GoogleのモバイルVRプラットフォーム、Daydream。対応するスマートフォンはAndroidを搭載する一部のハイスペックモデルに限られるが、比較的安価なDaydream Viewを使って利用できるプラットフォームだ。
Googleは、VRを使って社会を良くするようなプロジェクトを行う団体を支援するプログラム「Daydream Impact」を発表している。
VRを使った社会改善
VRを使ったプロジェクトの最終目的はいくつか考えられるが、そのほとんどは次の3つのどれかに行き着く。
- ・ビジネス
VRデバイスやコンテンツの販売によって直接、あるいはVRを使ったプロモーションを通して集客することで間接的に利益を得る。またはVRによって業務を効率化することでコストを削減するなど、お金を稼ぐ方法としてVRを利用する。 - ・楽しみ
憧れていたSF映画の世界を実現する、自分が遊びたいゲームを作るなど、利益よりも楽しみのためにVRを利用する。 - ・社会改善
環境問題や難民問題についてVRを通して伝えたり、差別を受ける人の生活を体験するコンテンツを作ることで人々の意識を変え、社会をより良くすることを目指す。あるいは、慈善団体への寄付を増やすことを狙う。
VR開発にはコストがかかるため、多くのプロジェクトは何らかの形で収益を上げることを期待して行われるものだ。利益に繋がることを期待する投資家がいるからこそ、技術の開発も進む。
だが、中にはデベロッパー個人の趣味や社会をより良くしたいという願いによって動かされているプロジェクトもある。
Daydream Impact
利益を期待しないプロジェクトの場合、投資家から資金を集めてVR開発に充てることができない。そうなると頼みは寄付となるが、「VRコンテンツを通して問題を知ってほしい」ような団体が潤沢な資金を集めるのは難しいだろう。知られていなければ、VRコンテンツを制作するための資金を集められない。
Googleは、新たに発表したDaydream Impactでそうしたプロジェクトを支援するという。具体的には、VR動画・360度動画の制作を学べるオンラインのトレーニング、VR映像を制作するための機材のレンタル、他の団体での利用例の提供がその内容だ。
動画制作の手法を学べるトレーニングはともかく、機材のレンタルは資金力のない団体にとって魅力的な内容だと思われる。Daydream ViewとPixelスマートフォンだけでなくGoPro Odysseyが貸与されるため、編集用のパソコンさえ用意すればVRデバイスや360度カメラがなくてもVR映像の制作を始められる。
プロジェクトがDaydream Impactに相応しいと認められればこれらの機材が6ヶ月間に渡って利用可能となる。申請の結果更新が認められれば、2期以上のレンタルも可能なようだ。
社会を変えるVRプロジェクト
Daydream Impactの対象となるプロジェクトの申し込みは11月29日から開始されており、12月17日まで申し込み期間が継続する予定だ。その後審査が行われ、Daydream Impactチームに選ばれたプロジェクトには来年1月7日までに連絡があるという。
まだ本格始動していないDaydream Impactプログラムだが、コンゴ地域で紛争に苦しめられる人々を撮影したドキュメンタリー、海岸の環境の変化を映した作品、いじめの防止を訴えるダンスムービーなどがVRを活用するプロジェクトの例として紹介されている。
来年Daydream Impactプログラムが開始すれば、さらにこうした作品の数が増えることになるだろう。
共感させる力が武器になる
VR映像の特徴として指摘されるのは、視聴者を共感させる力が強いことだ。VR映像は第三者視点となる一般的なドキュメンタリー映像などと比べて臨場感があり、苦しんでいる当事者に共感しやすい。
この特徴は視聴者の意識を変えることに有効だと考えられている。VR動画を使ってプロモーションを行うことで視聴後に寄付をしようと考える人が増えただけでなく、実際に寄付をする人が増えたという結果もある。
VR映像が持つこの特徴を上手く活用できれば、新技術を使って世界を少しだけ良い場所にすることができるかもしれない。
新技術の活用事例はビジネスに繋がるものがもてはやされがちだが、こうした非営利のプロジェクトやそれを支援するDaydream Impactのようなプログラムも同様に重要だ。
参照元サイト:Daydream Impact
参照元サイト:Upload VR
Copyright ©2017 VR Inside All Rights Reserved.