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森の緑が濃くなると「火山噴火が迫っているサイン」となる可能性


NASAとスミソニアン協会の研究で、火山周辺の森林の色の変化が噴火の前兆である可能性が示されました。火山の活動により地中から漏れ出すCO₂が周囲の植物を活性化し、その結果、森林の緑が濃くなるという現象が関係しています。これを利用して、衛星を通じて火山活動を遠隔でモニタリングする手法が考案されています。2011年から2018年にかけてのエトナ火山での実証実験では、森林の色の変化と火山活動の関連性が確認されました。この発見により、火山監視の手段が拡張され、災害予測の精度が向上する可能性がありますが、植生がない地域や気候の影響による課題も残ります。

一見、ただ美しく茂る緑色の森。

しかしその濃い緑の木々が、実は「火山噴火が迫っている」ことを知らせる警告色だとしたら…?

このほど、アメリカ航空宇宙局(NASA)とスミソニアン協会は、火山周辺の森の色が噴火の前触れとして機能する可能性を発見しました。

森の緑が濃くなり、木々が生い茂ると、火山噴火が近いサインという関連性が見つかったのです。

一体なぜでしょうか?

研究の詳細は2024年12月の科学雑誌『Remote Sensing of Environment』に掲載されています。

目次

  • なぜ緑が濃くなると、火山噴火が近いのか?
  • 実際に観測してみた結果

なぜ緑が濃くなると、火山噴火が近いのか?

火山噴火は地球上のありとあらゆる自然災害の中で、最も危険なものの一つです。

もし火山が噴火すれば、何千何万という人命が失われる可能性があり、また粉塵が上空を覆って気候変動を起こす恐れもあります。

そのために、火山の噴火を正確に予測する技術がとても大切です。

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Credit: canva

これまで火山の噴火予測といえば、地震活動や地盤の隆起、火山ガス(二酸化硫黄)の観測などが知られています。

しかし近年の研究で特に注目を集めているのが「二酸化炭素(CO₂)」です。

火山のマグマが地下で上昇するとき、CO₂が最初に地表近くへと漏れ出します。

このCO₂は無色・無臭で、しかも大気中にもともと多く存在しているため、直接捉えるのが難しいとされてきました。

ところがNASAの研究チームは、火山周辺の「木々の葉の色」を通じてCO₂の存在を宇宙から間接的に捉えるという画期的な方法を探り始めました。

その理由は明快です。

植物は光合成にCO₂を必要とし、大気中のCO₂濃度が高まると、葉がより青々と繁茂する傾向があります。

つまり「火山からCO₂が出始める → 周辺の植物が活性化する → 森が濃い緑色になる」という自然の“つながり”を利用しようというのです。

これまでは、こうした変化を観測するには現地に足を運ばなければなりませんでした。

しかしNASAのLandsat 8やESA(欧州宇宙機関)のSentinel-2といった地球観測衛星が高解像度で植生の状態をとらえることで、遠隔地からの常時モニタリングが可能になってきています。

火山周辺に広がる森林が「緑濃く」なったとき、それは単なる季節の変化ではなく、「地下でマグマが動き出している」兆候かもしれないのです。

そしてチームは、両者の関連性を実際に観測することにも成功しました。

実際に観測してみた結果

この仮説が科学的に裏付けられたのが、2024年に発表されたイタリア・エトナ火山での研究です。

チームは2011年から2018年の間に撮影された衛星画像を用い、エトナ火山の周囲の植生の色合い(NDVIと呼ばれる指標)を詳細に解析。

そして火山周辺に設置されたCO₂観測装置(EtnaGasステーション)のデータと照合した結果、マグマが地下から上昇してくるタイミングでCO₂放出量が急増し、それに連動して木々の葉の緑色が顕著に濃くなっていることが判明したのです。

特筆すべきは、こうした「緑の増加」が火山本体から30メートル以上離れた場所でも観測された点でした。

つまり、火山のごく周辺だけでなく、ある程度広範囲にわたって植生の変化が起こることで、早期に異変を察知できる可能性があるのです。

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エトナ火山/ Credit: ja.wikipedia

2025年3月にはNASAとスミソニアン協会による航空観測ミッション「AVUELO」も実施され、パナマやコスタリカの火山地域にて、研究機に搭載された分光装置が植物の色を分析。

並行して現地では研究者が実際に木の葉を採取し、CO₂濃度と照らし合わせる精密な検証が行われました。

このように生態学・気候科学・火山学という異なる分野の知見が交差することで、「森の色」を“地下の異変”のセンサーにするという試みが現実味を帯びてきています。

もちろん課題もあります。

火山地域によっては十分な植生がない場合もあり、また火災や病害、気候異常が植物の色に影響を与える可能性もあります。

すべての火山に適用できる万能な手法ではありません。

それでも、既存の地震・地盤・火山ガス監視に加え、「森の緑」という自然が発するサインを取り込むことで、より早く、より広範囲に、火山災害への備えを強化できる可能性があるのです。

全ての画像を見る

参考文献

The closer a volcano is to erupting, the greener the trees around it look from space
https://www.livescience.com/planet-earth/volcanos/the-closer-a-volcano-is-to-erupting-the-greener-the-trees-around-it-look-from-space

NASA Satellite Images Could Provide Early Volcano Warnings
https://www.nasa.gov/earth/natural-disasters/volcanoes/nasa-satellites-provide-early-volcano-warnings/

元論文

Monitoring volcanic CO2 flux by the remote sensing of vegetation on Mt. Etna, Italy
https://doi.org/10.1016/j.rse.2024.114408

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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