株式会社竹中工務店は、同社が開発した室内音場シミュレータ「STRADIA」による”音の再生”と、設計段階で完成後の建物の内部空間を疑似体験できるVR映像を同期させた「可搬型音場シミュレータ」を開発したことを発表しました。
ここで言う音場とは、音が存在する”空間”や”場所”の総称となっています。
新しい「可搬型音場シミュレータ」とは?
「STRADIA」は、1985年から竹中工務店が導入しているシステムで、設計図面より音の伝わり方を解析して得られた響きを、無響室で録音した響きの無い音楽に加えることで、完成後のホールの音響を再現することができます。
このシステムを活用することで、高品位な音響が必要とされる劇場やホールなどを設計する際、”設計段階”から”完成後のホールの響き”を疑似体験することができます。
また、完成後の建物の”内部空間”に関しても、『VR映像』により建物完成後のイメージを体験できるシステムを運用しています。
今回、この二つを組み合わせることで、建物の”設計段階”から臨場感のある音響と内観の仕上がりイメージを同時に疑似体験できる「VR可搬型音場シミュレータ」の開発に成功しています。
システムの概要について
本システムは「高臨場感可聴化システム」と「動的可聴化システム」という2つの機能を持っています。
いずれの機能も、その構成は”ヘッドホン”と”ディスプレイ”と”ノートパソコン”のみという簡易な構成で稼働できることから、持ち運びが可能となり、いつでもどこでも簡単に体験することができる仕様となっています。
「高臨場感可聴化システム」について
▲高臨場感可聴化システムの仕組み
「STRADIA」に『人の頭の動きや向きを常に追跡する機能』を追加したことで、より高い臨場感を得られる仕様へ変化したものが「高臨場感可聴化システム」です。
このシステムを活用することで、”劇場”や”ホール”といった『高品位な音環境』が求められる場所の仕上がりイメージを共有することが可能となります。
「動的可聴化システム」
▲移動にともない音の聞こえ方が変化する
▲音を発すると響きを持って返ってくる
「動的可聴化システム」は特許出願済の新機能で、移動や発音のタイミングに遅れることなく音の解析できるため、VR空間内を自由に動き回り、それぞれの場所での音を聞き比べることができます。
劇場やホールほどの高品位な音響を必要としない”オフィス”や”店舗”を対象としたこの機能では、建物内での『人の動き』や『会話の音の聞こえ方』を同時に体感することを可能にします。
たとえば、
・ロビー~廊下~オープンルーム~食堂
・フロント~客室~ラウンジ
といったような、”建物内の移動”にともなう”シーンの変化”を『音』と『内部空間』で体感できることで、「静か/騒がしい」「響く/響かない」などの音環境の特徴を把握できることから、各所の内装仕上げやレイアウトの検討などに適したシステムとなっています。
今後の展開
竹中工務店では、今後「可搬型音場シミュレータ」を活用することで、劇場やホールをはじめとする様々な建物の設計段階において、カスタマーの持つ印象やイメージを共有し、その要望や意向をより的確に把握することでカスタマーのイメージに沿った音の環境を構築していきたいとしています。
まとめ
竹中工務店が、設計段階で完成後の建物の内部をVR空間に構築するだけでなく、室内の”音の再生”まで実現し、高度な解析による臨場感のある疑似体験が可能な「可搬型音場シミュレータ」を開発しています。
大きなホールやビルは完成後に不具合が発生しても改修も難しいと思われますが、設計段階からシミュレーションを重ねることで、納得のいく建物を完成させることが出来そうですね。
参考:竹中工務店公式サイト
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