昨今の日本では、地震や台風などの自然災害だけでなく、新型コロナウイルスのようなパンデミックなど想定外の災害が多発しています。こういった事態に陥ったとき、企業は速やかに従業員の安否を確認しなければいけません。
今回の記事では、企業が行う安否確認について詳しく説明します。安否確認の意味や重要性、おすすめの安否確認サービスなど、安否確認に関するさまざまな情報をまとめました。
安否確認とは?
安否確認とは、災害などの緊急事態が発生したときに関係者の生存を確認し、その現在状況を確認することです。
一般的には、家族や友人、学校の生徒や一人暮らしの高齢者など幅広い意味で使用されています。今回の記事では、企業が行う安否確認について解説していきます。
企業にとっての安否確認とは
企業にとっての安否確認とは、緊急事態の際に従業員が無事であったかどうかを確認し、現在状況を把握することを意味します。
会社にはオフィスで働く内勤者もいれば、営業員や現場作業者のように外勤者もいます。こういったすべての従業員の安全状況を確認し、怪我の有無や連絡が取れない者はいないかなどの確認を行います。
企業の方針によっては従業員本人に限らず、その家族まで安否確認を行う場合もあります。
企業にとって安否確認が重要な理由
企業は災害に見舞われた場合も、事業を継続できるように努める必要があります。そのために「BCP対策」というものが定められています。
BCP対策とは「事業継続計画」という意味の言葉で、災害が発生したとき、最小限の被害で事業を継続・復旧するための手段や方法を決めておくことを指します。
BCP対策は企業の存続に関わる重要な計画です。自然災害が起きやすい日本においてその重要性は一際高く、多くの被害を出した2011年の東日本大震災以降さらなる高まりを見せています。
安否確認はBCP対策の一環として位置付けられています。その理由は、事業の継続を検討する際に、従業員が就業できる状態にあるかどうかの把握が重要とされているからです。
“人の力”がなければ事業を動かすことはできません。また、その他のBCP対策を講じたとしても実行する従業員がいなければ実施はできないのです。
そのため、従業員の安否状況を確認することはBCP対策を考える上で重要な要素のひとつとなっています。
▼BCP対策に関する詳しい記事はこちら
BCP対策(事業継続計画)とは?いまから始める策定手順とポイント解説。
安否確認で把握すべきこと
安否確認の際、企業が把握すべきことは大きく分けて3つです。
1つ目は、従業員と連絡が取れるかどうかの把握です。すべての従業員に安否確認を行い、安全状況や就業可否を確認します。
2つ目は、従業員の家族の状況です。企業の方針によっては確認しないケースもありますが、従業員の就業可否に大きく関わるため可能であれば確認しておくのがおすすめです。
従業員本人に問題がなくても、家族の状況によっては看病やサポートを必要とする場合があり、従業員本人がその場を離れられないことがあります。
またパンデミックの場合は感染拡大を避けるためにも、従業員だけでなくその家族の体調や症状の把握が必要になるでしょう。
3つ目は、緊急時に対応できる人材の把握です。安否確認の際は、全体の人数だけでなく部署やチームなどグループごとに状況を把握する必要があります。そして、その中で緊急対応を担う人材がどのような状況にあるのかを確認しなければいけません。
例えば、自社サーバーの保守や関係取引先への状況報告、対外的なプレスリリースの発信など、緊急時にはさまざまな対応が求められます。
これらを実行・指揮できる人材がいるかどうかを確認し、もし該当者がいない場合は代わりに行える人を速やかに見つけなくてはいけません。
安否確認の代表的な方法4選
安否確認の方法にはさまざまな種類があります。その中でも代表的な4つを紹介します。
①電話
1つ目が、電話による安否確認です。リアルタイムにコミュニケーションが取れるため、素早い状況把握に役立ちます。しかし、緊急事態の際は、電話回線が混み合っていたり携帯電話基地局が被害を受けていたりして、通信網が麻痺しているケースも少なくありません。
安否確認は確実に行う必要があります。電話による確認は上述の理由から確実性が低いため、他の方法が通じない場合のバックアップとして活用するのが望ましいでしょう。
②メール
2つ目が、メールによる安否確認です。使い慣れている人が多く一斉送信によって大勢にメッセージを送れるため、効率よく安否確認が行えます。
