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「元アブラハム」高岡壮一郎氏の仮想通貨ICO事業『ソーシャルグッド財団』への懸念と疑念【やまもといちろう】



過日、交通広告などで著名タレントを使い「毎月5万円で1億円は貯められる」などと称し、一般の投資家から資金を集め、関東財務局から行政処分を受けた旧アブラハム・グループHD社の高岡壮一郎氏。その後、あゆみトラストHD社として再出発… したものの、今度は「ソーシャルグッド財団」と称し、仮想通貨・ICOビジネスに進出していることが話題となりました。


アブラハム・プライベートバンク株式会社に対する行政処分について(金融庁・関東財務局)


http://blog.stakaoka.com/archives/52154844.html


アブラハム「いつかはゆかし」誇大広告の疑い - やまもといちろう 公式ブログ


https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/2999140.html


アブラハム「いつかはゆかし」の業法違反と誇大広告(有利誤認)について(修正あり)(修正あり)(山本一郎) - Y!ニュース


https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20130818-00027346/


その「ソーシャルグッド財団」と称する高岡壮一郎氏の団体ですが、果たして本当に財団として登記されているのでありましょうか。登記を調べてみると、財団と名乗っているものの、実態は単なる株式会社で、財団ではなさそうです。


「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」では、ただの株式会社なのに「ソーシャルグッド財団」と名乗って財団と誤認させる商法について、以下のように禁じています。英文表記のFoundationも財団ですので、どちらにしても適法ではなさそうです。


第六条 一般社団法人又は一般財団法人でない者は、その名称又は商号中に、一般社団法人又は一般財団法人であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。


しかしながら、高岡壮一郎さんは自身の公式ホームページですらずっと「Social Good財団」と連呼して、財団であることをアピールしています。途中で「財団を名乗るとまずい」と思ったのか、「Foundation」に書き換えてますが、どっちにしろ財団を自称しているということに違いはありません。



https://socialgood-foundation.com/jp/interview/


同様に、ソーシャルグッド財団のICO事業のホワイトペーパー(仮想通貨やICOの、構想および可能となる技術的な裏付けなどを説明する文書)では、「Social Good エコシステム」が商標登録済みのトレードマーク(™)表記になっていますが、データベースを見ると現在もまだ登録申請中です。ところが、その主たる単語である「Social Good」は昨年2017年12月に別の会社がすでに商標登録済みで、後発のソーシャルグッド財団が商標登録を確保できる可能性は未知数です。なんで先に商標登録がされていない単語探して商標登録を押さえてからブランディングしなかったのでしょう。


また、そのソーシャルグッド財団のサイトや、掲載されているホワイトペーパーにおいては、「取引実績」として多数の大企業のロゴが掲載されてあり、あたかもこの「ソーシャルグッド財団の理念に賛同して、ソーシャルグッド財団の発行するICOトークンの購入や頒布に協力しているかのような書きぶりです。


中には私の取引先もあるため、個別に連絡を取り、本当にソーシャルグッド財団のICOトークンに賛同しているのか? と聞いてみたところ、次のような反応でありました。







筆者「ソーシャルグッド財団と称する団体が貴社の協力を得てホワイトペーパーを公開しているのですが、関わりについてご教示願えますでしょうか」


A社広報「ソーシャルグッド財団との取引は特になく、ICOに賛同したという経緯もありません。ロゴが勝手に使われていたのは問題なので、ちょっと確認の上対処いたします。ご連絡いただきありがとうございました」


B社広報「担当部署に確認しましたが、Social Good Foundation Inc. という法人に協力したり、企業ロゴの使用を許可した経緯はありませんでした」


と、一様に「ソーシャルグッド財団について知らないか、ロゴの使用を許可した経緯がない」という反応で、これは問題であろうと思うわけであります。


また、そもそもこのソーシャルグッド財団は仮想通貨ベースのICOトークン発行運営会社とされていますが、資金決済法上の仮想通貨交換業者のみなし登録すらもされていません。


仮想通貨バブルが華やかとなった昨今、国内でも海外でもICOトークンのプレセールなどが盛んに行われる一方、18年1月のコインチェック社仮想通貨流出事故以降は特に不適切な仮想通貨交換業者や仮想通貨ベースのICO資金調達は監視が厳しくなりました。ソーシャルグッド財団では、まず本社が日本にあったうえで、なぜか日本語のホームページ上で特定商取引法に基づく表記が記載されています(しかし何故か電話番号はない)。常識的には日本に本社があって日本で特商法表記があれば、日本在住か海外在住を問わず日本人向けにトークンを売る意志を持っているように見えます。




なので、先日ソーシャルグッド財団にのんびり質問メールを送ってみたんですよ。内容は2点、以下の通りです。


1. 金融庁は、貴社含め資金決済法上の登録業者である仮想通貨交換業者以外が仮想通貨の売買代行、運用などの事業を目的として資金を集めていることを明確に禁じています。国内事業者が国内・海外で仮想通貨運用などを目的に資金調達を求めること自体が違法と見られますが、貴社ご見解をお聞かせください。


2. 貴社ホワイトペーパーなどで記述されているパートナーや協力企業に確認したところ、実際には何の取引もなければ協力関係もない各社の名称とロゴが多数使用されていることが分かりました。これは不適切な広告宣伝ではないでしょうか。







