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安達寛高(乙一)&漫画家・崇山祟が語る『シライサン』「コミック版はB級ホラーを意識」「映画『回路』の様な怖さを表現したかった」



乙一の名で作家としても知られる安達寛高が監督し、飯豊まりえが主演する完全オリジナルストーリーのホラー映画『シライサン』が、大ヒット公開中です。今回監督を務めた乙一こと安達寛高監督と、コミカライズ本を手掛けた崇山祟との対談インタビューが実現! お二人に、お互いの作品の感想、制作過程などを伺いました。



●『シライサン』を執筆した際。どの様な事から構想を得たのでしょうか? 


安達監督(乙一):“どんな幽霊だと面白い映画になるだろう”という事を考えながら、構想を練っていきました。色々な幽霊のアイデアを出していく中で、”幽霊がいると気づいたら襲われる”、”気づかないふりをしなければいけない”といった案が出て来ました。その中で、”幽霊を見ている間は襲ってこない”という案が採用されました。このテーマを膨らませていきながら、作品作りをしていきました。


●ご自身で脚本・監督を務めていますが、『シライサン』への思いは強いのでしょうか。


安達監督(乙一):初めて長編映画を撮る事が出来て、感慨深いものがあります。


●崇山さんは、映画『シライサン』という作品を観たときの印象を教えて下さい。 


崇山:Jホラー界に、ワクワクするキャラクターが久々に現れたなと思いました。


●コミカライズ版をオファーされた時の心境はいかがでしたか?


崇山:オファーを頂いたときに、”オリジナルストーリーでいこう”と編集担当と決めたのですが、とても不安でした。既に作品として出来上がっている『シライサン』というテーマから、”僕はどんなストーリーを考えたら良いのか”と感じていました。ただどことなく透明感があるムードが好きで、ホラーなのに爽やかさを感じたんです。そこからヒントを得て、”青春”というスパイスを混ぜたいなと感じ、漫画を描いていきました。


●安藤監督(乙一)は、マンガのネームを読んだ時にどう思いましたか?


安達監督(乙一):「そう来たか!」と思いました。面白かったですね。ネタバレになるので、言えないのですが、ラストシーンのアイデアを聞いた瞬間、楽しい事になってきたなと感じました。


崇山:正直NGになるかなと思いながら、ラストシーンを提案したのですが、乙一さんが「四つん這いにしてみたら? 好きな様にどんどんやってください」と、優しく後押ししてくれたので、勇気が湧きました。



●コミカライズ版は、原作とも映画とも異なった作品となっていますが、どの様にお話を進めましたか?


崇山:乙一さんと初めてお会いした時に出てきたキーワードと、映画のエッセンスをヒントにネームを構成していきました。とにかく制作期間がタイトだったので、勢いのまま16ページずつ書き上げていき、各所確認してもらいました。


●コミカライズ版は、全224ページに渡る作品ですが、どのぐらいの期間で制作されたのでしょうか?


崇山:ネーム → 下書き → ペン入れ(絵を描く)という三工程が必要なのですが、とにかく時間がなかったので、ほぼ下書きのものを2ヵ月で書き上げました。確認出しの際は、”一発でお願いします!”という思いで提出したんです。その後のペン入れは、2ヵ月かけて書いたのですが、我ながら驚異的なスピードで作業したなと思います。


安達監督(乙一):お一人で、全て書かれているのですか?


崇山:僕がペン入れを担当しました。ふきだし・グレイケース(色塗り)といった作業は、アシスタントに依頼しました。乙一さんに見ていただいた最初のプロットは、通勤バスの中で思いついた事を、携帯にしたためていきました。


●Jホラーには貞子、伽椰子など、強烈なキャラクターが誕生しています。”シライサン”を生み出す際、参考にした文献・資料、注意した点などはございますか?


