

マンションの建設ラッシュが始まってから、多くの年月が経ちました。ANGIE読者の中にも、築年数が10年以上経過したマンションに住んでいる人は多いと思います。
実は築10年を超えるマンションの約8.3%で、外壁タイルが剥がれ落ちる危険性があることが判明しました。「まさか自分のマンションが…」そんな不安を抱く方もいるのではないでしょうか。
そんな中、住宅・建物メンテナンス事業を展開する株式会社ジェブが、ドローンによる診断と特殊コーティングを組み合わせた革新的なサービス「剥落防止くん」の提供を開始。詳細を取材しました。
高経年マンション急増で外壁タイル剥落事故が社会問題化

国土交通省の調査によると、築40年を超える高経年マンションは2023年末で約136万戸、20年後には436万戸と約3倍に急増する見込みです。こうした中、老朽化した建物外壁のタイル剥がれ落ちによる人命を奪う事故が全国で多発しており、「タイルの剥落」が深刻な社会問題となっています。
特に竣工から10年以上経過した3階建以上の建物を対象とした国交省の調査では、報告のあった11,305棟のうち8.3%にあたる943棟でタイルやモルタルなどの外壁落下の恐れがあることが判明しました(※)。
しかし、従来の打診調査は足場設置などの費用負担が大きく、外壁調査の実施割合は7割程度にとどまっているのが現状です。
(※)出典:住宅局 建設指導課 既存建築物における外壁材の 落下防止対策に関する調査結果について
ドローン×コーティングで調査から補修までワンストップに

こうした課題を解決するため同社が開発した「剥落防止くん」は、高性能赤外線カメラ搭載ドローンによる非接触診断と、透明保護膜によるタイル剥落防止工法(KFタイルホールド工法)を組み合わせたワンストップサービスです。

サービスの特徴は大きく2つのステップに分かれます。
まず、国交省が2022年に認可したドローンによる外壁点検を活用し、足場不要でタイルの浮きや劣化を短期間・低コスト・高安全性で診断します。
続いて、外壁タイルの劣化部分には透明な強靭塗膜で保護する「KFタイルホールド工法」を採用し、従来のアンカーピン工法よりも外観を損ねず、工期が短く、建物への負担が少ない補修を実現します。
業界関係者が期待する「ワンストップ対応」

発表会では、「KFタイルホールド工法」を開発したPLジャパン株式会社の松川氏、KFケミカル株式会社の大川氏、元内閣府地方創生推進事務局長の市川氏が登壇し、業界内の課題や実情について議論が交わされました。
松川氏は「剥落防止くんという覚えやすいネーミングも含めて、命を守る安心・安全の象徴として広めていきたい」とコメント。
従来5~6工程が基準のところを3工程と約半分に短縮できる効率性に加え、「剥落保証」が10年間付与できることで、公共性の高い施設にも導入しやすくなることへの期待を語りました。
市川氏は「マンションの管理組合では、合意形成や工事の進行に課題が多い中、調査から工事までをワンストップで提供できるサービスは非常に意義深い」と述べ、管理の煩雑さや分断を補う手段としてのワンストップ型ソリューションの重要性を強調しました。
環境負荷軽減とSDGsへの貢献も

「剥落防止くん」は事故の防止や資産価値の維持に貢献するだけでなく、張り替えや再塗装の削減によって環境負荷を軽減し、SDGsにも貢献します。
すでに「KFタイルホールド工法」は700件以上の施工実績があり、その効果と信頼性が証明されています。
同社代表取締役の太田猛也氏は「日本のマンションを守るために、人生をかけてこのソリューションを広めていきたい」と力強く宣言。
「新しい技術を社会に広めるには、皆さまのお力添えが不可欠です。これからも我々の動きに注目していただけるよう、取り組みを続けていきたい」と関係者に連携を呼びかけました。

家族の安全と大切な資産を守るために、これまで「見えなかった危険」を最新技術で可視化する「剥落防止くん」。
マンション暮らしの人たちが安心して過ごせる住環境づくりの新たな選択肢として、今後の普及が期待されます。
参考/取材:プレスリリース