ディズニーの技術研究部門であるDisney Researchが、ARを活用してアートと触れ合うことができる「AR Museum」を開発した。
「AR Museum」とは
概要
「AR Museum」とは、美術館やギャラリーに展示してある絵画をAR技術によってユーザーが自由にカスタマイズできるシステムだ。
デモ動画ではゴッホの絵画の前にタブレットが設置してあり、カメラを通して作品がスクリーンに映し出されている。
ユーザーは絵画の様々な部分をタップするとその部分の色調を変えることができる。動画では、ゴッホの肖像画や同氏の作品「夜のカフェテラス」などの色調をユーザーが自由に変える様子を確認できる。
詳細
このシステムは開発エンジンのUnityと、AR開発ライブラリのVuforiaを用いて制作したもので、これによって絵画の構造をトラッキングし、タップした部分のみの色調を変化させている。
活用例
ディズニーは現在、「AR Museum」を一般向けに公開してはいないが、このシステムはマーケティングやブランディングなど様々な分野で活用できそうだ。
たとえば、従来の一方通行型の広告から、インタラクトが可能な広告を提供することで、消費者の関心を喚起しやすくなるだろう。
他にも、たとえば白黒の漫画などを手軽にカラー版に変えたり、インタラクトが可能な絵画作品など、様々な可能性を秘めている。
ディズニーはバーチャル技術に対して大きな関心を抱いているが、同社のアトラクションやコンテンツへの導入に関しては、VRよりもARを重視しているようだ。
VR/ARに対するディズニーの姿勢
ARに積極的、VR導入には否定的
今年3月に行われたインタビューにて、ディズニーの今後のテーマパークの事業展開とVRに関して、ディズニーのCEOであるBob Iger氏は以下のように語っている。
この発言から読み取れる意図として、同社はテーマパーク事業に関してはVRよりもリアル世界を舞台とした体験にこだわる姿勢を貫いているようだ。
また、VRヘッドセットを着用すると視界が完全に覆われてしまい、ディズニーランドやカーズ・ランドの作り込まれた世界を視認できなくなってしまう、という理由も挙げられる。
しかし、これはディズニーがVRを重要視していないからではなく、あくまで同社の掲げるビジョンにはVRよりもARのほうが適しているからだ。
複数のVR開発企業を支援
ディズニーは現在、同社の企業支援プログラム「Disneyアクセラレーター」を通して複数のVR開発企業をサポートしている。
Disneyアクセラレーターは2014年に始まり、最新テクノロジー企業が参加してきた支援プログラムで、選ばれた企業はディズニーから資金援助が受けられる。
他にも、参加企業はディズニーのエキスパート、投資家、エンターテイメント業界のリーダーなどからコンテンツやプロダクト開発に関するアドバイスを受けられる。
本プログラムには数多くのVR開発企業が名を連ねており、The VoidやJaunt、OTOYやLittlstarなどが名を連ねており、ディズニーがVR開発の重要性を認識していることが伺われる。
ディズニーが開発するバーチャル技術
また、ディズニーは同社の研究部門であるDisney Researchを通じて様々なバーチャル技術を開発している。
アバターの口の動きを生成する技術
そのうちの一つが、アバターの口の動きを、まるで人間が喋っているかのようにリアルに再現する技術だ。
これはディープラーニング(深層学習)を用いることで、音声に合わせたキャラクターの口の動きを自動的に生成することができる。
話者が約2,500個のセンテンスを喋る映像をコンピューターに学習させて、発音にあわせた口の形を自動的に生成できるこのシステムは、アニメーションの制作やVRにおいてもメリットをもたらすものだ。
たとえばアニメのキャラクターが喋る動作を描く際、コンピューターが自動で生成してくれるので、従来のようにアニメーターが手描きで描き込む必要がなくなる。
また、ソーシャルVRでのコミュニケーションの際、アバターの口の動きをリアルに再現することによって、アバターが実際に喋っているかのような臨場感を生み出すことができる。
マジックベンチ
また、Disney ResearchはMR技術を活用した「マジックベンチ」のコンセプト動画を発表している。
これは映画やアニメに登場するキャラクター達が、まるでそこにいるかのようにコミュニケーションできる技術だ。
ベンチに座ると横にはアニメのキャラクターが座っていて、キャラクターがユーザーにボールを投げたり、ユーザーの手の動きに応じて走り回ったり、話しかけることもできる。
ディズニーはこのシステムをできるだけ簡単に体験できるようにしたいと考えており、体験の際にデバイスを装着したり、セットアップに時間をかけずに済む方法を開発しているという。
将来、この技術を用いたアトラクションがテーマパークに登場すれば、ホログラムのミッキーマウスと記念撮影するようになるのかもしれない。
参照元:VRScout
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