「ワクワクする未来のワークとライフをヨコクする。」というパーパスを掲げ、仕事や学習、生活などの分野で新規事業の開発を推進しているコクヨ株式会社。
11月28日、この新規事業の現状と今後をコクヨ社員に向けて発表する「イノベーションセンターDAY」が開催され、今回メディアにも特別公開されました。
「イノベーションセンターDAY」が開催されたのは、コクヨ東京品川オフィス「THE CAMPUS」。ロボットやバーチャルオフィスなどを使用したハイブリッドワークの実証実験などもおこなわれている、まさに新規事業開発の拠点です。
イベントは一部と二部に分かれており、一部でおこなわれたメディア説明会では「働く」、「学ぶ」、「暮らす」の領域における各新規事業の担当者から、実際の取り組みや今後の展望について説明がありました。
最初は、新規事業を担当するイノベーションセンター センター長の三浦さんが、新規事業のビジョンについて話しました。コクヨの新規事業のユニークな点は、未来のつくりたい社会を描いて、そこからバックキャストでプロダクト開発をしているアプローチとのこと。
その後、具体的なプロダクトやサービスが紹介されました。まずは一緒にいても離れていても家族の存在を感じることができ、ポジティブなコミュニケーションを生み出すことを目的としたIoTブランド「Hello!Family.」。小学生のお子さんがいる家族を対象とした見守りアイテムを開発しています。
スマホにメッセージ交換ができる「はろもに」や、押すだけでスマホにメッセージが送れる「はろぽち」、子どもの今を見守る家族の掲示板アプリ「ハロファミアプリ」などが発売中。今後は親子IoTのバリエーションを拡充し、「Hello!Family.」のプラットフォームの構築や他サービスへの連携などを目指していくとのこと。
続いて「プロトタイプする暮らし」をコンセプトとして2023年9月に誕生した生活実験型集合住宅「THE CAMPUS FLATS」。これはコクヨの社員寮をリノベーションしてオープンしました。
これは「趣味以上プロ未満」の何かを提供・発信したい人(入居者)と豊かな人生の探求のため何か学びたい人(地域住民)との繋がりを作ることを目的とした集合住宅。
施設の構成は2階~5階が賃貸住宅。1階にフードスタンド、地下1階にスタジオがあります。フードスタンドとスタジオはパブリックなエリアとして入居者以外の人も使用可能なエリアとなっています。スタジオではヨガやセミナーができたり、一日のみでも飲食店を開店できたりするスペースも。
「学習」の支援としては11月1日、中目黒にオープンしたコクヨがつくる中高生専用の学習空間「自習室STUDY WITH Campus」の紹介。これは学校や自宅に加えて「第三の学びの場」として中高生一人ひとりの学習スタイルにあわせて学びをサポートする施設です。
チューターによる学習サポートや品質にこだわったコクヨ製の家具を設置したこだわりの学習空間。さらにブース形式の席もそなえた「集中エリア」と同世代の学びあいを促す「コミュニケーションエリア」などがあることが特徴となっています。
最後はChatGPTを使用した「Meeting Facilitator」。ミーティングの進行を任すことができ、話した内容を要約してくれます。さらに発言機会を均等にしたり、タイムキーピングをしたりして、議題の結論を導きやすくします。
■ 新事業の突破口は「現場で感じること」
休憩の後、二部では、コクヨ社員向けに行われた「イノベーションセンターDAY」を特別に見学。イノベーションセンターセンター長の三浦さんと、イノベーションセンターで活動する新規プロジェクトのメンターで新規事業家の守屋実さんとの対談が行われました。
守屋さんは現在54歳。今までの社内起業の数は17、独立起業の数は22、週末起業の数は15と、年齢の数だけ起業を経験しています。この経験から「成功の必殺技などはなく、一生懸命頑張っているとラッキーなことがいくつか起こり、それを逃さずに取りに行くと時々うまくいく」と語ります。
新規事業は「十中八九」上手くいかないと言われています。ただし、上手く8回か9回の失敗を乗り越えて学んでいくと、失敗の数も減っていくのだといいます。
さらに守屋さんがコクヨの社員に伝えたいこととしてあげたのが、「社内起業は必ず新規事業を生み出せる」ということ。豊富な資金と優秀な人材がいることにより、8回や9回の失敗も乗り越えられます。そして1回か2回の成功をどんどん残していくことができるので、圧倒的に優位だといいます。
三浦さんが「突破口」についての考え方を守屋さんに質問すると、「ありがちな失敗は、突破口を理屈で説明すること」と回答。上が説明を求めて下がパワーポイントなどでまとめようとすると、まるで学者になって論文を書いてしまい、現場感が置き去りなってしまうのだとか。突破口は「現場で感じること」だと説明。
会社は失敗をしたくないので、元々「十中八九」失敗すると考えている新規事業も、1分の1で成功させようとする。新規事業を成功させている企業の例として守屋さんがあげたのは、自らも参画しているJR東日本。
ここ5年の間に総勢10人で1077個の新規事業の案件を揉んで108個を実証実験し、51個を事業化。もちろん51個すべて成功しているわけではないが、その中には資金調達ができていて時価総額が100億円近くにまでなり、上場を目指している事業もあるそうです。この環境をつくることができるかが大切だといいます。
■ 大企業の強みをいかす
三浦さんはスタートアップの人に「コクヨさんのようにホワイトに働いていたら勝てないよ」と言われて、悔しい思いをしたことがあったと明かします。そこで守屋さんに大企業なりに事業を推進する上でのアドバイスをもとめると、「何から何まで有利」と即答。
これだけ優秀な人材が揃っていて必要なものもすぐに調達できる。さらに徹夜で働けないことも逆に言えば「落ち着いて働けるとも言える」と力説。スタートアップだと振り返ることもできなくてひたすら走るしかできないが、大企業は失敗したことや成功したことなどのノウハウをため込むこともできると語ります。
最後に守屋さんは会場に集まった社員に、コクヨは戦うフィールドを用意してくれていて、社会的に認知されている環境も手に入れているので「戦いをやめずに意志を持って突き進めば必ずいける」と力強く訴えます。
失敗してもめげずに、どうやって頑張れるかが重要。「みんなで頑張り、めげそうな人がいたら励まそう!」、「誰が勝っても良くて、誰がリーダーでも良い」とアドバイス。コクヨとして、大企業が新事業を生むというのはこういうことなんだと示せていけたら「むちゃくちゃ楽しいよね」と語りかけていました。
取材協力:コクヨ株式会社
(取材・撮影:佐藤圭亮)
コクヨの「イノベーションセンターDAY」を見学 新規事業のプロが社内起業のアドバイス | Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 佐藤圭亮