しかし、緊急時は利用者が爆発的に増えるため、メールサーバーがパンクしてしまう恐れがあります。その場合、メールの送受信に長い時間がかかります。
安否確認では迅速なやり取りが重要です。メッセージの往復に時間がかかれば、情報の行き違いによって混乱を招く恐れもあるでしょう。メールによる安否確認を実施する場合は、このようなリスクを抱えていることを念頭に置く必要があります。
③SNS
3つ目の方法は、FacebookやTwitterなどのSNSを活用した安否確認です。SNSの強みは、インターネットを利用できることにあります。災害時、電話やメールは回線のパンクなどによって使えなくなることがありますが、そのような場合でもインターネットは使えることがあるのです。
2011年3月11日に起こった東日本大震災を例に挙げてみましょう。携帯電話の音声通話は通常の50〜60倍のトラフィックが発生するなど大幅に増加したため、電気通信事業各社は70〜95%の通信制限を実施しました。
一方、インターネットを通じてデータをやり取りするパケット通信は、最大でも30%の通信制限に止まり規制期間も一時的なものだったとされています。
そのため、TwitterやmixiなどのSNSを利用することができ、繋がらない電話やメールに代わって安否確認に活用されました(※1)。
このようにインターネットを通じてやり取りができるSNSは、有事の際に繋がりやすいというメリットがあります。
しかし、企業がSNSを安否確認に利用する場合、従業員のプライベートアカウントを把握していない可能性があります。確認できる従業員の範囲が限定されてしまうため、企業が行う安否確認においてメインの方法として据えるのは難しいといえるでしょう。
④安否確認システムや安否確認サービス
最後に紹介するのは、安否確認システムや安否確認サービスを活用した方法です。
安否確認システムとは、緊急時に企業が従業員の安全を確認するために作られたシステムのこと。一般的にWebブラウザやアプリを通じて利用するものが多く、一斉送信機能や安否状況の回答機能、回答データの集計機能など企業の安否確認に役立つ機能が搭載されています。
安否確認サービスとはサービスが持つ機能の一部に、安否確認機能が搭載されたものを指します。
どちらも安否確認を目的として作られたサービス・機能であり、災害時に繋がりやすい、情報収集が迅速に行えるなどの特長があります。
注意点を挙げるとすれば、専用ツールであるため日常で使用する機会が少なく、いざというとき従業員が使い方をわからない場合があります。そうならないように、事前に研修を行ったりマニュアルを共有したりなどの周知活動を行う必要があるでしょう。
安否確認の体制を整える上で大切な4つのポイント
企業の安否確認では、あらかじめ体制を整えておくことが重要です。ここでいう体制とは、安否確認にあたり組織の中で統一すべき認識やルールのこと。これらを定めておくことで、いざというとき混乱せず迅速に安否確認を行えます。
体制を整える上で大切にしたい4つのポイントについて解説します。
①連絡手段を統一する
安否確認の連絡手段は、統一しておくことが望ましいです。
メールや電話、SNSなど、安否確認に利用できる連絡ツールは数多く存在しますが、それらを混同して利用すると使用者側がどれを使えばいいのか混乱するだけでなく、管理者側も確認や集計に大きな手間がかかってしまい迅速に安否確認できない恐れがあります。
最優先で使う連絡手段はひとつに絞り、それ以外のツールやシステムは最優先の連絡手段が使えなかった場合にのみ使用する、といったレギュレーションを定めておく必要があるでしょう。
②連絡手段の使い方
連絡手段を定めている場合、そのツールやシステムの使い方を周知しておく必要があります。普段から使い慣れている電話やメールなら不要ですが、安否確認システムなど日常で使う機会の少ないものは、初見では使い方がわからない恐れがあるからです。
研修を行ったりマニュアルを配布したりして、緊急事態時に従業員がツールの使い方で混乱しないようにしましょう。
また操作の仕方だけでなく、「どの機能をどんなタイミングで使うか」などの具体的な使い方まで定めておくのがおすすめです。
機能を豊富に備えているサービスの場合、使用者が「どれをどのように使えばいいのかわからない」と混乱してしまう恐れがあります。
③連絡内容をあらかじめ決めておく