安達監督(乙一):『ジェーン・ドウの解剖』(16)という映画があり、魔女の様な死体が登場するんです。主人公の死体の足に”鈴”が付いていたことが印象的だったので、そういった要素を参考にしました。


崇山:『呪怨』シリーズ、『13日の金曜日』(80)等の、王道ホラーを参考にしていきながら、呪いで人が死んでいく様や、リア充が殺されていく描写を取り入れました。なお普段は描かないのですが、エッチな事をしようとした時に、殺されてしまうというシーンも組み込みました(笑)。謎の顛末が下る展開も取り入れています。映画『シライサン』を観たとき、清々しさと冷たさを感じたので、コミカライズ版ではB級映画感を意識していきました。


●本作はホラー作品でありながらも、青春作品だと思います。お2人のこれまで影響を受けたホラー作品、青春作品をそれぞれ教えていただけますか。


安達監督(乙一):黒沢清監督の『回路』(01)が好きで、お化けが出ていないシーンも、すごく”怖さ”を感じ取れたんです。『シライサン』の登場シーンは、『回路』の様に出来たら良いなと思い、スタッフと相談していきました。


崇山:お化け退治の『ゴーストバスターズ』(84)が好きですね。セリフが全部面白いし、やり取りの楽しさも勉強になりますよね。


安達監督(乙一):直近で観たんですよね(笑顔)


崇山:凄い面白いですよね(笑)。あとは青春作品だと『桐島、部活やめるってよ』(12)を観た時、最後常軌を逸した何かとんでもない事が起きるだろうなと思ったんですよね…でもナチュラルにおわってしまって物足りなくて。良い映画とは思いますが…。例えば『レポマン』(87)という映画では、パンク青年の青春物語かと思いきや、最後突然UFOが現れるんです。それが大好きで。”ラストシーンに向けて何かとんでもない事を起こす”という部分を、今回の漫画にぶつけた感もあると思います。


安達監督(乙一):青春映画では『リリイ・シュシュのすべて』(01)が好きですね。岩井俊二監督に会う機会があったのですが、 “あの映画を撮った人だ”と思い、凄い緊張しました。実際にあった時の印象は、”少年”の様な方でした。ずっと『少年ジャンプ』を読んでいると仰っていて、『NARUTO-ナルト-』の話でずっと盛り上がりました。


●映画とコミカライズ版では内容が異なりますが、観客の反応を期待している部分はありますか?


安達監督(乙一):映画よりもコミカライズ版の方が、アクション映画の様な要素があるので、凄く楽しんでもらえるかと思いました。漫画版を読んでから、小説版を読むと”ニヤリ”となるはずです。


崇山:私は映画鑑賞 → 漫画執筆 → 小説という流れで、各ver.の『シライサン』鑑賞しているのですが、小説版『シライサン』の最後を読んで、仕掛けられたなと思いました。是非この流れで見ていただけると、より楽しんでもらえるかと思います。


●最後に読者に向けて一言お願いします。


安達監督(乙一):飯豊まりえさんがとにかく美しいので、是非劇場で確認して欲しいです。


崇山:「次は、お前だ!」(笑)


【関連記事】ホラーが大の苦手な飯豊まりえさんが挑む映画『シライサン』「叫ばないヒロインと絶望的な状況の呪い」の面白さ

https://getnews.jp/archives/2370044 [リンク]



映画:『シライサン』

出演:飯豊まりえ 稲葉友 忍成修吾 谷村美月 染谷将太 江野沢愛美 ほか

監督・脚本:安達寛高(乙一)

配給:松竹メディア事業部

公開:大ヒット公開中

公式HP:shiraisan.jp

公式Twitter:@shiraisan_movie


・STORY

眼球が破裂した死体が連続して発見された。直接の死因は心不全だった。そして、死の直前”何か”に怯え取り憑かれたよ うな奇妙な共通点があった。 親友を目の前で亡くした大学生の端紀(飯豊)と、弟を失った春男(稲葉)。二人は共に 事件を調べ始める。鍵を握る詠子を探し出すが、ほどなく彼女は「シライサン…」という謎の言葉を残し、眼球を破裂させ心 不全で死亡した。 事件に目を付けた雑誌記者の間宮も加わり、徐々に明かされてゆく”シライサン”の呪い…。核心に近づく三人の前に、理解 を超えた、戦慄の事実が待ち受けていた・・・。


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<書誌情報>

漫画:『シライサン ~オカルト女子高生の青い春~』

原案:乙一 漫画:崇山祟

発売日:好評発売中

定価:本体900円+税

頁数:224頁

発行:株式会社 扶桑社


・あらすじ

オカルト趣味だけが生きがいで、学校では「空気」のように目立たない女子高生トリコ。彼女は古書店で見つけた本に載っていた”シライサン”の伝承のとりこになる。ある日、同じクラスの”イケてる男女”にシライサンの内容を身振り手振りを駆使して披露する。すると後日、彼らは次々と謎の死を遂げていく。トリコはオカルト部を結成し、シライサンの呪いに立ち向かおうとするが……。


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