犬の五感と人の五感の違い
犬も人間も、周囲の情報を認知するための感覚器官は同じです。目による視覚、耳による聴覚、鼻による嗅覚、舌による味覚、そして皮膚による触覚の「五感」です。しかしそれぞれの性能と使い方は、犬と人間とではかなり違いがあるようです。
人の場合、五感の中でも視覚から得られる情報量が最も多く、全体の約8割を占めると言われています。しかし、犬の場合は約4割が嗅覚、約3割が聴覚で、視覚で得られる情報量は約1割だけなのです。
科学的にも、脳がニオイを認識する部位である嗅上皮の面積が、犬は人間の40〜50倍もあることや、犬は人間がニオイとして認識できるギリギリの濃さを100万分の1まで薄めても嗅ぎ取れるということが分かっています。
つまり、愛犬が人間のニオイを嗅ぎたがる理由は「情報収集」であり、私たちには認識できないような微かなニオイからも多くの情報を得ているのです。それでは、具体的に犬が人間の情報を得るためによく嗅ぎたがる部位とその理由を見ていきましょう。
犬が嗅ぎたがる人間の部位とその理由
1.手
犬は、他の犬と出会った場合にまず鼻先を近づけてお互いのニオイを確認しあって挨拶を交わします。この犬同士の鼻先での挨拶の代わりが、人間の手だと考えられています。
出会った犬とコミュニケーションを取りたい時は、緩く握った手の甲を下の方から差し出すと良いとされています。もし犬が興味を持ってくれた場合、犬は手の甲のニオイを嗅ぐことでしょう。これが、犬同士の鼻先の挨拶に相当します。
犬は、過去に嗅いだことのあるニオイかどうかで、知っている人か初対面の人かを識別します。また犬を怖がっているなど、緊張している人は汗をかきます。犬は汗のニオイから、その人の感情を察知できるという研究報告があることからも、手の汗のニオイから相手の緊張状態を察知し、自分への敵意の有無を判断するとも考えられています。
2.足
犬は、人間の足のニオイもよく嗅ぎたがります。足の裏には汗腺や皮脂腺がたくさん集まっており、1日に250〜500ml程の汗をかくと言われています。靴下や靴を1日中履いていると、足は汗で蒸れて細菌が増殖しやすくなり、かつ細菌が汗の成分を分解して吉草酸などの悪臭の元を作るため、自分でもわかるほどきついニオイを発することがあります。
ただし、犬は「くさっ!」と思って嗅いでいる訳ではないようです。汗からストレスの有無や、細菌などの感染症の有無、外で足に付いたニオイを元に「どこから来たのか」などを探っていると考えられています。
3.股間
犬同士の挨拶は鼻先から始まりますが、そこでお互いに興味を持つと、次はお尻のニオイを嗅ぎ合います。犬のお尻には強いニオイの分泌液を出す肛門腺があり、そのニオイから性別、年齢、気分、体調などその犬の個人情報を認識できると考えられています。
犬はよく人間の股間のニオイも嗅ぎたがります。しかし、これが犬同士のお尻のニオイを嗅ぐ挨拶と完全に同じ意味を持つかは不明です。それでも、股間は生殖器官に近い部位であることから、ホルモンのニオイなどから手よりも深い個人情報を認識できているのではないかと考えられています。
4.口元
子犬は、母犬に甘えたり餌をねだったりする際に、母犬の口元を舐める習性があります。その習性を人間の飼い主にも当てはめて、甘える際に口元を舐めることが多いです。その際に口元のニオイを嗅ぎたがる場合は、甘える気持ちに加えて、残っている食べ物のニオイが気になっている可能性も考えられます。
5.いつもと異なるニオイがしている部位
体の特定の部位に限らず、飼い主さんからいつもとは異なるニオイがしている場合は、その部位のニオイを嗅ぎたがるでしょう。それは、飼い主さんが愛犬の様子から「いつもと違う」と感じ、体調不良を疑ってあれこれとチェックをするのと同じことだと考えられます。
風邪などで微熱がある、妊娠初期でホルモンが変化した、シャンプーの種類を変えたなど、飼い主さんのちょっとした変化に反応しているのかもしれません。
犬がニオイを嗅ぐのは情報収集のため
犬が自分や他の人のニオイをクンクンとしつこく嗅いでいる場合、「臭いのかな」と気になるかもしれません。しかし、人間よりもよく嗅ぎ取れる鼻を持っている犬は、嫌いなニオイを感じた場合はあまり近寄っては来ないでしょう。
クンクンと真剣にニオイを嗅いでいるのは、その人に興味を持ち、情報を知りたいからです。飼い主さんご自身のニオイを嗅いでいる場合は、気の済むまで嗅がせてあげると良いでしょう。
また、見知らぬ人から「ワンちゃんを撫でても良いですか」などと声をかけられた場合は、まず手のニオイを嗅がせて挨拶するところから始めるように教えてあげましょう。
まとめ
私たち人間が初対面の人に会うと、視覚から得られる情報で多くのことを知ろうとします。顔の表情や仕草、持ち物や身に付けている服装や身だしなみなどから、その人を信用しても良いか否かを判断します。それと同じようなことを、犬たちはニオイから判断します。
犬との挨拶の仕方を知っている人であれば手のニオイから情報を得、そうでない場合は犬の体高と相手の身長の関係から、股間のニオイから情報を得ようとするかもしれません。そんな時も、犬の習性を理解していれば、相手の方に十分な配慮ができる飼い主さんになれるでしょう。
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