飲料の容器とマイクロプラスチックの意外な関係が、フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)の最新調査で明らかになりました。
それによると、最も多くのマイクロプラスチックを含んでいたのは、プラスチック瓶でも紙パックでもなく、「ガラス瓶」であることが判明したのです。
また飲料の種類によっても、マイクロプラスチックを多く含むものとあまり含まないものがありました。
研究の詳細は2025年5月14日付で学術誌『Journal of Food Composition and Analysis』に掲載されています。
目次
- 最もマイクロプラスチックが多いのは「ガラス瓶」
- 飲み物の種類によっても違う?
最もマイクロプラスチックが多いのは「ガラス瓶」
研究者たちはこれまで、空気中や食べ物の中、さらには人体全体にまで広がる微細でほとんど目に見えないマイクロプラスチックを世界中で検出しています。
こうしたプラスチックの蔓延が人間の健康に害を及ぼすという直接的な証拠はまだありませんが、その拡散を測定しようとする研究分野が急速に拡大しています。
そこでANSESの研究チームは「フランスで販売されている様々な種類の飲料中のマイクロプラスチックの量を調べ、容器の違いがどのような影響を及ぼすかを検証する」ことに。
その結果、清涼飲料水、レモネード、アイスティー、ビールのガラス瓶には、平均して1リットルあたり約100個のマイクロプラスチック粒子が含まれていることが判明したのです。
これはプラスチック瓶や金属缶、紙のカップに比べて5~50倍高い値でした。

また調査を進めると、汚染源はガラス瓶のボトル本体ではなく「キャップ」にあることが明らかになりました。
ガラス瓶の多くは金属製のキャップで密封されており、その外側にはブランドロゴやデザインが施された塗料(ポリエステル系)が使われています。
研究では、ガラス瓶内に検出された粒子の色や形状、そして化学組成が、キャップの塗料と完全に一致することが確認されました。
つまりキャップの塗装が剥がれ落ちて、飲料の中に混入していたのです。
さらにキャップの表面には、肉眼では確認できない微細な擦り傷が多く存在しており、保管や輸送時に他のキャップと擦れることで、塗料がはがれて粒子化していたと考えられます。
飲み物の種類によっても違う?
今回は「容器」と「マイクロプラスチック」の関係に焦点を当てたものでしたが、一方で、飲み物の種類によっても混入量が異なることがわかりました。
調査によると、水(炭酸・非炭酸とも)については、マイクロプラスチックの量がすべての容器で比較的低く、ガラス瓶で1リットルあたり4.5個、プラスチック瓶で1.6個となっていたのです。
またワインにも、たとえキャップ付きのガラス瓶であっても、ほとんどマイクロプラスチックは含まれていませんでした。
この違いの理由はまだ科学的に解明されていません。

反対に、清涼飲料水には1リットルあたり約30個、レモネードには40個、ビールには約60個のマイクロプラスチックが含まれていました。
ANSESによると、マイクロプラスチックがどの程度で毒性をもつかという基準値が存在しないため、これらの数値が健康リスクを意味するかどうかを判断することはできないといいます。
しかしこれまでの研究では、人体へのマイクロプラスチックの混入や蓄積が体内炎症を起こしたり、細胞内に侵入して、正常な働きを混乱させる可能性もゼロではないと指摘されています。
そのため、マイクロプラスチックの摂取はできるかぎり避けておいた方がいいでしょう。
参考文献
Glass bottles found to contain more microplastics than plastic bottles
https://phys.org/news/2025-06-glass-bottles-microplastics-plastic.html
元論文
Microplastic contaminations in a set of beverages sold in France
https://doi.org/10.1016/j.jfca.2025.107719
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部