80㎡以上の中古マンション価格が過去最高水準に達し、富裕層マーケットの影響が顕在化しています。従来の常識が覆されつつある中、価格動向を詳しく分析します。不動産市場における物件価格の構成要素は多岐にわたりますが、その中でも「面積帯」は非常に重要な指標の一つです。特に中古マンション市場では、単なる坪単価ではなく、物件の総額(グロス価格)との関係が重要視されます。大規模な物件は、当然その総額も高くなるため、購入者にとって高い資金的ハードルになります。その結果、比較的手ごろな価格帯である中小面積帯に需要が集中しやすく、坪単価はむしろ小規模な物件において高くなることが見受けられます。この現象は「面積が狭いほど一坪あたりの価格が高くなる」と説明されることが多いです。
最近の東京都23区における中古マンション市場では、この常識が揺らいでいます。特に2021年を境に、80㎡以上の大規模物件の坪単価が急上昇しています。この動きは従来の傾向とは異なり、市場全体としての構造的な変化を示唆しています。

データを2020年から2025年初めまで追跡した結果、特に2021年中盤以降に見られる変化が顕著でした。それまで大きな坪単価の差がなかった3つの面積帯において、80㎡以上の大規模マンションが急上昇を見せ、他の面積を大きく引き離す形になりました。この急激な価格変動は、新型コロナウイルス感染拡大が影響を与えた時期と一致しています。在宅勤務の普及によって、広い住空間や快適な居住環境を求めるニーズが高まり、都心部でも広い間取りのマンションへの需要が急激に増加したのです。こうした変化によって、80㎡以上の物件が新たな評価基準のもとで注目されるようになったのです。
特に都心の5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)では、価格上昇が特に顕著です。元々希少性が高く、大型物件の価格は一般的に高水準でしたが、2021年以降はその上昇が急速に進行しています。今後、2025年には平均坪単価が1,000万円に達する可能性があると予測されています。これには、国内外の富裕層による投資意欲や、円安による海外マネーの流入、さらには国内金利の長期低下が影響しています。
都心5区以外の有力な23区では、80㎡以上の物件も値上がりしていますが、その上昇幅は都心ほどのものではありません。このことから、都心と郊外のマンション価格の「二極化」が進行していることがわかります。この価格の二極化は、物件の価値だけでなく、住む層やライフスタイルの違い、さらには不動産を資産形成の手段として捉える意識の差によっても生じていると考えられます。
今後もこのような二極化傾向は続く可能性が高いと見られています。特に東京都心部ではインフラの高度化や再開発が進行しており、資産価値の高い物件への注目度が増すでしょう。また、海外投資家による需要も継続し、この動きが価格を支える要因となるでしょう。しかし、金利の動向や税制改正などが需給バランスに影響を与える可能性もあるため、市場の動きには引き続き注視が必要です。
東京都23区の中古マンション市場では、特に80㎡以上の大規模物件の価格が急上昇しています。この傾向は、生活様式の変化や富裕層の動向など、さまざまな要因が絡み合っています。今後の市場を見据える上で、面積帯別の価格変動を的確に捉えることは非常に重要な視点となるでしょう。住宅の「価値」は、広さだけでなく、立地、需要、希少性、さらにデジタル技術の進化によっても大く左右されることも意識されるべきです。詳しくは「マンションリサーチ株式会社」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部小松