株式会社メルカリで「メルカリ」のCSでデータ分析などを担当する松田さんに、メルカリのCSについてお話をお伺いしました。データを用い、エンジニアとの連携を密にすることで、組織の効率化、ユーザー体験の向上に取り組まれています。
データからのアプローチで、業務と組織を効率化する。
ーー松田さんのメルカリでの役割を教えてください。
カスタマーサポート(以下CS)を担当しています。メルカリCSには、お問い合わせ対応や商品の監視、取引の進行をより円滑にするためにアクティブなサポートをするチームなどいくつも役割があるんですけど、僕はそういったチームを横断して、データの分析や運用構築のサポートで、CS組織全体が上手く回るように調整する役目をしています。
具体的な業務の1つが、メルカリが内製しているCSツールに対するチームメンバーからの機能やUIに関する改善要望を、分析し細かい仕様を決めたり、開発コストを確認してプライオリティをつけたりすることです。その順番に応じて開発チームと協力して実装を進めています。その他にも、開発チームとCSチームのハブになる業務を行なっています。
株式会社メルカリ松田健さん
ーー開発チームとCSチームの間に入るポジションなのですね。
そうです。何か課題があって解決しようとしたときに、エンジニアとCSチームで考えている方法や細かい内容が必ずしもマッチしていなかったりするんですね。CSだとわかることが、エンジニアにはわからないとか、その逆も然り。その間に僕らがいて、CS側の要望に優先順位をつけたり、細かい仕様を詰めたりして、CSとエンジニアの意思疎通を円滑にしています。
ーーCSチーム内に、データ分析に特化したチームがあるのですね。
メルカリは、実際の商品やサービスを売っているわけではなく、お客さま同士でやりとりをするCtoCプラットフォームです。なので、ほとんどのお問い合わせがお客さま同士の間で起こった問題についてのもので、必然的にバリエーションが多くなってしまうんですね。
安心してサービスを使ってもらうことがものすごく大事なので、会社としてCSを重要視していてほとんどがインハウスで運営しています。東京、福岡、仙台の3拠点で300名ほどのスタッフがいます。対応すべきバリエーションもスタッフの人数も多いので、効率よく組織を回すためにデータからのアプローチが増えていますね。
オープンな組織だから、自分から情報を取りに行く文化が根付く。
ーー3拠点300人もメンバーがいらっしゃると、日々の情報の共有や意思統一が大変なのかなと想像してしまいます。そのあたりは、どのようになっているのですか。
重要事項は、全拠点全員に毎朝連絡される仕組みになっています。あとは、メルカリ全体で議事録などの情報をオープンな所に置いてあるんですよ。そのため、必要な人は自分で情報を取りに行くという文化が根付います。なので、最小限のコストでみんなに情報が伝わるようになっていますね。
ーーそれはすごいですね!それは、自分のチーム以外のものも見れるのですか。
見れますよ。プロダクト側が次に何をやろうとしているかもわかるので、積極的に見るようにしています。情報をオープンにするのは、メルカリの文化ですね。
PDCAサイクルを速く回すために、自らSQLを習得。
ーー松田さんは元々、インターネット業界でCSのお仕事をされていたのですか?
いえ。ミュージシャンをしていました。アレンジャーという仕事をしていて、ただそれ一本で食べていくにはなかなか難しくて、企業に勤めながら活動していました。過去には一度楽天で働いていた経験はありますが、前職も特にインターネット業界ではありませんでしたね。
ーーそうなのですね!データを分析したり、SQLなどのスキルというのは、いつ身につけられたのでしょうか。
きっかけは、アプリ内のデータを元にしたアクティブサポートに取り組んだことです。CSはお客さまが困りそうなことや、発生しそうなトラブルを一番よく分かっているんですね。なので、お問い合わせが来てから回答するのではなく、こちらから困ってるであろうお客さまを、取引中のデータから抽出をして、CSから能動的にサポートする取り組みをしたことがあったんです。
ただ、僕らが仮説を立て、その度にエンジニアにお願いをしてデータを抽出してもらって、検証して、という流れだとどうしてもPDCAのサイクルが遅くなってしまうんですよ。なので、直接僕らでデータを抽出したりチューニングできた方がいいと思って、「自分たちでやってみようか」と、始めてみたのが最初ですね。当時は、2,3人がSQLを勉強しながらだったのですが、今は状況把握や施策の効果検証、業務の効率化などでSQLを使うメンバーも多いですね。
4ヶ月分の業務を、1ヶ月で対応できるようにした
ーーどのような業務の効率化されてこられましたか。具体的にお伺いしてみたいです。
