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7300万年前の北極で鳥が繁栄していた証拠を発見!


アラスカ大学フェアバンクス校の研究者たちは、約7300万年前の恐竜時代に、北極圏で鳥が営巣していたことを示す化石をアラスカの「プリンス・クリーク層」で発見しました。発掘された化石には、ヘスペロルニス類やイクチオルニス類などの絶滅種が含まれ、歯のある嘴を持つものや現生鳥類に近い種もありました。この発見は、鳥が極地環境に適応していたことを示唆しています。当時の北極は、現在よりも温暖であったとはいえ、極夜や氷点下の気温という厳しい条件でした。研究者たちは、鳥たちが極夜を乗り越えるために「定住型」または「渡り型」の適応戦略を持っていた可能性を指摘しています。この発見は、現代の北極鳥類の祖先が恐竜時代から独自の生存戦略で進化してきたことを裏付けています。

凍てつく氷原、吹き荒れる寒風、そして何カ月も太陽の昇らない闇。

北極圏は地球上で最も過酷な場所の一つとして有名です。

今日の北極圏にも複数種の鳥が住んでいますが、いつから鳥たちが北極に適応し始めたのかはわかっていません。

これまでの最古の記録は、恐竜が絶滅した後の約4650万年前でした。

しかし今回、アラスカ大学フェアバンクス校(UAF)の最新研究で、まだ恐竜が存在した約7300万年前の北極圏で、鳥類が営巣していた証拠を発見したのです。

極地での鳥類の営巣の証拠として最古となります。

研究の詳細は2025年5月29日付で科学雑誌『Science』に掲載されました。

目次

  • 恐竜時代から鳥は北極にいた!
  • 極地で生き抜いた“原始の鳥”たちのサバイバル術

恐竜時代から鳥は北極にいた!

今回の発見は、アラスカ北部のコルヴィル川沿いにある「プリンス・クリーク層」という地層で行われました。

この地域は恐竜化石の宝庫として知られてきましたが、近年では小型の鳥類化石も豊富に見つかる重要な調査地となっています。

研究チームはその最新調査で、2mm以下の極小の骨や歯をふるいにかけて集めるという緻密な方法を用い、ヒナを含む鳥の骨を多数発掘しました。

その数は50点以上にのぼり、なかには嘴(くちばし)に歯のある絶滅種ヘスペロルニス類や、カモメに似たイクチオルニス類、そして歯を持たない現生鳥類に近い種まで含まれていました。

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発掘調査の様子/ Credit: UAF –Study finds birds nested in Arctic alongside dinosaurs(2025)

これらの鳥たちは、今から約7300万年前、つまり恐竜たちがまだ地球を支配していた時代に、極寒の北極圏で実際に繁殖していた可能性が高いと考えられています。

それまでに最古とされていた極地での鳥の営巣の証拠は、約4650万年前の南極にいたペンギンでした。

今回の発見は、その記録をおよそ2500万年以上もさかのぼることになります。

現代でもシロフクロウやシロカモメなど、一部の鳥は北極で営巣します。

しかし彼らの祖先が恐竜時代からすでにそうしていたという証拠が示されたのは、今回が初めてです。

極地で生き抜いた“原始の鳥”たちのサバイバル術

この時代の北極は現在よりも温暖だったとはいえ、冬には氷点下まで冷え込み、約4カ月間太陽が昇らない極夜が続いていました。

そんな環境で、鳥たちはどうやって子育てをしていたのでしょうか?

研究者たちは2つの可能性を挙げています。

ひとつは、ヒナが孵化した後も北極圏にとどまり極夜を乗り越えて育つ適応をしていたとする「定住型」。

もうひとつは、ある程度成長した後に南へ約2000km以上の長距離を渡る「渡り型」です。

どちらにせよ、当時の鳥たちにとっては高度な生存戦略です。

「これほど原始的と考えられていた鳥が、そんな行動をしていたとは驚きです」と、論文の筆頭著者であるローレン・ウィルソン氏は語ります。

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エナンティオルニス類の復元図/ Credit: ja.wikipedia

実際、この地域で見つかっていない鳥のグループもあります。

それが「エナンティオルニス類」と呼ばれる白亜紀に広く分布していた鳥類です。

彼らは卵の孵化や成長に時間がかかり、一斉に羽毛を抜き替える習性があったと考えられています。

こうした特徴は、極寒の環境には明らかに不利だったため、彼らは北極に進出できなかった可能性が高いのです。

一方で、今回見つかった鳥たちは、成長スピードが早く、羽毛の保持にも優れていたとされ、現生鳥類のような生態を備えていたと考えられます。

これにより、夏の24時間太陽が沈まない「白夜」期間に爆発的に増える昆虫をエサにし、短期間で繁殖と成長を完了するという北極特有のライフサイクルを築いていた可能性があります。

もちろん、彼らの脅威は寒さだけではありませんでした。

同じ土地には、肉食恐竜トロオドン(体長約3メートル)や草食恐竜パキリノサウルス(体長約5メートル)などが共存していました。

可愛らしいヒナたちは、こうした恐竜たちの格好の獲物になったと見られます。

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トロオドンの骨格/ Credit: en.wikipedia

北極は過酷な地であると同時に、鳥たちにとっては進化と適応の舞台でもあったのかもしれません。

今回の研究は、恐竜時代の鳥たちがすでに極地で営巣していたという驚くべき歴史を明らかにしました。

それは、現代の鳥たちが築いてきた繁殖戦略が、実は何千万年も前から脈々と受け継がれてきたものであることを意味しています。

全ての画像を見る

参考文献

Study finds birds nested in Arctic alongside dinosaurs
https://www.uaf.edu/news/study-finds-birds-nested-in-arctic-alongside-dinosaurs.php

Birds have been nesting in the Arctic Circle for almost 73 million years, newly discovered fossils reveal
https://www.livescience.com/animals/birds/birds-have-been-nesting-in-the-arctic-circle-for-almost-73-million-years-newly-discovered-fossils-reveal

元論文

Arctic bird nesting traces back to the Cretaceous
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adt5189

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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