopathe(2013)』に続き、本作『アクアスラッシュ』が長編2作目となる。


日本ではまだなじみの薄い監督だが、プロデューサー陣に注目してほしい。ボーイミーツガールのゴアアクション映画『ターボキッド(2015)』のブノワ・ボーリュー、現在全米のドライブ・イン・シアターで大ヒット中のインディ魔女ホラー『The Wretched(2019)』のアルン・アローラ、『インブレッド(2011)』『ブラッド・インフェルノ(2017)』のマイケル・クレッツァーと通好みの顔ぶれが並ぶ。さらに、『Abrakadabra(2018)』や『Francesca(2015)』でアルゼンチンジャッロの境地を切り開くニコラス・オネッティも名を連ねる。一発ネタ勝負の作品に見えるが、支えるスタッフは重厚な布陣。72分の短い尺にその英知が注ぎ込まれている。


とはいえ、脚本を手がけたのは監督のルノー・ゴルティエだ。この誰もが見過ごしていた盲点のような仕掛けが、実は監督の実体験に基づいたものだというのには驚かされる。一体どんな体験だったのか。そして、そこからどのようにして本作をつくりあげていったのかを尋ねてみた。




――世紀の大発明!この恐ろしい仕掛けのアイデアはどこから来たのですか?


ゴルティエ監督:私は80年代育ちです。当時はこのような大型のウォータースライダーが登場し始めたばかりのころで、なかには乱暴なつくりのものもありました。パイプの継ぎ目が雑だったり、ネジが突き出ていたりとかね。そんな中を滑っていき、何かあっても止まることができないというのは怖いものでした。あるときなどは滑り終えたあとに、背中にひっかき傷ができていたんですよ。


30年後、私はその体験に手を加え、今まで誰も思いつかなかったアイデアの映画が完成しました。ウォータースライダーにクロスしたカミソリの刃を仕掛けるというね。この映画は入念な仕掛けと映画的な面白さが全てです。ドラマ、スリラー、ミステリー、コメディー、ホラーの要素、そして(ネタバレになりますが)、思いきりグロいシーンがあります。これ1本であらゆるジャンル映画のエッセンスに触れてほしいと思いました。



――クライマックスのスライダーシーンは圧巻でした。思わず拍手を送ってしまいました。


監督:『ジョーズ』のサメのように、観客が待ち望んでいた瞬間がいよいよやって来た、というシーンですね。そのカタルシスを存分に味わってほしくて、華麗なスローモーションで楽しんでもらえるようにしました。大いに歓声を上げてください。こんなシーンで……など罪悪感を覚える必要はありません。言うなれば「交通事故の現場に出くわしたときに思わすじっくり見る」ようなものです。私たちの心の底には、そういう感情があるのです。『アクアスラッシュ』は皆さんの本能を刺激する作品です。映画というのは、本来そんなものではないでしょうか。


――高校生たち、はじけていますね!


監督:卒業したので元高校生ですね(笑)。これは「卒業式の週末」であり、ある意味大人の仲間入りですから、大々的にお祝いする大きな理由があるわけです。それぞれに新たなスタートが待っています。パーティーの場面はちょっと大げさかもしれませんが、映画っていつもそうでしょ。ちなみにドラッグはもちろん偽物ですが、ビールは本物を使いました。



――映画は典型的な80年代のスラッシャー映画風で始まります。そのような雰囲気を現代に蘇らせたかったということですか?


監督:プロジェクトの最初の段階では、もっと古い時代に設定するか、私がまさに10代だった1984年を舞台にしたいと思っていました。途中で状況が変わって、「現代的」な時間枠で撮影できたことにとても満足しています。あらゆる時代のホラー映画からのさまざまな影響、スタイル、仕掛けを振り返りながら、その要素を取り入れることができました。恐怖のエチュードと言ってもいいでしょう。典型的なティーン向けスラッシャー映画との違いということで言えば、この『アクアスラッシュ』の犯人は、人種も年齢も性別も差別せずに殺します!


――出てくるのがまた、自己中で欲に正直な人物ばかり。「これならもう誰が殺されようと構わない」と思ってしまいます。


監督:『アクアスラッシュ』は、ジャンルとしてはスラッシャーですが、脚本を練り上げる段階では、ホラーミステリーの部分を重視しました。登場人物たちを全員、笑いを誘うほど怪しげなキャラクターにしてみたんです。私の考えでは、良いホラーにはユーモアが必要不可欠だと思っています。



――味を占めた「犯人」が新たな犠牲者を求める可能性は?


監督:嫉妬と強欲、狂気の沙汰が「犯人」のモチベーションになっていました。陰惨な計画を達成するためには巻き添えもいとわない強い恨みもね。でも、「犯人」は目的を達成したので、今のところ満足していると思いますよ(笑)。


――十代の夏の思い出を教えてください。


監督:とにかく日焼けした! それから、ドライブ・イン・シアターで『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還(1983)』や『グレムリン(1984)』を観ながら眠ってしまったことかな。


――監督お薦めの『アクアスラッシュ』の楽しみ方は?


監督:温かい血の入ったプールにつかりながら観るとか?(笑)


――最後に一言!


監督:日本のホラー映画ファンの皆さん、はじめまして。『アクアスラッシュ』は本当にただひたすら楽しんで観てもらいたい映画。でも、絶対に真似しないこと!(笑)



猛暑来襲! ぬるま湯みたいな温度でもいい、海やプールに飛び込みたい! そんなささやかな願いもむずかしい、2020年夏だから……『アクアスラッシュ』一夜限りのスクリーン上映、決定しました。入場者には、映画のあのシーンを再現できる特製ステッカーをプレゼント。


池袋・新文芸坐【特別レイトショー/1本立て】

今宵限りの納涼残酷プール開き『アクアスラッシュ』


8/21(金) 20:30開場 20:45開演

★前売券 8/14(金)10:00よりオンライン・新文芸坐窓口にて発売

★入場者全員プレゼント 特性“キザマレロ”ステッカー

★劇場特価でのDVD販売あり

新文芸坐公式サイト:http://www.shin-bungeiza.com/




[聞き手・文:TOMOMEKEN]


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