VRヘッドセットを販売しているメーカーは、いずれもその販売台数を明らかにしたがらない。そのため、現時点で販売されたVRヘッドセットの台数を正確に見積もるのは難しくなっている。
それでも、市場調査会社は販売されたヘッドセットの台数を予測しようとしている。根拠となる情報は、企業の発表する経営状況やユーザへのアンケート調査、コンテンツのダウンロード数といったものだ。
IHS Markitが新しく発表した予測によれば、サムスンが販売したGear VRの総数は今年の終わりまでに1,000万台近くなるという。
発表された販売台数
Gear VR
先日、ジェスチャーコントロールに対応したリモコン付きの新しいGear VRをデビューさせたサムスン。同社は以前、正式にGear VRの販売台数を発表したことがある。
その情報によれば、今年初めの時点でGear VRの販売総数は500万台を超えている。IHS Markitは、今年の販売台数を含めると1,000万台近いGear VRが販売されたことになると見積もった。
IHS Markitの予測では、2017年に販売されるGear VRは412万台とされている。これは昨年販売された456万台に比べると9.6%減少した数字だ。2016年に比べて販売台数は落ちるものの、依然としてモバイルVRの王者の座を守ると予測されている。
Gear VRは2014年の後半に開発キットとして登場しているので、それらも含めての500万台という数字だ。今年の初めまでに販売された500万台と今年販売予定の412万台を合わせると900万台を突破する。
2018年にかけて、Gear VRの販売台数は1,000万台近くなるとみられる。
Daydream View
もう一つ、モバイルVRで注目を集めている存在がGoogleのDaydream Viewだ。Googleはこれまでに一度もDaydream Viewの売れ行きを示す情報を発表していない。だが、市場調査の結果からはかなりの速度で広まりつつあるとみられている。
IHS Markitが予測した昨年の販売台数は、12万台となっている。Gear VRに比べるとかなり少なく見えるが、GoogleがDaydream Viewの販売を開始したのは年末であることを忘れてはならない。
2017年には223万台のDaydream Viewが販売される見通しだ。2017年の後半にはサードパーティからもDaydream Readyなスマートフォンが続々と登場することが予定されている。この販売台数には、対応端末の増加による販売促進効果も加味されている。
Googleからは販売台数を示唆する情報が発表されていないが、IHS Markitは2016年末時点のGoogle Pixelの売上、Daydreamアプリのダウンロード状況などのデータから販売台数を予測している。
サムスンの戦略
2017年の新型モデルでは、Gear VRにもリモコンが付属するようになった。Daydreamとの大きな違いはこれで埋められたが、GoogleとサムスンではVRヘッドセットを販売するスタイルが全く異なるものになっている。
メリット
Googleは、ヘッドセットをサードパーティ製のスマートフォンでも利用できるようにしている。この方針であれば使用しているスマートフォンのメーカーによってVRヘッドセットを購入する潜在的な顧客を減らしてしまうことがない。
Pixelを販売するよりも、Daydreamプラットフォーム自体の普及を考えた戦略と言えそうだ。
一方のサムスンは、Gear VRを自社のGalaxyブランドスマートフォンにしか対応させていない。その代わりに、最新のスマートフォンを予約したユーザは無料でGear VRを入手できる。
自社のエコシステムに顧客を囲い込めることがメリットだ。Gear VRや、360度カメラのGear 360を使うためにGalaxyスマートフォンを購入するユーザもいるだろう。複数のサムスン製品を利用するファンを増やし、ユーザ一人あたりからの収入を大きくすることが期待できる。
デメリット
それぞれの戦略には、もちろんデメリットもある。
Googleの場合は、Pixelが売れない可能性がそれに当たる。サードパーティから魅力的な端末が登場した場合に、Daydream Viewの存在によってPixelをアピールすることができない。そのため、Pixelよりもそちらを購入するユーザが多くなるかもしれない。
Googleがスマートフォンの販売をメインビジネスにしていないからこそ、可能な戦略である。
サムスンの場合は、GalaxyブランドとGear VRプラットフォームが運命共同体になってしまっている。GalaxyかGear VRのどちらかで失敗したときに、もう一方も同時にユーザを失うリスクがある。
サムスンの変化
モバイルVRの分野では、サムスン一強の時代が続いていた。同等の機能を持つライバルが居なかったので、積極的なバンドル戦略によってGear VRのシェアを拡大することができていたのだ。しかし、Daydreamプラットフォームが登場したことでその状況も変化しつつある。
既に、サムスンのバンドル戦略は変わった。Galaxy S7ではGear VRのバンドルが基本となっていたが、Galaxy S8の販売時にはGear VRバンドルの予約を受け付けなかった国もある。アメリカやオーストラリアでは従来通りのバンドルが提供されたが、ヨーロッパでは国によって対応が異なった。
IHS Markitは、こうした戦略の変更とGear VR本体価格の上昇が2017年のGear VR販売台数の減少につながると考えている。
この推計ではGear VRの販売台数が2016年に比べて落ちると予想されているものの、それでもモバイルVRトップを守るとされている。急成長するDaydream Viewの倍近い売上が期待されており、Gear VRの強さを伺わせる。
サムスンは年に二度、新しいスマートフォンを発売するサイクルを持っている。今年の後半に登場するスマートフォンや、そのときのバンドル戦略がどうなっているかにも注目だ。
参照元サイト名:Upload VR
URL:https://uploadvr.com/ihs-estimates-4-million-gear-vr-2017/
参照元サイト名:IHS Markit
URL:http://news.ihsmarkit.com/press-release/technology/smartphone-vr-samsungs-gear-vr-retain-lead-2017-googles-daydream-platform-e
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