海外メディアVentureBeatは、8th Wallが約2億6千万円の資金調達に成功したことを報じた。
ARkit、Tango、そしてARCoreに対応したモバイルAR開発環境の誕生
同メディアによると、アメリカ・カリフォルニア州のパロアルトに拠点をおくスタートアップ8th Wallは、このほど240万ドル(約2億6千万円)の資金調達に成功した。同社は、先月企業されたばかりである。
創業間もない同社が資金調達に成功した理由は、開発中のソフトウェアが革新的だからである。同社が開発しているソフトウェア「8th Wall XR」は、通常のモバイルARアプリ(iOSとAndroidに対応)はもちろんのこと、ARKit、Tangoにも対応したクロスプラットフォームなモバイルAR開発環境なのだ。さらに、現在はGoogleが発表したばかりのモバイルARプラットフォームARCoreにも対応する予定なのだ。
同社のメンバーは7人なのだが、そのなかにはGoogleやFacebookに勤務していた経歴のあるエンジニアもいる。同社の共同設立者Erik Murphy-Chutorian氏は同社と開発中の開発環境に関して、以下のようにコメントしている。
わが社はコンピュータ・ビジョンに関して深い見識のあるメンバーがおり、また今日のほとんどのスマートフォンにARをもたらす方法を持っています。
わが社のAR開発環境を使えば、モバイル端末のARアプリ開発が簡単になるでしょう。
以上のコメントで言及されているコンピュータ・ビジョンとは、画像認識技術のことを指していると考えてよいだろう。画像認識技術は、今後のモバイルARアプリにおける重要技術となると予想されている。というのも、リアルなモノに何らかのAR情報を付加する時、リアルなモノが何であるかアプリが認識することが不可欠だからである。このアプリがモノを認識する技術には、画像認識技術が活用される。
同開発環境は、ARKitやTangoが実装された「ネイティブな」ARアプリに対応したスマホに関しては、(xyz軸座標と傾きを数値化する)6自由度のトラッキング、表面認識、光環境認識をサポートする。ARKitとTangoに非対応なスマホに関しても、3自由度のトラッキングをサポートする。
なお、同開発環境はゲームエンジンUnityをベースにしているので、Unityとほぼ同等の使い勝手で開発を進めることができる(下の画像参照)。Unityに精通したスマホアプリ開発者はすでに相当数存在するので、この特徴は非常に歓迎されるだろう。
以上のような「8th Wall XR」は、本記事下部に示す同社公式サイトからダウンロード可能だ。
成長が期待されるモバイルAR市場
今年6月にAppleがARアプリ開発環境ARKitを発表し、今年8月にはGoogleもARアプリ開発環境ARCoreを発表したことで、今後の「モバイルAR市場」の成長は確実視されている。
600億ドルを上回る市場規模
AppleがARkitを発表した直後、本メディアは調査会社Digi-Capitalが発表したモバイルAR市場に関する成長予測を紹介した。
同社の予測によると、同市場は2021年までに全世界で10億ユーザーを獲得し、600億ドル(約6兆5,000億円)規模に成長すると予想される(上のグラフ参照)。なお、この予測はARCore発表前に公開されたものである。ARCoreによる成長予測も織り込んだ場合、市場規模はさらに大きくなると考えるのが自然である。
同市場は、ゲームだけではなく様々な分野での応用が期待されている。同社予測によると、同市場は非ゲーム業界からの売り上げが80%を占めると予想されている(下の画像参照)。
ARKitの可能性
以上の市場予測でも指摘されているように、Appleが発表したモバイルARアプリ開発環境ARKitは、ゲームはもちろんのこと様々な分野での応用が可能である。
本メディア2017年6月21日付の記事では、スイス大手銀行UBSが発表したAppleのAR戦略に関するレポートのうち、ARKitによって開発されるアプリの内容を抜粋して紹介した。
同レポートでは、ARKitによって開発されるアプリのカテゴリーは少なくとも10種類考えられると指摘している。以下ではその応用カテゴリーを、本メディアで紹介した応用事例とともに表にした。なお、該当する応用事例がないカテゴリーも存在する。
応用カテゴリー | 応用事例 |
---|---|
ゲーム&エンターテインメント | Genereal World |
ジョブ・トレーニングアプリ | |
顔あるいはイメージ認識 | Frances Ng氏公開のデモアプリ |
ヘルスケア | Dance Reality |
緊急事態対応 | |
家屋の修理 | JigSpace社公開のデモアプリ |
家具の購入 | Asher Vollmer氏公開のデモアプリ |
料理と小売 | KabaQ |
不動産 | Solidhaus社が公開したデモアプリ |
軍事 |
ARKitの対抗馬「ARCore」
先月発表されたGoogleが開発したモバイルARアプリ開発環境ARCoreは、ARKitに匹敵する表現力のあるモバイルARアプリを開発できるポテンシャルがあると考えられる。
そうしたポテンシャルは、以下に引用する同社と同社クリエイティブ・ラボから発表されたデモ動画を見ることによって理解できるだろう。
本記事で紹介した「8th Wall XR」を使えば、近い将来ARKitアプリとARCoreアプリを同一の開発環境で開発できるようになるのだ。その市場価値は、今回の資金調達額以上だろう。
8th Wall公式サイト
https://www.8thwall.com/
8th Wallが約2億6千万円の資金調達に成功したことを報じたVentureBeatの記事
https://venturebeat.com/2017/08/28/8th-wall-raises-2-4-million-for-augmented-reality-tools/
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