穀物・雑穀の大まかな種類分け
最初にそもそも雑穀が何かについて。
私達が普段食べている米や麦、さらに地域によって主食として食べられているトウモロコシや豆などを「主穀」と言いますが、雑穀とは本来この主穀以外の穀物を総称して「雑穀」と言っています。
しかし、最近では本来主穀である玄米や麦の一種も雑穀として扱われる事があるなど、白米と挽いて精製された小麦以外は全て雑穀として扱われている面もあります。
また、主穀と雑穀という分け方以外にも、米や麦などイネ科の穀物を「禾穀類(かこくるい)」、豆類を「菽穀類(しゅくこくるい)」。胡麻や菜種などを「油穀(ユコク)」ソバやキヌアなどを「擬穀(ギコク)」という形で分類している場合もあります。
五穀とは?
日本ではよく「五穀米」という言葉が使われますが、これは米、麦、アワ、豆、キビ(またはヒエ)という日本で古くから主食にされていた5種類の穀物を指す事が多くなっています。
しかし、実際にはこの五穀も豆が大豆と小豆の二つになったり、胡麻が入ったりと明確に決まったものはありません。
穀物がよく実って豊になることを「五穀豊穣(ごこくほうじょう)」というように、現在では色々な穀物の事を含めて五穀と呼ぶのであって、特定の5種類の穀物というわけではなくなっています。
玄米・古代米
日本でも色々な穀物が栽培されてきましたが、それでもやはり米は別格として扱われていますよね。
最近ではお米も白米以外は雑穀として認知されている事も多く、白米より豊富な栄養素やダイエットに適している食品として注目されています。
玄米・発芽玄米
白米は稲のもみ殻を取り、精製によってぬかなどを取り除いたもの。一方、精製されずぬかや胚芽がついたままのものを玄米と言います。
玄米は白米と比べビタミンやミネラル分が豊富で、食物繊維も多いため糖質の吸収も穏やか。普段食べている白米を玄米に変えるだけでも高い効果やダイエット効果を得られると人気です。
ただ、玄米は白米と比べて硬く、独特の味がする点や、炊くために長時間水に浸さないと「アブシジン酸」という健康面に悪い成分が残ってしまうという点でやや扱いにくい事が難点。
一方、玄米が発芽して作られる「発芽玄米」は、玄米よりもGABAというストレスを軽減する栄養素が多く含まれる事や、玄米と比べれば柔らかく食味が良い事。更に、玄米で問題となるアブシジン酸が含まれない事などから取り入れやすい雑穀として人気です。
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もち米
もち米は基本的に普段食べているお米(うるち米)と同じなので、あまり雑穀として扱われる事はありませんが、うるち米よりも粘り気があるお米を指します。
もち米特有の粘り気は「アミロペクチン」という成分によるもので、これが多いともち米、逆に少ないとタイ米のようにパサついた米になります。
もち米はうるち米と比べて粘り気が強く、噛む回数が増える事から満腹感を感じやすくなるなどダイエットにプラスの作用があります。
赤米・黒米
赤米や黒米は、ともに古代米とも呼ばれるお米の一種。
基本的に白米と同じで、違うのは精製前の見た目や稲としての特徴。白米よりも強く育ちやすい反面、収穫量が少ないなどの特徴があり、稲を精製して中身を取り出せば白米と殆どお同じ白い色となります。
明治以前には普通に食事に取り入れられていた米でもあり、赤飯はそもそも赤米が起源という説もあるようです。
赤米や黒米は玄米と同じように精米される前の状態で食べるため、ビタミンやミネラル分が豊富。玄米よりも優れている点としては、赤や黒の色を付けている「タンニン」や「アントシアニン」のいわゆるポリフェノール成分が抗酸化作用を持つため、美容や健康にいい作用を起こすとされています。
赤米や黒米にももち米の「もち赤米」や「もち黒米」やタイ米のような長粒のものがあり、それぞれ通常のもち米と比べて栄養の豊富さやポリフェノール含有が特徴となっています。
緑米
緑米も古代米の一種で、米が緑色をした状態のもの。
赤米や黒米と同様、精米する前の状態で食べるため豊富な栄養素が健康や美容に良いとされています。
