リーダーに求められる最大の使命の1つが「育成」です。リーダーはメンバーに挑戦する機会を与え、キャリアアップを支援することに注力しなければなりません。育成に取り組み続けることでチーム全体のパフォーマンスアップを見込めるようになります。ここではリーダーが目指す人の育て方について考えます。【週刊SUZUKI #108】
チームをけん引するリーダーの役割は、チームをゴールに導くだけではありません。ゴールに導くと同時に、メンバーの育成にも取り組まなければなりません。業務に不慣れなメンバーを置き去りにし、主要メンバーだけでゴールにたどり着いても意味はありません。チームに関わるすべてのメンバーがゴール到達に貢献できるよう、メンバー一人ひとりの可能性を引き上げるのがリーダーの役目です。
最近は多くの企業が人材育成に取り組むようになったものの、明確な成果を上げられずにいる企業が少なくありません。こうしたケースの大半は、リスキリングなどによるスキル習得に主眼を置きがちです。新たなスキルの習得は決して悪いことではないものの、習得したスキルが現場で還元されずにいる企業が目立ちます。将来役立つかどうかではなく、実際の課題解決に直結するスキルやノウハウを培わない限り、リスキリングは一過性の施策に終わってしまいます。
メンバーを育成するなら、スキルより自主性を育むことに目を向けるべきです。メンバーが「成長したい」「活躍したい」という気持ちをわき上げるために必要です。こうした気持ちが強くなるほど、人は成長します。リーダーが言う前に自ら行動したり、課題に気付いて解決策を自ら模索したりといった自主性が、飛躍的な成長を促すのです。
もっとも、人材育成は口で言うほど簡単ではありません。若手社員が一人前になるには長い年月が必要だし、多くの経験も積み重ねなければなりません。もちろんたくさんの失敗体験も必要です。どれだけ優秀な若手社員でも、これらを経験せずに成長することはありません。リーダーは場当たり的な育成プランを描くのではなく、長い期間をかけて失敗体験などを蓄積する育成方法を模索すべきです。育成による短期的な効果は見込めないものの、遠回りしてでも次代のリーダーになり得る人材を育てることが大切です。こうした地道な取り組みが、チームや組織、ひいては自社の競争力となるのです。
【リーダーの心得 その16】

筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。他に、日本オムニチャネル協会 会長、SBIホールディングス社外役員、東京都市大学特任教授を兼任。