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【スピード違反が事実上不可能に!?】”あるテクノロジー”の導入がEUと米国で進む


自動車のスピード違反による事故が多発する中、新たな技術「インテリジェント・スピード・アシスト(ISA)」に注目が集まっています。ISAは、車載のGNSSや高精度地図データ、カメラを活用し、制限速度をリアルタイムで把握してドライバーに警告を発します。また、必要に応じてエンジン出力を制限し、速度超過を物理的に防止します。EUでは新車へのISA装備が義務化され、米国の一部州でも法案が進みつつあります。導入により、速度超過による事故を大幅に減少させる可能性があるとともに、環境への貢献も期待されています。ただし、標識認識の誤作動やシステムの過度な介入と感じるドライバーからの抵抗も課題です。それでもISAは、事故防止と安全運転の促進に寄与するテクノロジーとして幅広い導入が期待されます。

自動車のスピード違反による事故は後を絶ちません。

2022年には全米で約1万2000人がスピード違反に関連した事故で命を失っています。

こうした悲惨な事故を減らすために、車両側で制限速度を強制的に守らせる新たなテクノロジー「インテリジェント・スピード・アシスト(ISA)」が注目を集めています。

欧州連合(EU)では新車への搭載が義務化されつつあり、米国各州でも立法・導入の動きが見られています。

では、ISAとはいったいどんなテクノロジーなのでしょうか。

この技術の導入を取り巻く各国の動きを解説します。

目次

  • スピード違反を防ぐ「インテリジェント・スピード・アシスト(ISA)」とは?
  • 「制限速度を守らせるテクノロジー」がEUと米国に導入される

スピード違反を防ぐ「インテリジェント・スピード・アシスト(ISA)」とは?

インテリジェント・スピード・アシスト(以下、ISA)とは、ドライバーが既定の速度制限を遵守できるよう導入された自動車テクノロジーです。

車載GNSS(GPSなど)や高精度地図データ、さらには道路標識をカメラで認識する機能を組み合わせて、リアルタイムで制限速度を把握。

現在の走行速度と照らし合わせてドライバーにフィードバックを送る仕組みです。

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スピード違反を防ぐインテリジェント・スピード・アシスト(ISA) / Credit:Canva

具体的には、まずカメラ映像やデジタルマップを解析して「この道路は時速何キロまでか」を車載エンジン制御ユニット(ECU)が判断し、速度情報を常時モニタリングします。

そして許容速度を超えそうになると、視覚や聴覚によるアラートでドライバーの注意を喚起します。

さらにアクセルペダルに抵抗を与える方法によって減速を促すこともあります。

最も強力な機能としては、エンジン出力を抑制して速度を物理的に制限するというもの。

これにより、意図してアクセルを踏み込んでも速度が上がらなくなります。

この技術の最大の利点は、まず速度超過が要因となる衝突事故を30%、死亡事故を約20%減少させる可能性があるということです。

また一定速度を維持することで燃費効率の向上やCO₂排出量の削減といった環境面のメリットも期待できます。

一方で、標識認識の誤動作やGNSS情報の誤差によって誤警告や誤作動が発生するリスクがあり、ドライバーが過度な介入と感じた場合にはシステムをオフにしてしまうおそれがあります。

既存車両への後付けに関する法整備が十分でない国や地域では普及に時間を要する可能性もあるでしょう。

それでも、このISAは近年、急速な広がりを見せています。

「制限速度を守らせるテクノロジー」がEUと米国に導入される

欧州連合(EU)では、2019年に定められた一般車両安全規則に基づき、2022年7月から新型式モデルの車両へISAの装備が義務付けられました。

さらに2024年7月にはすべての新車への拡大が実施され、市場に出る新車は事実上すべて速度管理機能を備える体制が整いました。

これらの規則では、ドライバーが必要に応じてISAシステムを解除できる機能の搭載を必須とし、安全性と利便性の調和を図っています。

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EUとアメリカでISAの導入が進む / Credit:Canva

一方、アメリカでもスピード違反者へのISAの搭載を認める法案が可決され始めています。

実際、バージニア州では2025年春に、時速100マイル(約160km)超の速度違反ドライバーを対象に、後付け可能なISA装置の装着を要求できる法案が可決されました。

この装置はアクセルペダルへの物理的な制限をかけ、速度超過を事実上不可能にするものです。

このような法案は、すべての車やドライバーへのISA導入を強制するものではなく、スピード違反者だけを対象とするため、人々には受け入れやすいかもしれません。

現在、カリフォルニア州やメリーランド州など他州でも同様の法案導入が検討されており、米国内での展開も加速しています。

今後は、EUの義務化モデルと米国の後付けモデルが相互に影響し合いながら、既存車両への普及や国際的な規格調整が進むことが予想されます。

では、日本でもいつかISAの搭載が義務化されるのでしょうか。

その可能性は否定できません。

いずれにせよ、現在のEUやアメリカにおけるISA導入の動きは、私たちにも大きな影響を及ぼすことでしょう。

全ての画像を見る

参考文献

Briefing: Intelligent Speed Assistance (ISA)
https://etsc.eu/briefing-intelligent-speed-assistance-isa/?utm_source=chatgpt.com

Intelligent speed assistance (ISA) set to become mandatory across Europe
https://road-safety-charter.ec.europa.eu/resources-knowledge/media-and-press/intelligent-speed-assistance-isa-set-become-mandatory-across

Virginia will use technology to slow chronic speeders’ cars—and other states are rushing to join in
https://www.fastcompany.com/91323835/virginia-will-use-technology-to-slow-chronic-speeders-cars-and-other-states-are-rushing-to-join-in

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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