そしたら、そのソーシャルグッド財団から「脅迫だ」という返答が返ってきました。私も彼らが何を言いたいのかさっぱり意味が分かりませんが、実際にそういう返事が来たので、以下、該当部分を引用いたします。


「山本一郎様に事実無根の記事を掲載されたものの、数度にわたる要請にも関わらず一切の削除に応じていただけなかった被害者(投資助言会社や個人)の事例に基づき、弁護士および警視庁に今回の山本一郎様のコンタクトに関して対応方針を相談しました。


その結果、弊社としては山本一郎様から業務妨害を、弊社社長個人としては山本一郎様から脅迫を受けているとの認識に至りました。


企業・個人両方のインターネット上の被害(貴記事の検索結果の表示等を含む)を未然に防ぐために、警視庁丸の内警察署刑事組織犯罪対策課に相談済みです」


企業活動に対し不思議に思う事項につき質問状を送付し、Twitter上で見解を糺しただけで脅迫だそうです。そうですか、なるほどですね。


それでは、脅迫した覚えはまったくありませんが、まずはいまに至るソーシャルグッド財団に問いかけた法人のロゴがどうなっているのか見てみましょう。







これは、少なくとも4月25日ごろまでソーシャルグッド財団のホームページに掲載されていた、「エコシステム参画予定候補(SocialGood幹事会社の既存取引先)」とされる企業群とロゴです。どうです、凄く立派な財団が高い理念のもと著名企業の惜しみない協力を得て仮想通貨ベースのエコシステムをICOで実現しているように感じませんか。




また、当時提出されていたホワイトペーパーにも、ロゴ付きの著名企業が掲載されています。これは大丈夫だったのでしょうか。




ここで問題になるのは、附則で説明されている「同社の取引先は以下の通りである」と「これらの企業を対象にSocial Good エコシステム™への初期加盟を促す予定である」という内容です。つまりは、取引の多寡はともかく別にソーシャルグッド財団のICOに参画が決まっているわけでも協力しているものでもないという「盛り」の構造になるわけであります。


その後、これらの掲載企業に問い合わせをしてみたところクレームになったのか、遅くとも5月28日ごろには画像による企業ロゴの掲載はすべて削除。なぜ協力するとされている企業のロゴが削除されてしまったのでありましょうか。



さらに、現在はホワイトペーパーが3.0にバージョンアップされた際に、名だたる大企業の過半が名前すら削除されるに至ります。ずいぶんさっぱりしましたね。



つまり、これらの著名企業の賛同・協力を得てソーシャルグッド財団のICOが実施されるという話ではなく、何らかの取引でワンタッチあっただけの企業群であって、ロゴを削除しなければならない状況に追い込まれたのではないか、と推測されるものです。


この質問に対して、ソーシャルグッド財団では「ホワイトペーパーに記載した内容は事実です。弊社の業務委託先である『あゆみトラストグループ』の取引実績であることはすべて確認済みです。ご来社いただければ、守秘義務に反しない範囲でエビデンスをお見せできます。なお、同社と各社の契約の一部は、事業の性質上、広告代理店を介した間接契約の場合はございます」と回答してきています。この「あゆみトラストグループ」とは、他ならぬ前述の「アブラハム・グループHD社」の後継企業ということにすぎません。


ICOを発行・運営するソーシャルグッド財団との取引関係にあるという回答ではないのがポイントではないかと思います。そのソーシャルグッド財団の業務委託先で取引関係があったからといって、自分たちのICOにあたかも協力が見込まれるかのような書き方で投資家を集めることは、「月5万円で1億円貯められる」と誇大広告を行った”いつかはゆかし”と同じ商法であると判断せざるを得ないでしょう。







なお、ソーシャルグッド財団では他の仮想通貨や金地金などと比べても確実な需要があるので価格の上昇圧力があるとして、自社発行のICOを勧誘しています(日本語で)。そして、今年の12月には、大幅な価格アップが見込まれるので、早くトークンに参入するほど安く買えて利幅が大きいと宣伝しているのが特徴です。つまり「8カ月でこのトークンは倍の値段になる」と言っているに等しく、広告表記も含めて本当に弁護士と相談しているのかすら謎です。


そして、その大幅な値上がりの裏付けが、前述のようにロゴを出している世界的な大企業がこのエコシステムを利用する(かもしれない)というもので、外側からは裏付けの取りようのない内容である以上、このソーシャルグッド財団が展開するトークンの販売が国内・海外で行われようが、いずれにせよ適法性が気になる物件であることは間違いありません。本当にソーシャルグッドを謳うのであれば、トークンの値上がりよりも実益と利便性のあるシステムを提供しない限りうまくいかないのではないか、と思うわけですが。


ソーシャルグッド財団に限らず、現在の仮想通貨界隈やICO周りでは、不思議なホワイトペーパーで裏付けの取りようのない技術背景のトークンセールが続いている状態にあり、いっときの仮想通貨バブルは終了しているのに業者だけが大騒ぎしている状況にあるのは大変気になるところです。


ということで、脅迫だ警察だという話であれば、上記内容も一式揃えて喜んで当局対応してまいります。もちろん、続報があればすぐにでもまた記事にしていきたいと思います。引き続き、よろしくお願い申し上げます。


 

やまもといちろう <個人投資家 / 作家 / 調査する人>

個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。介護を手掛けながら、夫婦で子供三人と猫二匹、金魚二匹を育てる。

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