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もう痛くない!挟まずに「軽く押し付ける」だけの乳がん検診


乳がん検診は大切です。

早期発見によって命が救われるケースも少なくありません。

しかしその一方で、「あの検査が嫌い」「痛くて怖いから避けている」と感じている女性もまた、少なくないのが現実です。

そんな中、ニューヨーク州立大学バッファロー校(UB)の研究チームが、「痛みを伴わない」「1分で終わる」新しい乳がんスクリーニング技術を開発したと報告しました。

その名も「OneTouch-PAT」

患者は立ったまま、乳房を軽くパッドに押し当てるだけで済み、従来のような強い圧迫は一切必要ありません。

この研究成果は2025年6月12日、『IEEE Transactions on Medical Imaging』誌に掲載されました。

目次

  • 痛みを恐れて受診率が下がる「乳がん検診」と「1分で終わる痛みのない新手法」
  • 2種類のイメージング技術を併用する「OneTouch-PAT」

痛みを恐れて受診率が下がる「乳がん検診」と「1分で終わる痛みのない新手法」

日本では乳がんの死亡率が年々上昇しており、特に40代後半から60代の女性に多く見られます。

国や自治体も検診の受診を推奨しており、早期発見の重要性は広く認知されているはずです。

ところが医療現場の調査によれば、マンモグラフィ検査を「痛みが怖くて避けたことがある」と答える女性は少なくありません。

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乳房を挟むマンモグラフィは痛みを伴う場合があり、恐れる人が少なくない / Credit:Canva

特に若年層や乳腺濃度が高い「デンスブレスト」体質の人は、検査時の圧迫による痛みが強く、精神的なハードルが高くなっています。

実際、マンモグラフィでは乳房を2枚の板で挟んで薄く伸ばし、X線撮影を行います。

これは乳腺や腫瘍を明確に映すための工夫ですが、人によっては強い痛みを感じることもあります

加えて、前述角デンスブレストの人では画像が白くかすんでしまい、がんが見えづらくなる「感度の低下」も問題となっています。

こうした背景から、世界中で「痛みのない・正確な乳がん検診」の開発が望まれていました。

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軽く押し付けるだけの乳がん検診「OneTouch-PAT」/ Credit:UB

そこで登場したのが、ニューヨーク州立大学バッファロー校(UB)の研究チームが開発した「OneTouch-PAT」です。

この装置では、患者が検査台に立ち、乳房を柔らかいパッドに軽く押し当てるだけで3Dスキャンが自動で行われます。

検査はたったの1分以内で完了し、圧迫による痛みはゼロ。

機器の操作も簡単なため、導入もしやすいというメリットがあります。

では、OneTouch-PATの具体的な具体的な仕組みを見てみましょう。

2種類のイメージング技術を併用する「OneTouch-PAT」

OneTouch-PATの中核は、「超音波イメージング」と「光音響イメージング」という2種類の技術を組み合わせている点です。

まず光音響イメージングでは、レーザー光を乳房内部に照射し、光を吸収する分子が熱を持って膨張するときに発生する音波を検出します。

これは、がん組織に特有な血管の分布や密度を鮮明に映し出すのに非常に有効です。

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2つのイメージング技術で鮮明な3D画像を取得できる / Credit:UB

これに加えて、超音波による構造画像を同時に取得することで、がんの形・位置・深さなど、詳細な情報を一度に把握できます。

通常これらのシステムは、専門家が手動でスキャンするか、別々の装置を使用する必要があります。

OneTouch-PATでは、患者が同じ立ったままの姿勢で両方のスキャンを行い自動的に組み合わされるため、操作ミスなども生じません。

さらに、研究チームは独自に開発した3次元の深層学習ネットワークを導入。

これにより、解像度の向上、血管の強調表示、ノイズ低減 などが実現し、医師が診断しやすい鮮明な3D画像を自動生成できるのです。

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痛くない乳がん検診で早期発見へ / Credit:Canva

そしてこの新しいシステムは、健常者4人と乳がん患者61人、計65名に対して試験されました。

その結果、参加者の乳房組織の鮮明な3D画像を即座に取得することに成功しました。

また、乳がんの3つの代表的なサブタイプ(Luminal A、Luminal B、Triple-Negative)それぞれに特有のパターンがあることを観察・分類に役立てることができました。

さらに従来の方法ではがん検出が難しい「デンスブレスト」体質の人の病変を検出する点でも優れていました。

臨床現場での使用には更なる研究が必要ですが、研究チームは、いずれOneTouch-PATが既存の診断法を補完する可能性に期待を寄せています。

この技術が普及すれば、「痛みが怖くて検査を避けていた」人たちがもっと気軽に検診を受けられるようになり、そのことが早期発見・早期治療に結びつくことでしょう。

全ての画像を見る

参考文献

Painless breast cancer scan promises accurate results in under a minute
https://newatlas.com/cancer/painless-breast-cancer-scan-onetouch-pat-buffalo/

Study: Quick, pain-free breast imaging system shows promise in early clinical tests
https://www.buffalo.edu/news/releases/2025/07/pain-free-breast-imaging-system.html

元論文

OneTouch Automated Photoacoustic and Ultrasound Imaging of Breast in Standing Pose
https://doi.org/10.1109/TMI.2025.3578929

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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