豚だけでなく、猫にも「受容体」が
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長い間、豚が「ウイルスを変異させて人間に感染させる存在」として、科学者たちは警戒を続けてきました。
たとえば2008年から2009年にかけて流行した「豚インフルエンザ」は、米国のカンザス州で飼われていた豚の体内で「スペイン風邪」のウイルスが変異し、人間へ橋渡ししてしまったものと推測されています。その結果、世界中で5000万から1億もの人々が命を失いました。
しかし最近では、豚よりも飼い猫が「H5N1型」の鳥インフルエンザを媒介するのではないかと恐れられています。
2024年12月半ばに学術誌「Emerging Microbes & Infections」に掲載された米国ピッツバーグ大学の研究によると、猫は豚と同様に「受容体」を持っており、それが「鳥インフルエンザウイルスと哺乳類のインフルエンザウイルスを合体させて変異させる可能性がある」ことがわかっています。
その証拠に、最近「H5N1型」の鳥インフルエンザで死亡した猫から、将来ウイルスを変化させる可能性のある「独特の突然変異」が見つかっているのです。
「猫がH5N1型ウイルスに繰り返しさらされていると、ウイルス自体が変異し、それが人間に感染してパンデミックを引き起こす恐れがあります」と研究著者は危惧しています。
鳥から哺乳類へと感染が拡大
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ここ数年、鳥インフルエンザによって世界中で何100万羽もの鳥が死んでいます。そのうえキツネ、スカンク、アシカ、ミンク、イルカ、タヌキ、アザラシ、ネズミなど21種以上の哺乳類にも感染が確認されています。
最近になって米国16州で合計846頭以上の牛が感染し、牛乳の供給がストップする事態になりました。各農場周辺の53匹の猫も感染したことが分かっていて、「ウイルス感染が人間に迫ってきている」と専門家らは警告しています。
テキサス州では、病気の牛の生乳を飲んだ24匹の猫が鳥インフルエンザに感染しました。2024年8月にはコロラド州で室内飼いの猫3匹が感染しています。近くの農場で病気のネズミを捕まえた際にウイルスに感染したものと推察されています。
死亡した猫10匹の解剖を行ったところ、脳や肺、胃から採取した検体から「受容体」が発見されました。猫は豚と同様に、哺乳類と鳥類の両方のインフルエンザに感染しやすいことがわかったのです。
「猫が感染すると呼吸や糞などでウイルスを排出するので、人間に感染させる可能性も拡大します。しかも猫の体内で伝染力の強いウイルスに進化してしまう危険もあります」という研究者。
人間と暮らす猫がウイルスを媒介
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農場などで集団で飼育されている豚は、ウイルスを変異させて流行させる危険が高いとされています。密集して暮らしているためにウイルスが蔓延し、突然変異を起こす確率も高いのです。
これに対して、猫は普通集団では飼育されません。ただ感染した生き物を捕食したり、人間の近くで暮らしていることから、パンデミックを引き起こすリスクはやはり大きいといえます。
飼い猫は人間の家に住み、ソファーで丸くなり、飼い主と一緒にベッドで寝ることさえあります。人間がかかったインフルエンザに感染するチャンスも、鳥インフルエンザを人間にうつす可能性もあるのです。
猫は鳥をつかまえます。英国では飼い猫が毎年推定5500万羽の鳥を殺すといわれています。しかも猫は鳥の死骸を自宅に持ち込んだりもします。これまでも、飼い猫が呼吸器感染症や肺ペストなどさまざまな病原体を人間に感染させることが知られています。いつ感染が広まっても不思議ではない状況なのです。
将来のパンデミックに警戒を
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猫が「H5N1型」ウイルス感染すると、死に至ることもあります。症状としては失明やけいれん、脳の腫れ、麻痺、呼吸困難、血便などが見られます。
人間にとっても「H5N1型」は致命的になり得ます。ただ人から人への感染は、2024年12月現時点でまだ起きてはいません。2003年以来930人以上が「H5N1型」に感染し、463人が死亡していますが、そのほとんどは家禽から感染したものです。2023年に米国内で感染した約60人については、大部分が農場労働者であり、いずれも軽い症状だったということです。
英国政府は最近、ウイルスが人間から感染を広げパンデミックを引き起こす場合に備え、「H5ワクチン」500万回分を用意しました。米国では、疾病予防管理センターが「感染の可能性のある猫との密接な接触を避けるよう」呼びかけています。
「H5N1型」ウィルスが新たなパンデミックを引き起こさないよう、世界中が注視していく必要がありそうです。
出典:Why cats are the new pigs – and could spark the next pandemic
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