デジタルテクノロジーの急速な進展に伴い、企業のリスキリング(再教育)はますます重要な課題となっています。株式会社グロービスが実施した最新の調査によれば、日本の企業の約7割がデジタル人材育成プログラムを導入しているものの、実際にその研修に参加した社員はわずか17%にとどまっていることが明らかになりました。この状況は、企業がデジタルリスキリングに注力しているにもかかわらず、参加社員がその恩恵を受けられないという矛盾を生じさせています。
調査では、企業側がデジタル人材育成に取り組んでいると回答した割合は68%に達しており、特に従業員数が多い企業ほどポジティブな傾向が見られました。一方、同じ調査に参加した社員の多くは、自社でデジタル人材育成に関する研修が存在することを認識していないか、あるいは参加しない理由を抱えています。この意識のギャップが、企業と社員の間に亀裂を生じさせています。
さらに、調査対象者であるベテラン社員(40代および50代)の多くは、学習の必要性を感じているものの、学習を実際に行っている割合は非常に低く、73%が学習習慣を持たないという結果も出ています。彼らは、論理的思考力やビジネスツールの活用スキルなど、学ぶべき内容が明確であるにもかかわらず、意欲や学習頻度に欠けています。
企業にとって、このような状況を解決することは急務です。自律的に学ぶ社員を育むためには、学びの必要性や研修内容を明確にし、持続的に学ぶ仕掛けを作ることが重要だと考えられます。しかし、現在学ばない理由、そして何が学習を促す要因になるかは社員一人ひとりによって異なります。このため、企業は一律の施策ではなく、各社員の状況やニーズに応じたアプローチを取るべきです。
リスキリングの推進は、企業と社員双方にとってのメリットと成り得ますが、その実現には、意識のギャップを埋めるための施策が必要です。具体的なコミュニケーションやキャリアの明示、上司との定期的な面談など、あらゆる面において企業側からのアクションが求められています。このように、デジタル人材育成の現状と課題を理解することが、企業にとっては今後の成長戦略を描くための鍵となるでしょう。
【関連リンク】
株式会社グロービス
https://www.globis.co.jp/
執筆:DXマガジン編集部