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オンラインゲームは男子の心の支えになる一方、女子では逆効果になる


孤独感というものが心の健康にとって、不利益になることが多いというのは最近心理学の研究においてよく聞く報告です。

これに対して最近は、自分はオンライン上の仲間とゲームする機会は多いので大丈夫と考える人もいるかもしれません。

けれども「現実で人に会うことなく遊ぶこと」は本当に心の支えになるのでしょうか? それとも、画面越しの交流では孤独感を埋めきれないのでしょうか。

この疑問について、チェコのマサリク大学(Masaryk University)の研究チームは大規模調査を行いました。

すると非常に興味深いことに、男子と女子で異なる傾向が見えてきたのです。オンライン上だけの繋がりは、男女にどのような違いを生んでいるのでしょうか?

この研究の詳細は、2025年7月17日付で科学雑誌『Computers in Human Behavior』にて公開されています。

目次

  • 「つながりを生む遊び」は心を軽くするのか
  • 男子には支え、女子には逆効果

「つながりを生む遊び」は心を軽くするのか

スマートフォンやパソコンを通じて、直接会うことなくネット上のつながりだけで世界中の人と遊べるオンラインゲームは、子どもや若者にとって欠かせない日常の一部になりました。

「マイクラ」で友だちと建物を作ったり、「フォートナイト」でチームを組んで戦ったりする時間は、まさに「つながりの体験」と言えます。けれどもその仮想のつながりが、心を癒やすのか、それとも逆に孤独感を強めるのかは、はっきりしていません

心理学の世界では、人には「他者とつながりたい」という基本的な欲求があることが知られています。自己決定理論(Self-Determination Theory)では、この欲求が満たされると心の健康が安定しやすいとされています。

では、オンラインゲームの「つながり要素」はその欲求を満たすのでしょうか? それとも、画面越しのやりとりでは本当の安心感を得られず、かえって孤独感を深めてしまうのでしょうか?

過去の研究結果はこの問題に対してバラバラです。「オンラインゲームは孤独感を減らす」という報告もあれば、「むしろ増やす」という報告もあります。このような矛盾した結果になるのは調査対象の設定が大雑把過ぎた可能性が考えられます。

この疑問をはっきりさせるためには、年齢や男女の違いを含めて、より大規模で長期的な調査が必要なのです

そこでチェコのマサリク大学(Masaryk University)の研究チームは、チェコ在住の11〜16歳の生徒3010人を対象に、2021年6月から2022年12月までの約1年半にわたり、半年ごとに4回のオンライン調査を行いました。

この大規模調査では、子どもたちが「最近よく遊んでいるオンラインゲーム」を挙げてもらい、それぞれのゲームがどれだけ“人と関われる要素”を持っているかを点数化しました。同時に、孤独感や気分の落ち込みについても尋ね、時間の流れに沿って両者の関係を追跡しました。

この調査では、心理学科の4人の評価者が、協力プレイの有無、ボイスやテキストチャット、ギルドやクランなどの仕組みを考慮し、改訂版の社会的相互作用ポテンシャル評価(SIPA 2.0)を用いて、ゲームごとの“つながり度”を0〜12点で採点しました。

たとえば「Minecraft」は8点、「Roblox」は11点、「Fortnite」は10点。一方「The Sims」や「Subway Surfers」は低得点でした。

各回の分析では、子どもが挙げたゲームの中で最も高い点を、その時期の“つながり度”として扱いました。

心の指標は2つ。ひとつは「孤独感」、もうひとつは「抑うつ気分(depressive mood)」です。

孤独感は「自分はひとりぼっちだと感じるか」で、抑うつ気分は「気分が沈むことがどれくらいあるか」を5段階で答えてもらいました。いずれも信頼性の高い質問セットで、安定した結果が示されています。

そして調査の結果、このオンライン上のつながりが孤独を深めるのか、むしろ改善するのかという問題には、明確な男女差が見られることが明らかになったのです。

男子には支え、女子には逆効果

分析の結果、オンラインゲームの社会性が男子と女子で真逆の影響を持つことが明らかになりました。

男子では、社会性の高いオンラインゲームで遊ぶと、その後の孤独感や気分の落ち込みが和らぐ傾向が見られました。仲間と協力したり会話したりすることが、心の支えになっていたのです。

一方、女子では逆に、気分が落ち込み、孤独感が強まる傾向が見られました。さらに女子は、気分が沈んでいるときほど社会性の高いゲームを選びやすく、「落ち込む→つながろうとしてゲームに頼る→でも改善しない」という悪循環に陥る可能性が示されたのです。

なぜ男女で結果が反対になるのでしょうか。この疑問について研究者は次のように考察しています。

男子は大人数での活動を通じて友情を深めやすく、オンラインゲームのような共同作業と相性が良いと考えられます。

一方、女子は少人数での深い会話を重視するため、ゲーム内の表面的なやりとりでは心が満たされず、かえって孤独感を強めている可能性があります。

ただし、この研究では「ゲームに交流の仕組みがあるかどうか」を測っただけで、実際にどれくらいチャットや協力をしたかまではわかりません。また、複数のゲームをどう遊び分けていたかやプレイ時間も考慮されていません。半年ごとの追跡のため、日常的な細かい変化までは見えていない点も注意が必要です。

それでも、3000人規模の長期調査から「男子にとっては支え、女子にとっては負担」という明確な違いが浮かび上がったことは大きな意味があります。

オンラインゲーム上のつながりは、現実の人との交流の代替には必ずしもなっていないということがこの結果からは見て取れます。

ネット上に遊ぶ友達がたくさんいるだけでは、孤独じゃないとは言えないようです。

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元論文

Gaming together, feeling better—or feeling worse? How social video gaming impacts loneliness and depressive mood differently for boys and girls
https://doi.org/10.1016/j.chb.2025.108752

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部

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