世界屈指の規模の、犬の加齢研究プロジェクト
アメリカのワシントン大学医学部とテキサスA&M大学獣医学部が中心となって立ち上げた、『ドッグエイジングプロジェクト』という大規模な犬の加齢研究のプロジェクトがあります。
わんちゃんホンポでも、過去にこのプロジェクトによる研究結果を数多くご紹介して来ました。
こちらは2018年に始動したドッグエイジングプロジェクトについて、プロジェクトの内容を紹介した記事です。
https://wanchan.jp/column/detail/18108
そしてこちらは、直近の「犬の老化を新しい概念 ”フレイル”で評価するための研究」を紹介した記事です。
https://wanchan.jp/column/detail/41511
このプロジェクトには約5万頭にものぼる家庭犬が登録されており、直接生体サンプルを提供したり、飼い主がアンケート調査に回答したりといった形で、犬の身体面と精神面両方について継続的な観察と調査が行われています。
犬の加齢研究としては世界最大の規模であり、アメリカ国外でも多くの科学者から注目されて来ました。
犬は人間とほぼ同じ環境で生活し、さらに老化のサイクルが人間よりも短いため、犬の加齢研究は人間の加齢研究にも応用できることから、獣医学界以外からも研究成果が期待されていました。
しかし、そのドッグエイジングプロジェクトが存続の危機に直面しているとして、ニューヨークタイムスなど多くのメディアが報じています。
犬の加齢研究のための助成金が打ち切られる可能性
このプロジェクトは年間予算(現在約700万ドル=約10億円)の90%を、アメリカ国立衛生研究所から助成金として提供されて来ました。
しかし昨年末の助成金更新の申請において、ドッグエイジングプロジェクトに対する評価は予想外に低いものでした。プロジェクトの運営者たちは助成金の継続について悲観的であると伝えられています。
プロジェクトに携わる運営者は、国立衛生研究所の所長宛に助成金を継続するよう依頼するための署名活動を開始しました。
また一方で、他の資金源から研究資金を集めるためにも奔走しています。研究のためのチャリティ財団を設立し、寄付を募ることがそのひとつとして計画されているそうです。
なぜ犬の加齢研究が大切なのか
各メディアでは、このプロジェクトの存続を望む他の研究者の声が紹介されています。研究者の中には、プロジェクトには参加していないものの、愛犬をドッグエイジングプロジェクトの参加者として登録している人もいます。
加齢が生き物の体に及ぼす影響に関する研究では、長年にわたってラットやマウスなどげっ歯類が多く使われて来ました。
しかし、犬は代謝などがより人間に近く人間と同じ環境で生活し、心臓病や認知機能障害など加齢に関連した病気を発症するなど、人間との共通点が多くあります。犬の老化を知ることは、人間の老化をより深く理解することにつながっています。
ドッグエイジングプロジェクトでは、これまで1,000頭の犬のゲノムを解析し、14,000の組織サンプルを収集してきました。これらのデータや研究成果をまだまだ役立てるためにも、ぜひプロジェクトが継続してほしいものです。
まとめ
わんちゃんホンポでもその研究成果をたくさん紹介してきたドッグエイジングプロジェクトが、助成金打ち切りの可能性から存続の危機に直面しているという話題をご紹介しました。
この研究プロジェクトは単に犬のためだけでなく、人間がより健康的に加齢を迎えるための研究でもありました。多くのメディアが取り上げたことで、このプロジェクトの危機がたくさんの人の目にふれて事態が良い方向に進んで行ってほしいと心から願います。
《参考URL》
https://www.science.org/content/article/massive-study-dog-aging-likely-lose-funding
https://www.nytimes.com/2024/01/11/health/dogs-longevity-aging.html
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