1月30~2月3日は「鶏始めて乳く(にわとりはじめてとやにつく)」。春の気を感じた鶏が、卵を産み始める時季のことを言います。夜明けを知らせる鶏は、「霊的な力を持つ鳥」とも言われているそうです。
さて、この時季は節分のシーズン。旧暦では2月4日の立春が一年の始まりとされ、前日の2月3日は大晦日と同じ意味合いを持っていたのだとか。そのため2月3日に邪気祓いとして、豆まきが行われていたそうです。
今日は節分と豆まき、そこに込められた大切な意味をご紹介しましょう。
七十二候とは?
時間に追われて生きることに疲れたら、ひと休みしませんか? 流れゆく季節の「気配」や「きざし」を感じて、自然とつながりましょう。自然はすべての人に贈られた「宝物」。季節を感じる暮らしは、あなたの心を癒し、元気にしてくれるでしょう。
季節は「春夏秋冬」の4つだけではありません。日本には旧暦で72もの豊かな季節があります。およそ15日ごとに「立夏(りっか)」「小満(しょうまん)」と、季節の名前がつけられた「二十四節気」。それをさらに5日ごとに区切ったのが「七十二候」です。
「蛙始めて鳴く(かえるはじめてなく)」「蚯蚓出ずる(みみずいずる)」……七十二候の呼び名は、まるでひと言で書かれた日記のよう。そこに込められた思いに耳を澄ませてみると、聴こえてくるさまざまな声がありますよ。
節分とは?
「節分」とは本来、四季それぞれの変わり目を指す言葉です。現在では冬と春の境に行われるものが一般的ですが、かつては立春だけでなく、立夏や立秋、立冬の前日すべてに節分の行事があったそうですよ。
また節分は、「追儺(ついな)」という名称で日本の宮中行事にもなっていました。当時、災害や病気といったあらゆる厄は鬼の仕業であると考えられていて、「魔物を滅ぼす=魔滅(まめつ)」から転じて豆が、そして「魔物の目を射る」と「炒る」をかけて、炒った豆をまいて厄祓いをしたそうです。
豆をまいたあとは歳の数だけ豆を食べて、家族みんなで無病息災を願う、それが節分の意味なのです。
「福は内」「鬼は?」
豆まきのかけ声と言えば「鬼は外、福は内」が定番ですが、逆に神社に鬼を呼び込み、福を各家庭に届けるという意味で、「鬼は内、福は外」というところもあるそうです。
また、「福は内、鬼は内」というかけ声をかけるのは、鬼子母神(きしもじん)などの「鬼神(きしん)」を祀っていたり、名前に鬼の字がつく神社。東京では、新宿歌舞伎町の稲荷鬼王(いなりきおう)神社が有名です。
また、奈良県の世界遺産、金峯山寺(きんぷせんじ)蔵王堂では、寺の開祖、役行者(えんのぎょうじゃ)が鬼を改心させ弟子にした故事にちなんで、「福は内、鬼も内」というかけ声で豆まきを行っているのだとか。
鬼と言えば、私たち人間の心に潜むよこしまな考えや邪心のことを指して、「心の鬼」と呼ぶことがあります。
ですが金峯山寺の故事からは、人間には「心の鬼」だけでなく、鬼も迎え入れて改心させるやさしさ、懐の広さもあるように感じられて、なんだかあたたかい気持ちになれますね。
新年に向けて、厄を祓う意味で行われていた節分の豆まき。地域や由来によってそのかけ声もさまざまですが、「家族が健やかに年を重ね、一緒にお正月(旧正月)を迎えられますように」という幸せの祈りが込められた風習であることに変わりはありません。
これからも大切に受け継いでいきたい行事ですね。
【参考】『くらしを楽しむ七十二候』広田千悦子/泰文堂、『おもひでぎょうじ』/晋遊舎