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ChatGPTに「絶滅した単語」「架空の言葉」を与えて何と答えるか実験してみた


米カンザス大学の心理言語学チームは、ChatGPTの言語認識能力を検証するためのユニークな実験を行いました。まず、19世紀には存在したが現在では使われなくなった英単語52語をChatGPTに提示し、そのうち7割にあたる36語で正確な意味を答えることに成功しました。ただし、11語は辞書に存在しない可能性を指摘し、5語では意味を間違えた反応を示しました。さらに、意味のない造語の英単語らしさを評価させた結果、人間の評価と高い相関を示しました。新しい単語を作るタスクでは、2語を組み合わせた新語を生成し、AIの創造性を発揮しました。これらの結果から、ChatGPTは忘れられた言葉を蘇らせる能力や新語の提案ができる可能性を持つ一方で、文脈や常識を完全に理解するには限界があることが示されました。

ChatGPTは私たちが投げかける質問や指令に柔軟に応えてくれる優れた人工知能です。

ではChatGPTに対して、意味を成さない言葉を投げかけると、どのように返答するのでしょうか?

そんな疑問のもと、米カンザス大学(The University of Kansas)の心理言語学チームは、ChatGPTに「絶滅した英単語」や「架空の言葉」を与えるユニークな実験を実施。

ChatGPTはどのような反応を示したのでしょうか?

研究の詳細は2025年6月6日付で学術誌『PLOS One』に掲載されています。

目次

  • AIは「絶滅した言葉」を知っているのか?
  • 意味のない言葉はどう「理解」するのか?

AIは「絶滅した言葉」を知っているのか?

研究チームはまず、ChatGPT(バージョン4o)に対して、「19世紀には存在したが、現代ではほとんど使われなくなった英単語」を52語選び、それぞれに「この単語の意味は?」と質問を投げかけました。

たとえば「アップノッキング(upknocking)」という単語は、かつてイギリスで存在した「目覚まし人」という職業を指します。

これは眠っている人を起こす職業を指し、目覚まし時計の普及とともに姿を消しました。

現代の英語話者がこのような単語を知っている可能性はほとんどありませんが、実験の結果、ChatGPTはなんとその約7割にあたる36語について、正確な意味を答えることに成功したのです。

これは人間の記憶には限界がある一方で、AIは過去の膨大な文献を記憶し続けることができるという可能性を示しています。

つまり、ChatGPTは“忘れられた言葉”を蘇らせるタイムカプセルのような存在ともなりうるのです。

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Credit: canva

とはいえ、完璧だったわけではありません。

11語については「この単語は英語辞書に存在しない可能性があります」と回答し、5語については完全に間違った意味、いわゆる「ハルシネーション」を起こしました。

ハルシネーションとは、簡単に言えば、AI(人工知能)が不確かな情報をあたかも真実のようにでっちあげる現象です。

たとえば「flothery」という言葉を「ふわふわした柔らかさ」と解釈しましたが、本来の意味は「だらしないのに見栄を張っている様子」です。

この結果は、ChatGPTがあくまで確率的な言語モデルであり、常に正解を知っているわけではないことを示しました。

意味のない言葉はどう「理解」するのか?

別の実験では、「意味を持たないナンセンスな単語(nonwords)」を使って、ChatGPTの言語感覚を試しました。

たとえば、意味のない英単語風の造語(例:「glerm」「wask」など)について、「どれくらい“英単語っぽく”聞こえるか」を1〜7点で評価させるタスクも実施されました。

これはそのナンワードがどれほど英語らしく聞こえるかを判断させるものであり、その評価を英語話者の人間による評価と比較。

結果、ChatGPTの評価は人間のネイティブスピーカーと高い相関を示し、同時に「その語がブランド名だったら買いたいか」という判断にも類似した傾向を見せています。

またチームは、ChatGPTに新しい概念を表す新語を作らせる実験も行いました。

この新語創作タスクで、ChatGPTはなかなか興味深い仕事をし、多くの場合、ChatGPTは2つの単語を組み合わせるという予測可能な方法で新語を生み出していました。

その結果として以下のような新語が作られています。

・ラウズレイジ(rousrage):目覚ましで起こされたときの怒り

・プライディファイ(prideify):他人の成功を自分の誇りに感じること

・スタンブロップ(stumblop):自分の足につまずくこと

・レクシナイズ(lexinize):ナンセンスな語が意味を持ち始める過程

これらは実在しない言葉ですが、実際の単語の構造や意味の組み合わせを巧みに利用しており、AIの“擬似的な創造性”を垣間見ることができます。

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Credit: canva

この研究は「意味のない言葉」を使うことで、ChatGPTの内側にある“言語感覚”を探る試みでした。

結果として、ChatGPTは人間と似たようなパターン認識や判断を行う一方で、文脈や常識、文化的なルールにはまだ不完全という限界も明らかになりました。

それでも忘れられた単語を呼び起こしたり、新しい言葉を提案したりする能力は、人間の記憶や発想を補う「言語のパートナー」としての可能性を秘めています。

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参考文献

Psycholinguist talks nonsense to ChatGPT to understand how it processes language
https://techxplore.com/news/2025-06-psycholinguist-nonsense-chatgpt-language.html

元論文

Examining Chat GPT with nonwords and machine psycholinguistic techniques
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0325612

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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