安否確認の際は、事前に連絡内容を定めておくのがよいでしょう。連絡内容を定めておくことで、必要な情報を漏れなく収集でき、事業計画を立てやすくなります。
また、緊急時は慌てていることも多く、連絡内容を考える余裕がない場合もあります。そういったとき、連絡内容があらかじめ決められていれば、内容に悩むことなく迅速に連絡ができます。
具体的な内容としては、従業員から会社に報告する場合、「怪我の有無」や「就業可否」、「家族の状況」などがあります。会社から従業員に対して連絡する場合は、「今後の連絡手段」や「現在の対応状況」など、全体状況の情報を共有するような内容が挙げられるでしょう。
④緊急連絡網として普段遣いを
先ほど説明した通り、安否確認のツールやシステムによっては、初見だと使い方がわからない可能性があります。防止策としてマニュアルや研修などを整備し、使い方を周知しておく必要があるのですが、緊急連絡網として普段から利用しておくことも効果的です。
安否確認システムの多くは緊急連絡網としても活用できるような機能を備えています、サービスにもよりますが、既存の連絡方法から置き換えたとしても大きな問題が発生する可能性は低いといえるでしょう。
実際に使ってみて慣れておくことで、緊急事態の際も困惑せずにシステムを利用できます。
安否確認システムの選び方|3つのポイント
安否確認システムのサービスは、世の中にたくさん存在します。それぞれ機能や特長が異なるため、自社に合った安否確認システムを選ぶことが大切です。
安否確認システムを選定する上でおさえておきたい3つのポイントを解説します。
①システムは使いやすいか
安否確認システムは、全従業員が利用します。ITリテラシーの高さは人それぞれなので、日常からIT機器に触れないような人でも使い方がわかりやすいようなシステムが望ましいです。
使い方がわかりやすいシステムであれば、導入時に必要な研修やマニュアル作成にかかるコストも圧縮できます。
②個人情報の保護がしっかりとしているか
安否確認システムを利用する上で、個人情報の取得は必要不可欠です。だからこそ、個人情報保護に高い関心を持って取り組んでいるサービスを検討しましょう。
近年、個人情報の漏えいや不正利用が大きな社会問題となっています。
東京商工リサーチによると、2020年に上場企業とその子会社で、個人情報の漏えい・紛失事故を公表したのは88社、事故件数は103件、漏えいした個人情報は2,515万47人分に達したとされています。社数については、調査を開始した2012年以降で最多とのことです。
中でもサイバー攻撃による不正アクセスの件数は年々増加の一途を辿っており、手口は巧妙化かつ高度化しているといわれています。
従業員のプライバシーを守るためにも、サービスを提供している運営組織が個人情報保護に関してどれだけ意識高く取り組んでいるかを確認しましょう。
着目するポイントとしては、個人情報の保護に対する第三者認証制度“プライバシーマーク”に適合しているサービスかどうかなどを確認しておくのがおすすめです。
参考:「上場企業の個人情報漏えい・紛失事故」調査(2020年)
③双方向でやり取りができるか
先ほどお話しした通り、災害時に電話やメールは通じなくなる恐れがあります。場合によっては、数日に渡って通じない状況が続く可能性もゼロではありません。
そんなとき、インターネットを介して利用できる双方向性の掲示板があると便利です。双方向でやり取りができるため情報共有がしやすく、通信環境の安定性も高いため従業員同士の連絡ツールとして活用できます。
【おすすめ】ビジネスチャットと安否確認
先ほど安否確認の方法のひとつとして、安否確認サービスをご紹介しました。安否確認サービスとはサービスが持つ機能の一部に安否確認機能が搭載されたサービスのことです。
実は、企業向けのコミュニケーションツール「ビジネスチャットサービス」の中にも、安否確認機能が搭載されているものがあります。
ビジネスチャットによる安否確認は、新たに安否確認システムの導入を検討されている企業や既存の安否確認方法を見直されている企業におすすめです。次の節では、ビジネスチャットで安否確認を行うメリットについて解説します。
ビジネスチャットで安否確認を行うメリット
ビジネスチャットツールによって安否確認ができることには、さまざまなメリットがあります。
まずひとつ挙げられるのが、“コストの圧縮効果”です。利用ツールを1つに絞れることで月額で支払うシステム利用料といったランニングコストを削減できます。
