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サルも「親しかった仲間の遺体」に寄り添う!数十年にわたる調査で発見


大阪大学の研究チームは、野生のニホンザルが仲間の死にどのように反応するかを詳細に調査しました。この研究は、1990年からの長期調査で得られたもので、親しい関係にあったサルたちが死亡した仲間の遺体に寄り添う様子を明らかにしました。特に、死後も近しい個体が遺体に接触し続ける行動は、人間の死生観に通じるものがあります。研究では、腐敗や蛆虫に対しては忌避反応を見せる一方で、死んだ仲間のために特別な行動を取る姿が観察されました。この成果は、サルの社会的な絆が死に対する行動にどのように影響を与えるかの理解を深める一助となっています。

親しい家族や友が亡くなると、その遺体から離れがたく感じるものです。

私たちは遺体に寄り添う中で、「死」を受け入れ、別れを惜しみ、故人を想いながら時間を過ごします。

では、他の動物たち――とくに私たちと似ているサルたちはどうなのでしょうか?

大阪大学の中道正之名誉教授と山田一憲准教授は、野生ニホンザル集団において、死にゆく仲間や死んだ直後の遺体に対する行動を、1990年からの長期調査に基づいて記録・分析しました。

そして研究の結果、親しい関係にあったサルたちが、遺体に寄り添い、毛づくろいを続けるなど、人間にも通じる行動を取ることが明らかになったのです。

この成果は、2025年6月24日付の『Primates』誌に掲載されました。

目次

  • 「親しかった仲間の死」に対してサルは何を思うのか
  • サルは親しかった仲間の遺体に寄り添うと判明!「4つの死」からサルの死生観が明らかに

「親しかった仲間の死」に対してサルは何を思うのか

私たち人間は、誰かの死に直面したとき、様々な反応をします。

親しい友や近親者の死に対しては、強い悲しみを感じたり、遺体に寄り添ったりするなど、特別な感情や行動が観察されます。

このような「死生観」は人間特有のものとされてきましたが、果たしてそうでしょうか?

霊長類、とくにニホンザルには高度な社会性が備わっています。

家族単位で行動し、仲間との関係性を築き、毛づくろいなどで親和性を高めるなど、複雑な社会構造を持っています。

そのようなサルたちは、仲間の死にどのように反応するのでしょうか?

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サルは死亡した仲間に対して何を思うのか/ Credit:Canva

大阪大学の研究グループは、1958年から岡山県真庭市「神庭の滝」周辺に生息する「勝山ニホンザル集団」に対して、67年にわたり調査してきました。

サルの名前を覚え、名前を付けて、それぞれの行動を観察してきたのです。

そして1990年からは「サル同士の親しい関係」を調べることも行っています。

サルたちが毛づくろいしたり一緒に過ごしたりする相手を定量的に記録してきたのです。

この長期調査の過程で、死亡直前あるいは死亡直後の4頭のサルに対して、仲間のサルたちがどのように行動するかを詳細に記録することに成功しました

これまで、母親ザルが死亡した子ザルを持ち運ぶことはよく知られていましたが、おとなの遺体に対してサルたちがどんな反応を示すかは情報がありませんでした。

今回の長期調査は、こうした点で新しい発見をもたらしています。

では、サルたちの間で仲間の死はどのように映ったのでしょうか。

サルは親しかった仲間の遺体に寄り添うと判明!「4つの死」からサルの死生観が明らかに

研究チームが記録した4つの事例は、いずれも成体のニホンザルに関するものです。以下にその要点を紹介します。

1つ目のケースでは、2003年に死亡した28歳の最優位オス(群れで順位が最も高いオス)に対して、多くの個体は忌避反応を示しました。

しかし、このオスと最も親しかったメスと血縁者、オスが頻繁に世話をしていた2歳の子ザルだけが、遺体に接近する行動を見せました。

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老サルに毛づくろいされるなど親しい関係だった子ザルが老サルの遺体に寄り添う / Credit:大阪大学

写真にあるとおり、この子ザルは生後6カ月の時から、死亡したオスに抱いてもらったり毛づくろいを受けたりしており、特別に親しい関係を築いていました。

そして他の多くのサルたちが離れていく中、この子ザルはオスの遺体から離れようとしなかったのです。

2つ目のケースは1993年の例です。

死亡直前だった28歳の最優位オスがウジに侵された際、群れのサルたちは接触を避けました。

しかし、日常的に日常的に毛づくろいを行っていた最優位メスだけは、下写真のように、そのオスに対して毛づくろいを行い、ウジをつまみ上げて食べました。

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死亡3日前の28歳オスの傷口近くを毛づくろいする最優位メス。親しい関係だった / Credit:大阪大学

3つ目のケースは2007年のもので、傷を負ってウジがわいた28歳の老齢メスに対して、その娘たちは一度は毛づくろいを試みましたが、ウジを見た瞬間に逃げ出しました。

母への愛着とウジ虫への本能的嫌悪が交錯した、複雑な感情の表れといえるでしょう。

4つ目のケースは1999年の例です。

死亡した12歳のオスには外傷がなく腐敗も見られませんでした。

「毛づくろい仲間だったサル」の娘は、その遺体に気づき、2分間にわたって毛づくろいを行いました。

これらの事例から明らかになったのは、ニホンザルが腐敗やウジに対しては明確な忌避反応を示す一方で、親密だった仲間の死には特別な関わりを持とうとするということです。

こうした特徴は、まさに人間の死生観に近いものがあります。

中道名誉教授も、実際の場面を目撃して、「サルとヒトの近さを実感しました」と語っています。

また、この研究は「死に対する行動が、生前の社会的な絆によって左右される」ことを、非人間動物において示した画期的な成果でもあります。

親族や親しい仲間の死を前にしたとき、私たちもサルも、同じような感情を抱いているのかもしれません。

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参考文献

サルも親しかった仲間の遺体に寄り添う
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2025/20250624_2

元論文

Responses to dying and dead adult companions in a free-ranging, provisioned group of Japanese macaques (Macaca fuscata)
https://doi.org/10.1098/rstb.2017.0257

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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