VRというと、もっぱらゲームやエンターテイメントのプラットフォームとしてのイメージが強い。
しかし実際は医療や建築、教育や軍事に到るまで、さまざまな分野でメリットをもたらす技術だ。
自動車業界においても同様で、ドイツの自動車メーカー、アウディはVR技術を用いた「バーチャル・ショールーム」を開発、顧客向けに提供している。
概要
バーチャル空間のショールーム
アウディが開発した「Audi VR Experience」は、顧客が自分の求める車をバーチャル空間の中でシミュレーションできるものだ。
このシステムはアウディとインテルが共同開発したもので、今年7月末に開催されたコンピューター・グラフィックスのカンファレンスであるSIGGRAPH 2017にてデモが展示された。
顧客自ら車をカスタマイズできる
このVR体験では、顧客はバーチャル空間に表示されている3Dモデルのアウディ車を、細部に到るまで自分の好みにカスタマイズすることができる。
環境音や光のエフェクトなども設定されており、バーチャル空間内の時間帯や光加減も様々に調節することができるため、まるでリアル世界で本物の車をカスタマイズするような感覚で体験できる。
このVR体験は今後アップデートしていく予定で、新たなアウディ車種を追加したり、バーチャル空間の明暗によって見えにくい部分をぼかす、といったエフェクトを追加することで、バーチャル空間でのショールーム体験をよりリアルなものにするとのことだ。
アウディ社の狙いとは
アウディでBusiness Innovationを担当するMagdalena Maczkowskiは、本体験について次のように述べている。
また、同社の顧客体験とDigital Business Strategyを担当するNils Wollny氏によると、将来的には本プログラムを店舗のディーラーに向けて提供する予定だという。
「アウディ・シティ」で展開、販売店舗でも
「Audi VR Experience」は既にいくつかの国で実用化されており、アウディが開催するテクノロジー体験イベント「アウディ・シティ」にて本VR体験をプレイすることができる。
アウディ・シティは現在ヨーロッパを中心として展開しており、ドイツのミュンヘンやベルリン、ロンドン、イスタンブール、パリなどで開催されている。
将来は、アウディの販売店舗でもこのVR体験を展開する予定とのことだ。同社は現在、ドイツ、イギリス、スペイン、そして他のいくつかの地域での同社の店舗に本サービスを展開する予定だ。
自動車業界で活用されるVR
フォルクスワーゲン
自動車業界では、現在複数のメーカーがVRを事業に取り入れており、フォルクスワーゲンは同社の社員教育にVRを活用する取り組みを行なっている。
同社は以前から試験的にHTC Viveを用いてVRトレーニングを社員教育に取り入れていたが、同社は今後、世界規模での事業においてVRを取り入れるという。
VRをトレーニングに用いる取り組みは、自動車業界ではフォルクスワーゲンが初であり、同社が開発したアプリでは、世界中のユーザーが同じバーチャル空間に集まり、共同作業をすることができる。
バーチャル空間で車を組み立てる練習をしたり、会議や生産工程のシミュレーションにおいてもVRは大きく役に立つ。
フォルクスワーゲンはVRだけでなくARの採用についても前向きで、将来は同社のトレーニングシステムにARを活用することを検討中だという。
BMW
BMWは、同社の研究・開発チームがVRを用いて製作したプロトタイプを使用して、新型車種の開発を行なっている。
自動車開発は、従来は高価で専門施設での実証実験を必要としていたが、VRを用いることによって、特に開発の初期段階で、時間と労力を大幅に削減することができるようだ。
VRを用いることで、デザインや構造に変更や修正を迅速に加えることができるので、開発者は以前よりもスピーディで、柔軟性の高い開発を進めることができるようだ。
また、VRを用いて遠距離から会議に参加したり、デザインの報告などを行うことができるので、出張の回数を減らすことができるというメリットもある。
参照元:VRFocus Audi Dealerships Launch VR Experiences
参照元:VRFocus Audi And Intel Discuss The Latest Developments In Automotive VR
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