

皮膚のかゆみで夜も眠れない、化粧ができない……。そんなアトピー性皮膚炎の悩み、「もう治らない」と諦めていませんか? 実はいま、アトピー性皮膚炎の治療は大きく進化しているんです。
2025年7月8日、東京・虎ノ門で開催された日本イーライリリー株式会社主催のメディアセミナーにて、アトピー性皮膚炎の最新治療事情と患者さんの実態に関する報告がありました。
登壇したのは、近畿大学医学部皮膚科学教室の大塚篤司主任教授と、ご自身もアトピー性皮膚炎の経験を持つ俳優の岸谷五朗さん。
お二人のお話から見えてきたのは、治療への希望と、最新治療の情報がまだ多くの患者さんに届いていない現実でした。
患者さんの7割が「かゆみに我慢できない」現実

今回発表された調査結果によると、中等症以上のアトピー性皮膚炎患者1,015名のうち、約70%の方が「かゆみが我慢できない」と回答。
さらに、57%の方が「仕事や学業に支障をきたしたことがある」と答えています。

ゲストの岸谷五朗さんも幼少期からアトピー性皮膚炎に悩まされ、「子どもの頃から手がカサカサで、手を繋ぐフォークダンスが嫌で仕方なかった」「20代の頃は眉毛が抜けるほどひどい症状だった」と当時を振り返ります。
いまも舞台俳優という職業柄、汗をかくことが避けられない中で、「汗をかいたらすぐにシャツを着替える、必ず汗を拭き取る」など、独自の対策を心がけているそうです。
女性の74%が「化粧ができない」経験

女性にとって特に深刻なのが、外見への影響です。調査結果では、中等症以上の女性患者の74%が「症状により化粧ができなかったことがある」と回答。
また、46%の方が「恋愛に消極的になったことがある」、45%の方が「家族や恋人とのスキンシップをためらったことがある」と答えています。

大塚先生は臨床現場での体験として、重症の男性患者さんが治療により肌がきれいになったことで自信を取り戻し、彼女ができて結婚に至ったというケースを紹介。
「アトピーが良くなることで、人生が大きく変わることがある」と治療の重要性を強調しました。
2018年以降、続々と登場する新しい治療法の選択肢

そんな中、希望となるのが新しい治療法の登場です。
大塚先生によると、2018年にアトピー性皮膚炎の新薬が10年ぶりに登場して以降、生物学的製剤(注射)やJAK阻害薬(内服・外用)など、続々と新たな治療法の選択肢が増えているそうです。
これらの新しい治療薬は、従来の塗り薬だけではコントロールが困難だった中等症から重症の患者さんにも効果が期待できるため、「塗り薬を塗る負担」からも解放される可能性があります。
実際に外来では、「注射と飲み薬だけで調子がいいので、もう塗り薬はいらない」という声も聞かれるようになったといいます。
まだ多くの患者さんに届いていない新しい治療情報

しかし、調査結果で明らかになったのは、現在の治療法に対する満足度の低さです。
「満足している」と答えた患者さんはわずか37%、「治療で症状が良くなると思う」と答えた方も31%にとどまりました。
さらに深刻なのが、新しい治療法に関する情報不足です。直近5年間でアトピー性皮膚炎の治療について調べたことがない患者さんが58%、新しい全身療法について「よく知っている」と思う方はわずか12%という結果でした。
大塚先生は「新薬がたくさん出ているにも関わらず、患者さんに届いていない可能性がある」と指摘し、「まずは皮膚科の専門医に、新しい治療法について相談していただきたい」と呼びかけました。
「アトピーを諦めなくてよい」時代へ

岸谷さんは最後に、「同じように悩んでいる方がたくさんいることがわかった。とても良い薬があるので、みんなで励まし合いながら頑張っていけたら」とコメント。
ご自身がアトピー性皮膚炎に悩まされた経験からも、「『アトピーを諦めない』というフレーズは素敵ですね」と、最新治療を周知する大切さを実感した様子でした。
アトピー性皮膚炎は、もう諦める病気ではありません。新しい治療の選択肢について、ぜひ一度皮膚科専門医に相談してみてはいかがでしょうか。