古代ローマの遺跡から、驚きの発見が報告されました。
このほど、イングランド北部にある古代ローマ遺跡で行われている発掘調査で、なんと現代の男性用サイズにして32センチという巨大な革靴が見つかったのです。
この靴が履かれていたのは、およそ2000年前。
当時の平均的な身長や靴のサイズを考えると、これほどのサイズは異常といえる大きさです。
まるで“古代ローマの巨人”の存在を思わせるような発見に、考古学者たちも驚きを隠せません。
この巨大な靴は、一体誰のものだったのでしょうか?
目次
- 巨人の靴を発見⁈
- この靴は誰のもの? 巨人説の行方
巨人の靴を発見⁈
発見の舞台は、イングランド北部にある古代ローマ軍の要塞「マグナ(Magna)」です。
この要塞は、西暦122年ごろに建設されたハドリアヌスの長城沿いに築かれた防衛拠点のひとつで、ローマ帝国がブリテン島北部に及んでいた痕跡を今に伝えています。
考古学者たちは、今年の春から要塞北側の堀を発掘しており、そのなかでも「足首くじき堀(ankle-breaker)」と呼ばれる細くて深い落とし穴状の溝の底から、保存状態の良い革靴2足を発見しました。
この特殊な堀は、水で隠すことで敵兵の足を引っかけて転倒させ、足を捻挫させたり骨折させたりするなど、戦闘不能にする目的で設計されたトラップです。
靴が発見された堀の中は酸素が極めて少なく、有機物が驚くほど良好な状態で残っていました。
このおかげで、複数の革の層からなる靴底、鋲(びょう)、かかとの一部までがきれいに残っていたのです。

特に注目されたのが、2足目の靴です。
つま先からかかとまで完全に形を保っており、ボランティアも考古学者も思わず感嘆の声をあげたといいます。
その長さはなんと32センチに相当していました。
当時の成人男性の平均身長が165センチ前後だったと考えられる中で、この靴を履いていた人物は、明らかに“規格外”の体格だった可能性があります。
この靴は誰のもの? 巨人説の行方
この巨大な靴の持ち主について、さまざまな仮説が浮上しています。
もっとも自然な仮説は、ローマ軍の中でも特に体格のよい兵士、あるいは軍団の幹部クラスの人物が履いていたというものです。
ローマ帝国は各地から兵を集めており、ゲルマン系や北方の部族出身の兵士が混在していたこともわかっています。
そうした人々の中には、ローマ人よりも遥かに大柄な者もいたと考えられており、この靴のサイズもその一例かもしれません。

また、要塞で働いていた兵士や職人たちは、革製品や金属製品の加工を行うスキルも持っていました。
この靴の構造を詳しく調べたところ、靴底は何層もの革を重ね、縫い糸やびょうでしっかりと固定されていたことが判明しています。
防水性や耐久性を重視した、実用的な作りだったことからも、この靴が実際に使用されていたことは間違いありません。
それにしても32センチという異例のサイズは、ローマ帝国のコレクションの中でも最大級の可能性があります。
現在、この靴は専門の革製品研究者によって詳細な分析が進められており、どのような人物がこの靴を履いていたのか、そして彼がマグナの要塞でどのような役割を果たしていたのかを解明する手がかりになることが期待されています。
こちらは発掘作業の様子をまとめた映像です。
参考文献
One Roman soldier had enormous feet, 2,000-year-old waterlogged leather shoe reveals
https://www.livescience.com/archaeology/romans/one-roman-soldier-had-enormous-feet-2-000-year-old-waterlogged-leather-shoe-reveals
Magna Dig Diary 2025
https://romanarmymuseum.com/magnafort/magna-dig-diary-2025/
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部