Instagramのストーリーを見ていると突然、読売新聞の広告として、「警察は小島よしおを逮捕したが」といった文面が出てきた。いったい何があったのかと思い、詳しくはこちらをクリックしてみた。
すると読売新聞のページに移動。文面には小島よしおを解放するためにファンが結集したと書かれている。まさか、あの小島よしおが逮捕だなんて……。もちろんそんなワケはない。
※注意:本稿に掲載している「小島よしお氏逮捕の記事画像」は全てフェイクニュースをスクリーンショットしたものです。読売新聞も名前を使われているだけで、この記事とは無関係。なお、人物など一部には編集部でモザイク処理を施しています。
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これは昨年から主にMeta社が運営するFacebookやInstagramで流行している、著名人の写真や名前を無断で使用した詐欺広告の一種だ。広告画面こそ本物の読売新聞のURLが記されているが、誘導されたページURLは読売新聞のものではなかった。
昨年から年始あたりにかけては、実業家の前澤友作氏や堀江貴文氏、投資家の桐谷広人氏などの「実業家」や「投資家」らが被害にあっていたが、前澤氏を筆頭に国やMeta社に対して強く働きかけたこともあり、その数は徐々に減少。
しかししばらくすると、今度は「芸能人」の写真や名前を使用した同じ手口の詐欺広告が登場するようになってきた。おたくま経済新聞では8月にも、北野武氏の名前や写真を使用したフェイク記事を紹介※している。あらためて当時の記事を確認してみると、今回みつけた小島よしお氏を使った広告・偽記事とは、内容・流れともにほぼ一致していた。
(※8月1日公開記事:偽gooニュース?ホリエモンと北野武が「仮想通貨」を勧める記事のその先を見てきた)
記事の内容を読み進めてみると、『削除された小島よしおの「ホンマでっかTV」ショーの記録』と書いてあり、明石家さんま氏と小島よしお氏の対談が掲載されている。北野武氏のときの対談相手は堀江貴文氏だったので、どうやら著名人同士の対談というのがフォーマットになっているらしい。
細かく記事内容を読んでみると、明石家さんま氏が小島よしお氏に対して、稼ぎが悪いのにいい暮らしをしているので、誰かパトロンがいるのじゃないかと疑っている内容となっている。これはいくらなんでも小島よしお氏に失礼なんじゃないか。
さらに読み進めると、小島よしお氏がテレビの収入以外にどうやって金を稼いでいるのか書いてある。文面は日本語翻訳を使ったのかどこかおかしい。文字化けもしてしまっている。
どうやら、tokenizer●●●というプラットフォームから投資をすることで、儲けているとの内容だ。最初の初期費用は36600円。怪しい匂いがぷんぷんする。
(※●の箇所は編集部で伏せた箇所。以下に出てくる●も同じく伏せた箇所です)
下まで進むと、ニュースのコメント欄を模したかのような、一般人からのコメントが書いてある。なんとなくポジティブな意見が多数見受けられるが、こちらの文章もどこか違和感のある日本語だ。
その後、登録ページまで飛ばされた。ここは騙されたと思って、試しに登録して見ることにしよう。
名前と電話番号を入力すると、住所やらクレジットカードの登録が促される。残り座席数なども表示することによって、焦らせる作戦だろう。
ここでカード情報などを入力すると36600円の支払いが発生するようなので、キャンセルするとしばらくして電話がかかってきた。
出ないで放っておくと、留守番電話に1分ほどメッセージが残された。再生して見るともぞもぞと電話をポケットに入れたままかのような、外部の会話がうっすら入っている。何を喋っているのか聞き取れない。
また少しして着信が入った。今度は出てみることに。
無言で会話を聞いてみると、こちらが電話に出たことに気づいていない。甲高い女性の声が電話口に届く。
「この職場ももっと日本人が増えれば見栄え的にいいですよね〜」
「まぁ、そうですね」
男女で会話をしているが、雑談か? どうやら、僕が電話に出たことに気づいてないらしい。
「もしもし!」
「はい!失礼しました。先ほど投資サービスに登録された山崎さまのケータイであってますでしょうか?」
「そうですが」
「投資の件でご連絡したのですがお時間大丈夫でしょうか?」
「はい」
「こちら、最初のデポジットの36600円がまだお支払いいただけてないようで、お支払いいただけたら投資へと進ませていただきます」
「いや、ちょっと小島よしおさんの記事を見て登録してみようと思ったのですが、小島よしおさんがこの投資をしているってことですか? あれフェイク記事だと思うんですが、あなた達は詐欺グループですか?」
いきなりぶっ込んだ質問をしてみた。
「いえ、我々はAIによる投資予想のシステムをご紹介する会社です。小島よしおさんも投資をやられてないこともないと思いますよ?」
この言いきらない感じが詐欺グループっぽい。
「この案件、詐欺なような気がしてまして警察に連絡しようと思ってるのですが……」
「いえ、私共は決して詐欺会社ではありません。Trade-●●●という会社です」
「●●●-Tradeならわかりますが、Trade-●●●なんてものは存在しませんよ。調べてみましたが怪しいGoogleアプリが出てきただけです。これはやっぱり詐欺なのではないでしょうか?」
そこから、詐欺だ詐欺じゃないなど、押し問答が始まった。あまりにしつこいのも良くないと思い、
「今回はお断りさせていただきます。失礼します。」
と電話を切ったが翌日もまた似たような番号からかかってきた。下4桁が若干違う。
「もしもし」
「投資の件でご連絡いたしました。お時間大丈夫でしょうか?」
また、昨日と似たような女性の声だ。同一人物だろうか。
「昨日別の業者からお電話があり、お断りさせてもらったのですが……なので結構です」
「いや、私どもは別の会社ですので、お話だけでもよろしいでしょうか? 我々はAIで投資予想するサービスを紹介しておりまして、会社も昨日の所とは違うと思いますよ。私たちはCapital T●●●●という会社です」
さっと検索してみると、厳格な基準を持つ金融当局によって規制されてないため信頼できるブローカーではありませんと出てきた。
「なんだか信頼できるブローカーじゃないと出てきましたが……」
「いえ、決して信頼できないブローカーではありません。色々言う方はいらっしゃるかとは思われますが」
「それで、36600円のデポジットがかかると言うやつですよね?」
「左様でございます」
昨日と手口が同じじゃないか。
「昨日も別の会社のお誘いをお断りしたので、結構です。あの小島よしおの記事で個人情報を集めてるってことですよね?」
「あのプラットフォームに登録されるとさまざまな投資会社に山崎さまの連絡先が共有されるようになってまして、これからもお電話が続くかもしれませんが、よろしくお願いします」
何がよろしくなのだろうか。
「そうですか、非常に迷惑ですね。とりあえず投資はする予定ないので失礼します」
以前の記事ではカタコトの外国人が出たようだが、外国人だとなかなか引っかかる日本人がいないということで、日本人の女性を雇ったのが話の筋書きだろう。
詐欺もなかなか多様化してきているようで、騙されないようにくれぐれもご注意願いたい。
(山崎尚哉)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 山崎尚哉 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024090505.html