もうひとつが、“少ない作業工数で迅速に普及できること”です。ビジネスチャットは日常から利用しているツールのため、大掛かりな研修は必要ありません。安否確認機能の部分だけ追加研修やマニュアル配布を行えばよいため、少ない負担で利用体制を整えられます。
さらに挙げられるのが、“メールや電話に比べて連絡が取りやすいこと”です。ビジネスチャットは手軽にやり取りを行えるため、連絡が通じやすいです。コンパクトな文章でテンポよくやり取りができるので、リアルタイムな情報共有ができます。
安否確認において従業員に連絡が通じないのは非常に不安なことです。従業員の安否状況が心配であることはもちろん、事業の停滞にも直結しかねません。ビジネスチャットの“連絡の取りやすさ”は大きなメリットといえるでしょう。
ビジネスチャット「WowTalk」の安否確認機能
実際のところ、ビジネスチャットに付帯している安否確認機能とはどのようなものなのか。
筆者所属のワウテック株式会社が提供しているビジネスチャット・社内SNS「WowTalk(ワウトーク)」を例に挙げて解説します。
ユーザー側の使用イメージ
まずユーザー側での使用イメージについて解説します。管理者によって発報された安否確認は、上記イメージ画像のような形でユーザーの元へ届けられます。トークに届いたメッセージを確認したユーザーは、トーク画面から回答を選択して管理者に状況を報告できます。
選択方式による報告だけでなく、テキストの打ち込みによって報告することも可能です。また画像や位置情報も共有できるため、被災状況をより詳細に報告できます。
管理者側の使用イメージ
続いて、管理者側の使用イメージについて解説します。実際に安否確認を発報する際のイメージ画像がこちらです。メッセージ送信の機能から、災害種別や送信範囲、送信内容を設定することができます。
後述する“テンプレート設計機能”を使えば、より迅速にメッセージ送信が行えます。
こちらがテンプレート設計機能です。メッセージの送信内容をあらかじめ設定でき、テンプレートとして保存できます。ゼロから入力する手間を省くことができ、災害時の迅速な安否確認をサポートします。
ユーザーから寄せられた回答の確認について、確認画面は上記イメージ画像のような形になっており、ユーザーからの回答を一覧で把握できます。集計情報も一眼でわかるように設計されているため、素早い状況把握が可能です。
>>安否確認ができるビジネスチャット・社内SNS「WowTalk(ワウトーク)」
ビジネスチャットを安否確認に利用した事例
ビジネスチャットを安否確認に利用した事例として、WowTalkをご導入いただいた企業様の導入事例取材を一部抜粋してご紹介します。
北都システム株式会社
北海道・札幌市に本社を構え、ITソリューションの提供やプロダクトの企画開発を軸に事業を展開する北都システム株式会社様では、2018年9月の北海道胆振東部地震(ほっかいどういぶりとうぶじしん)の際にWowTalkを安否確認にご活用いただきました。
道内の電気供給が完全に停まってしまい、札幌本社を含めネットワーク機器が停止した中で、WowTalkを利用しているメンバーだけがタイムリーに連絡を取れたそうです。
同社ではBCP対策として、災害時に安否確認のアラートを発信するサービスを導入しており全社員宛にメールが一斉配信されましたが、アドレスが変更されていて通知が届かなかったケースもあり、返答を確認できないメンバーの方がいらっしゃいました。
そんな中、WowTalkを普段から利用していたメンバー20〜30人で連絡を取り合い、詳細な状況確認は電話で行うといったような形で安否確認を進められていったのだとか。
総務部総務グループの安西様はインタビューの中で、「想定していた用途ではありませんでしたが、あらためてWowTalkを導入してよかったと感じた瞬間でした」と語っています。
▼北都システム株式会社
障がい者雇用から安否確認まで様々なコミュニケーション手段としてWowTalkが活躍
安否確認の意味を知り正しくBCP対策
安否確認について、言葉の意味から代表的な方法、安否確認システムの選び方など幅広い情報をお伝えしました。
安否確認はBCP対策の一環として非常に重要なものです。これから安否確認の体制を整えようと考えられている企業の方は、ぜひこの記事を参考に整備を進めていただければと思います。安否確認を正しく理解し、BCP対策の精度を高めましょう。