カナダ・オタワ大学(University of Ottawa)はこのほど、同国北東部ケベック州のヌナビク地域にて、地球上で確認されている中でも最古の岩石を発見したと発表しました。
その年代はなんと41億6000万年前(41.6億年前)。
これは地球が誕生したとされる約45.4億年前にごく近い時期であり、地球の最初期=冥王代に形成された岩石であることが判明したのです。
研究の詳細は2025年6月26日付で科学雑誌『Science』に掲載されています。
目次
- 冥王代の岩石がカナダに
- 地球の“赤ん坊時代”を読み解くタイムマシン
冥王代の岩石がカナダに

ヌナビク地域に広がる「ヌヴヴアギトゥク・グリーンストーン帯(Nuvvuagittuq Greenstone)」は、長年にわたり地質学者たちの注目を集めてきた地域です。
ここでは数十億年前の岩石が地表に現れており、「地球最古の岩石が眠っているかもしれない」とささやかれてきました。
しかし、これまで行われてきた年代測定は、27億年から43億年までとバラつきがあり、確かな年代を定めるには至っていませんでした。
その状況を変えたのが、オタワ大学の地質学者クリスチャン・ソール氏を中心とする研究チームです。
チームは、ウラン-鉛法とサマリウム-ネオジム法という2種類の放射年代測定法を同時に適用。
その結果、異なる鉱物・異なる採取地点においても、共通して41.6億年前という驚くべき年代が示されたのです。
この結果により、ヌヴヴアギトゥク・グリーンストーン帯は世界で唯一、冥王代(約40〜46億年前)の岩石が確認された場所として認定されました。
地球の“赤ん坊時代”を読み解くタイムマシン
では、これらの古代岩石がなぜ重要なのでしょうか?
現在の地球の地表や地殻は、常にプレートの運動や浸食などで変化し続けています。
そのため、地球が誕生したばかりの頃の痕跡は、ほとんどが消え去ってしまいました。
そんな中で、ヌヴヴアギトゥク帯の岩石のように冥王代の名残が地表に残されている例は極めてまれです。
こうした太古の岩石は、地球がどのように冷え、最初期の大陸を形成し、生命の起源につながる環境を整えていったのかを知るための貴重な情報源となります。
研究を主導したオタワ大学のジョナサン・オニール准教授は、次のように語っています。
「これらの岩石を調べることは、地球の誕生そのものに立ち返ることです。生命が誕生し得る環境が、どのように形作られていったのかを理解する手がかりとなるのです」

また、このような研究は地球だけにとどまらず、銀河系内で生命が誕生しうる“似た惑星”を探すヒントにもなるといいます。
私たちが立っているこの大地は、いったいどのようにして形づくられ、何を経て今に至ったのでしょうか。
それを知るための手がかりが、凍てつくカナダの北端に眠っていました。
地球がまだ灼熱のマグマの海に覆われていた時代。その頃に生まれた岩石が今、私たちの手の中にあります。
この発見は、地球と生命の始まりに迫る新たな扉を開いてくれるでしょう。
参考文献
New study confirms that the oldest rocks on Earth are in northern Canada
https://www.uottawa.ca/about-us/news-all/new-study-confirms-oldest-rocks-earth-are-northern-canada
4-Billion-Year-Old Stripey Rocks in Canada May Be The Oldest on Earth
https://www.sciencealert.com/4-billion-year-old-stripey-rocks-in-canada-may-be-the-oldest-on-earth
元論文
Evidence for Hadean mafic intrusions in the Nuvvuagittuq Greenstone Belt, Canada
https://www.science.org/doi/10.1126/science.ads8461
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部