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シリーズ「ヤミ金に群がる客たち」:自販機設置営業マン、派遣社員OL編



どうも、特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。


働けど働けど下流社会から抜け出せない人々が頼るもの、それが“金融業者”です。


しかし、頼みの綱だった大手消費者金融会社は数々の不当な取立てが表面化し、過払い金返済請求が激増。その返済に応じ赤字4社(T、A、AF、L)では、1兆8085億円以上の膨大な赤字を叩き出しているそうです。


おまけに貸出上限金利の引き下げなどを盛り込んだ“改正貸金業法”成立を受け、国から逆に“追い込み”をかけられる始末。無人機で気軽に利用できたはずの消費者金融もそんな事情が重なり、貸し倒れリスクの高い顧客への融資を渋りはじめました。これが、“貸し渋り難民”の激増につながるのです。



金を借りたい“貸し渋り難民”は、はたしてどこに向かうのか……。その矛先が無登録の“ヤミ金融業者”です。厳罰化になり、一時は下火になっていたヤミ金業界も今が激変のとき。今日は手を変え品を変え、債務者の骨までしゃぶりつくす“ヤミ金融”にやってくる客たちの素顔に迫りたいと思います。


開店と同時にやってくる


取材協力をお願いしたのは、旧知のネタ元を辿り紹介してもらったN氏(46歳)。広域暴力団のフロント企業として、現在は小口融資を行う金融のほか、チケット金融や買い取り金融、質屋ヤミ金などを展開しているといいます。



僕はN氏の事務所に関係者のフリをして潜入させてもらうことになりました。開店時間はAM10時。融資を申し込む電話が鳴るスチールデスクのひとつを陣取り、客を待ってみます。平日月曜日のお昼、近隣にはオフィス街がありサラリーマンの客が多いといいます。


【AM10:11】


最初の客が朝一番にやってきました。


1人目―男性(35才/職業:自動販売機設置営業)


不動産会社の営業マンだった彼はリストラに遭い、失業。今では、月収18万の自動販売機の補充をしながらのルート営業マンをやっているそうです。妻と子供を抱え、住宅ローンも滞った状態だと話し、他店での借り入れ総額は320万円。



「資産になると思って買って、その家に追い詰められてるんですから世話ないですわ……。もし身軽なら市営住宅やら、府営住宅やら、文化住宅やらに住んで、生活への負担も少なくてなんとかなるんですけどねぇ」


彼は、宝物にでも触るような手つきで1万円札を数えながら、35年ローンでマイホームを手に入れたことを後悔しています。借入額は、子供の給食費を支払うための3万円。給食費未納のバカ親が増える時代に、律儀に生きる正直者は貧乏くじを引くのか……正直そう思ってしまいます。札を収める財布の中には小銭しかなく、夢を託した近畿宝くじが3枚ほど入っていました。



立ちあがった彼の靴をみると、履きつぶしてヨレヨレ。N氏は「だいたい借金にまみれになった客は足元から汚い。“自分の足元がみえていない”証拠や」と話します。

ちなみにこの3万円が10日に2割(金利先引きあり)で、1ヶ月後には2割5分の金利で6万円の返済に膨れ上がるのです。


【AM11:01】


続いては女性客。悲壮な表情で彼女は入店してきた。


2人目―女性(24才/職業:派遣社員)


偽装請負や多重派遣を平然と行っているという悪質な派遣会社に事務とテレアポとして勤務する彼女は、必要以上に給与をピンハネされ、月の手取り13万円。「契約解除するなら違約金を支払え!」と会社に脅され、辞めるに辞められない状況が続いているそうです。



「ホントにヒドい会社です。超ブラック企業ですよ、ホントに。保険料など差し引かれていますが、どうも福利厚生などには回っていないみたいなんです。この間は、同じ派遣会社で働いていた30代の女性が生活苦で自殺しました。でも、会社は知らぬ存ぜぬで……。“辞める”と言った男性スタッフが集団リンチされたと、まことしやかに囁かれてます」


賃貸の実家暮らしで生活はギリギリ。なんとか生活はしているが、そこはうら若き女性。ほしいブランド品もあり、5万円の金を借りにきた。他店借り入れ総額は300万。


「一生懸命働いているのにバカみたいで、死ぬことも考えました。でも実家には認知症の母がいるし、働かなくっちゃって……」


彼女は朝7時から12時間の仕事をこなしながら、自宅近くのラウンジスナックでアルバイト。その店でいい男を捕まえて、この生活から脱したいと考えています。とても、そんな劣悪な労働環境で働いているとは思えない身ギレイにした姿と、そばに置かれたヴィトンのバッグがなんだか哀しく見えました。



彼女が帰った後、N氏は「そんなもん、労基に駆け込んだらええ話やのに、“無知”“根性がない”ことで、自分の首を絞めることになる。そのうち、風俗に沈められるだけや」とつぶやきました。


まさか開店と同時に金融チラシを見た客からの電話が鳴り響き、昨日に申し込みの電話を入れてきた客たちが朝から押しかけてくるとは思いも寄りませんでした。さらにどんどんと客足は伸びます。


≫≫続く


(C)写真AC


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(執筆者: 丸野裕行) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか


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