また、緑米の特徴としては緑色の成分である「クロロフィル」で、植物が光合成をするための成分。
クロロフィルは貧血や冷え性の改善の他、コレステロール値を下げて血液をサラサラにするという効果などがあり、血流関係での悩みがある場合に積極的に取り入れたい穀物です。
米以外の主穀(麦・粟・ヒエ等)
美味しさや安さを求めて品種改良が繰り返された時代と変わり、現代では主食にも豊富な栄養素を求める時代。
そんな背景から米以外の穀物もその価値が見直されつつあります。
大麦・もち麦
もっとも雑穀として食べられているものが大麦ではないでしょうか。飲食店でも麦飯などに使われる穀物で、食味もよく食べやすいため、人気の雑穀の一つです。
大麦は世界最古の穀物とも言われ、小麦、米、トウモロコシの次に生産量が多い穀物でもあります。
鉄分や亜鉛などのミネラル分と食物繊維が豊富で、白米に普通に混ぜて炊くだけで主食の栄養価を高めつつ血糖値の急な上昇を抑えてくれるので、とても扱いやすい食材。
主食だけではなく、麦茶として飲む事でも馴染みが深いと思います。
もち麦は大麦の一種で、もち米とうるち米があるように、粘り気の強い大麦をもち麦と言います。
雑穀米を始めたいという人が、最初に取り入れるのにおすすめの雑穀です。
ハトムギ
麦の一種として、そのまま食べたりお米に混ぜたりしてよく食べられるハトムギ。
生薬の「薏苡仁(ヨクイニン)」と同じもので、漢方やお茶などでも取り入れられる食材です。
ハトムギは肌の代謝を活発にする効果などがあり、ハトムギを摂取するとにきびやイボなどの肌トラブルも早く解消する美容効果があります。
あわ(もちあわ)・きび・ひえ
「粟(あわ)」は元々は猫じゃらしと同じ種類の植物からとれる食品で、「濡れ手にアワ」ということわざでも馴染みがある穀物です。
「黍(きび)」はなじみ深い所では桃太郎に出てくる「きびだんご」の材料。
「稗(ひえ)」は寒冷地でも育ちやすい事から名前がきている雑穀で、あわ、きび、ひえはどれも小さくて丸い粒上の形をした状態で販売されています。
ビタミンB群やミネラル分、食物繊維が豊富という点では玄米と同じような特徴があり、米と一緒に炊く使い方もいいですが、スープやサラダなどで食べるとちょっとした食感のアクセントにもなってオススメです。
油穀・ゴマ
油を多く含むゴマ類も雑穀の一つ。
ゴマはそれぞれ種類によって栄養素などの特徴があります。
白ごま・金ごま
ごまの代表格である白ごま。
ごまはそもそも栄養素が豊富でバランスよく、それ自体に高い健康・美容効果がありますが、ごま特有の成分として「ゴマリグナン」という抗酸化物質があります。
ゴマリグナンは抗酸化物質として体のバリア機能を高める他、女性ホルモンと似た作用をする栄養素で、更年期障害や生理トラブルなどの改善に効果を発揮します。
ゴマの有用な栄養素としてはセサミンが知られていますが、セサミンはこのゴマリグナンの一種。セサミンは特に肝臓の負担軽減に有効ともされていて、肝機能を高める事で生活習慣病を改善する働きも期待できます。
白ごまや金ゴマは黒ゴマと比べてやや脂質分が多く、良質な脂肪を取り入れるためにも向いています。
黒ゴマ
ゴマの中でも黒い色をした黒ゴマは、白ごまや金ゴマよりもアントシアニン(黒い色素成分)が多く含まれていて、高い抗酸化作用を持ちます。
また、漢方では黒ゴマは髪の悩みにも良いとされていて、白髪や抜け毛を防ぎ健康で美しい髪の毛を目指すためにも有用です。
ケシの実
ケシの実はよくお菓子の材料として使われる食材の一つ。ごまよりもさらに小さい粒で、不飽和脂肪酸を多く含むため高カロリーではありますが、ビタミンやミネラルなどのバランスもよく美容面に効果的。
雑穀として食べるというよりも、スパイスとして利用される事が多く、クルミやナッツのような味わいです。
豆類
豆は世界各地で主食にされている穀物で、他の穀物とくらべタンパク質などが多い事からダイエットなどに向いているものが多いというのが特徴です。
大豆・枝豆
