Oculus Blogは、2017年4月18日のブログ記事において、「Facebook Spaces」を紹介した。
Facebook Spacesとは?
2017年4月18日と19日にわたり、Facebookはアメリカ・カリフォルニア州のサンノゼで同社の年次総会「F8」が開催している。今年の同イベントは、例年に比べてVR関連のセッションとワークショップが多く、VR関連の重大発表があることが期待されていた。
そうした期待を裏切ることなく、同イベントにおいて同社が開発を続けていたOculus Rift対応VRソーシャルアプリ「Facebook Spaces」のベータ版がリリースされた。
同アプリの完成度は、控えめに言っても、今までリリースされてきたVRソーシャルアプリのなかで群を抜いている。まずは、説明なしで以下のトレーラー動画を見ることをおすすめしたい。
以下に同アプリに実装されている機能を説明する。
アバター生成機能
VRソーシャルアプリにおいて、もっとも重要なオブジェクトはユーザーの分身となるアバターであることは言うまでもない。
同アプリでは、アバターを設定するにあたり、まずアバターの素材となる画像を選択する。この画像は、通常Facebookにアップされているユーザーの顔写真が使われる。
選択した写真をもとに、同アプリは写真に写っているユーザーの顔の特徴を反映したアバターを自動生成するのだ。この自動生成機能には、おそらくは人工知能を活用した画像認識機能が応用されている。
自動生成されたアバターは言わば「基本アバター」である。ユーザーは、この基本アバターに対して、髪の色や瞳の色、ヘアスタイル等のディテールをカスタマイズしていく。
以上のようなアバター生成機能は、いわゆる「不気味の谷」問題を回避しつつ、アバターにリアリティーや個性を持たせることに成功している。
VR空間シェア機能
アバターが活動するVR空間を演出するのが、VR空間シェア機能だ。
既存のVRソーシャルアプリでは、(リビングやキャンプ場といった)プリセットされたVR空間を設定するのが定石である。
同アプリでも、そうしたVR空間設定機能があるのだろうが、さらに進化した機能も実装されている。360°動画をVR空間全体に設定できるのだ。
この機能を使うと、先に引用したトレーラー動画で見られるように、バーチャルに遊園地で遊んでいるような体験が可能となる。
直観的なUI
UIの基本は、バーチャルに表示される平面的なボードだ。
このボード上に各種機能を実行するボタンやアイコンが並んでいる。
VR空間中に浮かんでいるボードやアイコンは、リアルな空間に表示されるHololensのUIに通じるところがある。
フレンド招待機能
VR空間に友だちを紹介するのは、実に簡単だ。
友だちが一覧表示されたボードから招待したい友だちを選択した後、「招待」ボタンを押せば、友だちのアバターが現れる。たとえその友だちが、地球の裏側にいたとしても。
VRドローイング機能
VR空間内で、まるで「Tilt Brush」を使うようにドローイングする機能も実装されている。
もっとも、この機能はTilt Brushのように本格的な創作活動に使うというよりも、VR空間を演出したり、友だちにちょっとしたサインを送るというようなコミュニケーションをアシストするというソーシャルな目的を意識して実装されたものだろう。
リアル通話機能
同アプリを楽しむには、Oculus Rift&Touchを使うことが前提とされているが、同VRヘッドセットを所有していない友だちとも交流できるようになっている。
その方法はシンプルで、Oculus Riftを使っていない友だちにリアルに電話するのだ。するとビデオ通話がはじまり、リアルな友だちが写った動画がVR空間内に表示される。
なお、Oculus Riftを使っていない友だちにも、ユーザーのアバターが見えるようになっている。感覚としては、バーチャルな友だちとリアルな友だちがビデオ通話しているようなものだ。
セルフィー撮影機能
VR空間内の思い出を記録するのも簡単だ。なんとバーチャル・セルフィースティック(自どり棒)が用意されている。まさに「至せり尽くせり」なVR空間と言えよう。
Facebook Spacesリリースの影響
以上のような多様な機能を実装した同アプリは、現時点で望みうる最高のVRソーシャルアプリと言って間違いない。同アプリと比べると、本メディアが今まで紹介してきた同ジャンルのアプリはかすんで見えてしまう。
VRソーシャルアプリで最高の完成度をほこるアプリが、Facebookという世界最大のソーシャル・プラットフォームからリリースされたことの意義は大きい。というのも、この「Facebook Spaces」こそがVRソーシャルアプリの定番あるいはキラーコンテンツになる可能性があるからだ。
「Facebook Spaces」というアプリのネーミングには、Facebookの思想が込められているように思われる。つまり、今まで同社はPCおよびスマホという「平面的な」ディスプレイにおいて、世界規模のソーシャル・ネットワークを構築してきた。これからは、VRという新規のテクノロジーを用いた「空間(Sapces)」的なコミュニケーション体験こそが、新たなメインストリームとなる、と同社は考えているのではなかろうか。
Facebook Spacesの課題
同アプリの課題は明白である。同アプリを楽しむために必要なOculus Riftがまだ十分に普及していないことだ。
同VRヘッドセットが爆発的に普及しない要因は、コンテンツの不足というよりも、その初期投資に要する高いコストにあることも明白だ。そして、このコストに関する問題は短期間では解決しそうにない。
同アプリを普及させる次善の策として、クロスプラットフォーム対応がある。まずは、アバター生成機能だけを実装したスマホアプリがリリースされるのではなかろうか。そうすれば、スマホユーザーでもVR空間に参加できるようになるだろう。
なお、同アプリはOculus Storeから無料でダウンロードできる。ダウンロードページは、本記事下部に示してある。
課題があるにしても、Facebook SpacesにはVRが切り開く未来がはっきりと感じられる。今回リリースされるのはベータ版なので、今後さらなる展開があるだろう。続報を期待したい。
「Facebook Spaces」を紹介したOculus Blog記事
https://www.oculus.com/blog/facebook-doubles-down-on-social-vr-with-spaces-now-in-beta/
Oculus Storeの「Facebook Spaces」ページ
https://www.oculus.com/experiences/rift/1036793313023466/
Copyright ©2017 VR Inside All Rights Reserved.