「あなたは頑固者だ」と言われることがありますか?
もしくは、自分で「自分の意見は曲げたくないタイプだ」と感じていますか?
こうした頑固さや思考の硬直は、一見すると信念を持っている証にも思えますが、人生の転機や大きな課題の前では、かえって自分自身の成長を妨げる壁になることがあります。
心理学者アリス・ボイズ(Alice Boyes)博士は、「柔軟性の欠如によって成長が阻まれてしまう」と述べています。
この記事では、頑固さを和らげ、自分の可能性を広げるための5つの具体的な方法を紹介します。
目次
- 頑固さをゆるめるための第一歩とは?
- 柔軟な思考を支える3つのスイッチ
頑固さをゆるめるための第一歩とは?
多くの人は、自分が「もっと柔軟に対応できたら良いのに……」と感じています。
仕事や人間関係、健康や人生の選択肢において、「もっといろんな考えを受け入れられたら」「違う道も選べたのに」と思う瞬間は少なくありません。
では、なぜ人は頑固になってしまうのでしょうか?
実はそれは「性格」ではなく、そういう「仕組み」をもっていないからかもしれません。
柔軟性を高めるには、自分に合った“心のスイッチ”を見つける必要があるのです。
では、どのように頑固さを克服できるでしょうか。
ボイズ博士が推奨する5つのアドバイスを考えてみましょう。
1. 「この人の話なら聞ける」という相手を決める
私たちは皆、信頼できる人からの助言には、自然と耳を傾けやすくなります。
面白いのは、親しい人よりも、やや距離のある人の方が、素直に助言を受け入れやすいという傾向があることです。
たとえば、兄弟や配偶者の言葉にはつい反発してしまうけれど、いとこや職場の別部署の人の助言はすんなり受け入れられる、という経験はないでしょうか?
これは、親しい人からのアドバイスには「感情」や「プライド」が絡むため、余計な抵抗感が生まれやすいからです。
だからこそ、いざという時に「この人に相談しよう」と思える“信頼できる第三者”を、あらかじめ数名リストアップしておくのがおすすめです。
こうした存在が、頑固さから抜け出す実践的な一歩となるのです。
2. 行動を模倣したい「モデル」を見つける
大切なのは助言だけではありません。
他人の行動や態度を観察し、まねすることも、柔軟さを手に入れる有効な手段です。
自分が避けがちな課題に、正面から立ち向かっている人は周囲にいませんか?
たとえば、困難な仕事を冷静にさばく上司、ミスを素直に認めて次にいかす同僚、不安を抱えながらも前に進んでいる友人などです。
彼らの行動や発言、そして考え方のクセに注目してみましょう。
「こういう時、あの人ならどうするだろう?」と意識するだけでも、あなたの思考の引き出しは増えていきます。
”自分の中にない選択肢を、他人の振る舞いから引き出す”という習慣がつくと、自分の方法に固執しない問題解決が可能になります。
柔軟な思考を支える3つのスイッチ
さて、次に紹介するのは、柔軟な行動を後押しするための「内面の工夫」です。
これらは、一見すると心の深い部分に関係していて、抵抗を感じるかもしれません。
しかし、実は最も効果的な「柔軟性の筋トレ」でもあるのです。
3. 「信じるけど確認する」システムを作る
あなたは他人のアドバイスを「なんとなく信用できない」と感じたことはありませんか?
この感覚は、「自分の判断で生きたい」という強い自律性から来るものであり、それ自体は悪いことではありません。
そこで有効なのが、「信じるけど、検証する」というアプローチです。
たとえば、医師に勧められた治療法を、すぐに盲目的に受け入れるのではなく、別の専門家の意見も聞いてみたり、小さなスケールで試してみたりする。
「やってみて、自分に合うか確かめる」という姿勢です。
このような“検証可能な信頼”をベースにすれば、頑固さに縛られずに、自分の意思で行動を選べるようになります。
4. ネガティブな感情を「変化の起爆剤」にする
意外かもしれませんが、不安・怒り・悲しみといった強い感情は、「柔軟性」を引き出すためのチャンスでもあります。
たとえば、長年不安を抱えてきた人が、ある出来事をきっかけに「今こそカウンセリングを受けよう」と一歩踏み出す。
このように、感情のピーク時には、「変わりたい」という強い動機が生まれやすいのです。
ただし、そのモチベーションは時間と共に弱まるため、感情に火がついたタイミングで「習慣化」につなげることが重要です。
5. 「自分らしさ」の定義を見直す
最後のポイントは、アイデンティティ(自分らしさ)との関係です。
「自分はこういう人間だから」「私は昔からこうしてきた」
そんな自己イメージが、実は柔軟な対応を妨げているかもしれません。
もし「自分は厳格な人間だ」と考えているなら、そのイメージに合わないアプローチを拒否してしまうかもしれません。
逆に「自分は型破りな人間だ」と考えているなら、型通りのアドバイスを拒否してしまうかもしれません。
そこで自分の考える「自分らしさ」が、自分を縛っていないか考えてみることは大切です。
誰かのアドバイスを受け入れられないのは、「そのアドバイスは効果がない」と感じているのか、それとも「自分の受け止め方に何か問題があるのか」自問自答してみる必要があるのです。
このように、「より良い自分になるための選択肢」として新しいアプローチを受け入れることが、柔軟性を育むための本質です。
ここまでで頑固さを克服する5つのアプローチを考慮しました。
紹介した5つの方法は、どれも「自分の意志を保ちつつ、新しい可能性に心を開く」ための具体的な手段です。
柔軟であることは、決して流されることではありません。
それは、多様な選択肢の中から、自分に最も合った道を選べる自由を意味しています。
人生という大海原を渡る中で、風向きが変わったときに帆をたたまず、進路を柔らかく変えられること。
それが、本当の意味での「強さ」なのです。
参考文献
How to Become Less Stubborn and Rigid
https://www.psychologytoday.com/us/blog/in-practice/202508/how-to-become-less-stubborn-and-rigid
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部