日本で最も親しまれている食材ともいえる大豆。醤油、みそなどの調味料から、納豆、豆腐といった食品まで、大豆が原料の食品は数多くあります。
また、おつまみで出てくる枝豆は大豆が未成熟な状態の事で、基本的に同じもの。
しかし、栄養素には違いが多く、枝豆が成熟する過程でタンパク質や糖質をはじめ、多くのミネラル分などが増える一方、ビタミンCなどは減少します。
大豆は畑の肉とも言われる程タンパク質の分量が多く、プロテインの原料にもなっている通り、筋肉を作るために適した食材の一つ。
食事に取り入れてもいいですし、おやつに炒った大豆を食べるようにすると、空腹感を満たしつつ筋肉が育ちやすい状態を作れるので、特にダイエットにおすすめです。
小豆
あんこなどの原料になる小豆ですが、糖分以外にもビタミンなど豊富な栄養や、様々なポリフェノールが含まれている事が大きい特徴の小豆。
皮の赤い色の「アントシアニン」を始め、カテキンやルチン、胚芽部分にはイソフラボンも含まれ、ポリフェノールの代名詞である赤ワインよりも多くのポリフェノールを含んでいます。
ご飯にまぜて炊くと赤飯になりますが、砂糖少な目で似て糖質のすくないあんこにして、おやつなどに食べるのもおすすめです。
黒豆
他の豆類と同様、高い栄養価や豊富な食物繊維の他、コレステロール値を下げるサポニンや抗酸化作用のアントシアニンなどが豊富で、1日に70g程度の黒豆を食べる「黒豆ダイエット」などもあります。
市販の雑穀に含まれている事が多い食材で、栄養価のバランスを取りつつ血糖値の急上昇を抑える役割である他、ご飯に色を付けて雑穀米と分かりやすくするという役割も持っています。
レンズ豆
洋食でよく利用されるレンズ豆も、最近は雑穀として取り入れられる食材の一つ。
レンズ豆は欧州圏ではとくに古くから食べられている豆で、鉄分が豊富な事から貧血の改善などにも効果的。
豆の中でもそのまま煮るだけで食べれるため、調理も楽。ちょっと料理にアクセントをつけたい時に楽しむのも良いでしょう。
擬穀
イネ科などの穀物ではないものの、形状などが穀物と似ていて穀類の一つとされる擬穀。
最近注目されている食材も多く、美容のために是非取り入れたい穀物です。
ソバ
蕎麦は麺類のイメージが強いですが、そばの実はそのまま雑穀として食べる事も多い食材。
豊富なビタミンB類の他、アミノ酸などのバランスもよく「畑の牛肉」とも言われるようです。
蕎麦に豊富に含まれる「ルチン」は毛細血管の強化にも効果を発揮し、冷え性の改善や、脳細胞の活性化による認知症予防、記憶力強化にも良いとされています。
キヌア
スーパーフードとして注目を集めた「キヌア」は、南米原産の雑穀。
現地で母なる穀物として食べられてきた経緯があり、必須アミノ酸が全て含まれるなど高い栄養価のバランスが美容や健康に良いとされています。
ナトリウムやカリウムといったミネラル分や食物繊維は玄米よりも更に豊富で、また女性ホルモンに似た作用をするフィトエストロゲンという成分も持つ事から、ダイエットや女性の悩み解消にも効果的。
キヌアは単体で茹でて、サラダなどに入れると食べやすく、食感を楽しめるのでおすすめ。クッキーなどスイーツに入れて楽しむ事もできます。
アマランサス
世界保健機構(WHO)に「未来の食物」と評価されるなど、豊富な栄養素から注目されているアマランサス。
キヌアと同様、必須アミノ酸を網羅し、ビタミンやミネラルといった栄養素も豊富な事からとても健康や美容に良い食材だといえます。
フライパンで軽く炒ってゴマのように利用できるので、トッピングとして料理に使いやすいのも特徴の一つです。
雑穀は頑張らずに毎日の食事に取り入れて!
雑穀は、短期間とりいれたからといって高い効果を発揮するものではなく、継続して日々の食事をより良いものにするために取り入れたい食品。
美味しくないのに頑張って食べるよりも、ご飯に少し混ぜてみたり、サラダや料理に少しずつとりいれながら、味の変化などを楽しんで取り入れるようにする事が、長続きさせるコツでもあります。
体に良い雑穀だからと頑張って食べるのではなく、気になったものをちょっとずつ買い足しながら、楽しんで毎日の食事に取り入れてみてください。