そうですね。サービスが大きくなるにつれ取引数もお問い合わせも増えるんですけど、その伸びにCSのスタッフ数の伸びが追いつかなくなった時期があったんです。「お客さまからの問い合わせ」など優先度の高いものから対応していたのですが、一部のデータ処理的な業務で当時1日で対応できる量の約4ヶ月分くらいが溜まってしまう状態になってしまったんです。
その状態をなんとかしなければ考えた時に、CSの人数だけを増やしてで解決するのではなく、業務自体を自動化・効率化しようと思ったんですね。そのために、まず業務のパフォーマンスが特に高いメンバーを中心に徹底的にヒアリングをして、情報をどう判断して、どんな処理をしているかの情報を片っ端から集めました。ヒアリングした情報を元に、データ抽出でケース分けしたり、作業手順を簡略化するなどの対策を行うことで、誰でも一定のスピードで対応ができるような仕組みをつくりました。最終的には、4ヶ月分を約1ヶ月、3〜4人で対応できるようになりました。
業務を効率化したいと考えた時、例えば機械学習やAIからのアプローチで、人がやっていることを機械に置き換えることもあると思うんですけど、それ以外にもCSのメンバーが今やっているオペレーションを分析して、そのメソッドをみんなが同じように出来るようにする。それにより、可能になることは多いと思いますね。
ーーCSは、職人技な部分も多いですよね。
そうなんです。属人化しやすくて、パフォーマンスが高い人にオペレーションについて聞くと「CSツールで、これぐらいの力でスクロールして…」というような絶対その人しかわからない話になりやすいんです。なので僕らは、CSツールもできるだけスクロールではなくショートカットキーで移動できるようにするなどしています。できるだけ共通化する方法を、日々考えていますね。
人が、非効率な仕事をするための機械化。
ーー今後取り組んでみたいことはありますか。
データを使ってやれることはまだまだたくさんあるので、もっと踏み込んでいきたいと思っていますね。最近だと、機械学習やAIの活用に取り組み始めました。そういった技術をうまく活用して、作業を効率化することでCSのスタッフが手間をかけるべきところに手間をかけられる構造にしていきたい。目下の目標はそこです。
ーー機械化・自動化は、効率は上がると思うのですが、一方で効率を重視しすぎるとホスピタリティが失われるんじゃないかという懸念もあると思うんです。そのあたりは、どうやってご判断されているんですか。
機械にやらせた方が良いことは、どんどん機械に任せて効率化すべきだと思います。そして、それで空いたリソースを今度は非効率なことに使うべきだと思っています。むしろ、人がやることは、もっと非効率になるべきだと思ってるんです。すごく非効率なんだけど、リッチで、人が感動できるような対応を行えるようにしていきたくて、そのための自動化なんです。なので、ホスピタリティが失われる自動化は入れないです。
今僕らは、身軽にいろいろな運用を取り入れているんですけど、最終的なお客さまへのアウトプットまでを完全自動化するのはなかなか難しいなと思っています。あくまで、人がきちんと手間をかける前段階としての効率化にアプローチすることが現時点では多いですね。
個の多様性が、強い組織をつくれる。
ーーメルカリのCSチームでは、どんな方が活躍されていますか。
やっぱりプロダクトが好きな人で、会社のミッションやバリューに共感できるというのは大前提だと思います。その上で、組織としては個性の多様性がある方がいいと思います。先日、シェアサイクルのサービスを発表しましたが、今後はサービスも多岐に渡っていくと思います。組織が球体のイメージで、全方位でCSのチームが強くなることが必要なんですね。なので、サービスの目線を広げるためには、多様なバックボーンをもつ方がいたほうがいいなと思いますね。
今僕がみているデータ分析を主に扱うチームに限ると、SQLやリテラシーの部分は勉強すれば身につくものなのでそこは重要視していないです。論理的に思考する力や、要件を整理整頓する素養が大事だと思います。
お客さまに愛されるサービスづくりを最前線でできるのが、CSのやりがい。
ーーCSでのやりがいはどんなところにありますでしょうか。
メルカリではプロダクトとCSの距離がものすごく近いんですね。CS側からの改善要望がサービスに活かされていますし、何か問題が起きた時に一丸となってAll for Oneで当たれる体制となっていて、そこはすごくいいなと思います。
CSとしてのやりがいは、メルカリは国内だけでも6千万ダウンロードのサービスなので、僕らが日々やっていることが大勢のの方々に影響を与えるということじゃないですか。そのことにやりがいを感じていますね。
あとは、メルカリのサービスとしての根幹はお客さま同士のやりとりです。、そのいちばん大切なお客さまの一番近いところにいてサポートができる。そこにもやりがいを感じています。
インタビュアー:新嘉喜りん(キラメックス株式会社)