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バナナを食べる方が「頑張って塩分を減らす」より血圧が下がるかもしれない


カナダ・ウォータールー大学の研究によると、減塩よりもカリウム摂取が血圧を下げるのに効果的であることが明らかになりました。カリウム摂取は特別なサプリや高価な食材を必要とせず、バナナやほうれん草、サツマイモ、アボカドなど身近な食材で十分です。ただし、腎臓疾患のある方や尿管結石を経験した方は医師への相談が必須です。この研究はコンピュータシミュレーションに基づいており、今後の臨床試験が期待されていますが、現段階でもカリウムの摂取増加を日常生活に取り入れることは効果的です。

健康診断で血圧を指摘されてから、減塩に励んでいる人も多いかもしれません。

スーパーでも「減塩〇〇」と書かれた商品が並び、塩分控えめな食生活を意識するのが今や当たり前になっています。

しかし、塩を減らすことばかりに気を取られていませんか?

実は最近の研究で、「無理に減塩をする」より「カリウムを摂る方が有効」という意外な事実が示されました。

しかもカリウムを摂るために特別なサプリや高価な食材を用意する必要はありません。身近にある「バナナ」でもいいと言うのです。

ただし、カリウムと聞いて不安になる方もいるでしょう。実際、カリウムは尿管結石のリスクと関係する場合があるため、結石の経験者は注意が必要です。

その点にも配慮しながら、この記事では誰でも実践できる血圧ケアの最新知識をご紹介します。

この研究は、カナダ・ウォータールー大学のMadeline M. Stadt氏とAnita T. Layton氏によって行われ、2025年3月に米国の学術誌『American Journal of Physiology –Renal Physiology』に掲載されています。

目次

  • 無理して減塩しなくてもいい?カギはカリウム
  • バナナで血圧ケア?今日からできる簡単カリウム習慣

無理して減塩しなくてもいい?カギはカリウム

Credit:canva

「カリウムを多く摂ると血圧が下がる」という説は、実は今に始まった話ではありません。

1970年代以降、疫学調査や動物実験などを通じて、カリウム摂取と血圧低下の関連は科学的に指摘されてきました。

塩分(ナトリウム)を多く摂ると血圧が上がる一方で、カリウムを多く摂るとこの影響を和らげるということ自体には、以前から観察報告があったのです。

しかし、これまでの研究の多くはあくまで観察的な結果にとどまり、カリウムが具体的にどのような生理的メカニズムで血圧を下げるのか、あるいは男女間でその効果に違いがあるのか、といった点については十分に解明されていませんでした。

特に男女間の性差の影響については、これまでの多くの医学研究で、男性は女性に比べて高血圧のリスクが高く、また塩分摂取による血圧上昇にも敏感であることが知られているため重要なポイントでした。

実際、周囲を見回しても男性のほうが血圧の問題を抱えているケースが多いと感じる人は多いかもしれません。

このように昔からよく聞く説や問題であっても、中身には謎が多いというケースは多々あります。

そのため、この課題に対してカナダのウォータールー大学(University of Waterloo)の研究チームは、より踏み込んだ科学的検証を試みました。

彼らは、腎臓、心臓、血管、自律神経、ホルモン系(RAAS)といった血圧調整に関わる主要な生体システムを網羅した数理モデルを構築し、さらに男性と女性それぞれの生理的特性を反映させた個別モデルを作成して、カリウム摂取が血圧に与える影響を高精度にシミュレーションしたのです。

特に注目したのは、男女間でカリウムの効果に違いが生じるかどうか、またその違いがどの生理機構によって説明できるか、という点でした。

今回の研究では、既存の生理学研究から示唆されていた、閉経前の女性は男性に比べて、腎臓におけるナトリウム再吸収の抑制、血管拡張作用を持つ一酸化窒素(NO)の豊富さ、さらにレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の働き方の違いによって、塩分負荷や血圧変動に対して耐性が高い可能性がある、という仮説を取り入れ、このモデルに組み込んで検証を行いました。

シミュレーションの結果は、興味深いものでした。

カリウム摂取を増やすと、男女ともに血圧は低下しましたが、男性の方がその効果は大きく、女性ではもともと血圧変動に耐性があるため、低下幅はやや小さいことが示されましたのです。

この成果の意義は、単なる経験則や観察に基づく推測を超えて、血圧調整に関わる生理メカニズムを数理的に再現し、科学的な裏付けを持って「なぜカリウムが血圧に良いのか」を初めて体系的に示した点にあります。

しかも性差を考慮することで、男性と女性で推奨されるアプローチが微妙に異なる可能性も見えてきました。

そのため研究チームはこの研究成果を、一般の人にもわかりやすく伝えるために、「バナナやブロッコリーをもっと食べたほうが、減塩を頑張るより効果があるかもしれません」と語っています。

この発言に、海外のネット上では「バナナ業者から資金提供を受けたの?」と冗談交じりにツッコまれていますが、こうした身近なカリウムの多い食品を意識的に摂ることは、特に男性にとって有効となる可能性がありそうです。

この提案にはきちんとした科学的根拠があり、高血圧に悩む人は特に意識して取り言える価値が十分にあると言えるでしょう。

バナナで血圧ケア?今日からできる簡単カリウム習慣

Credit:canva

では、具体的にカリウムをどうやって増やせばよいのでしょうか。

実は、特別なサプリメントを購入したり、高価な健康食品に頼る必要はありません。

私たちの身近な食材の中に、十分なカリウム源は存在しています。

例えば、

  • バナナ(1本で約360mgのカリウム)
  • ほうれん草(おひたし1皿で約400mg)
  • サツマイモ(中1本で約500mg)
  • アボカド(半個で約500mg)
  • 枝豆(小鉢1杯で約450mg)
カリウムが豊富な食品
カリウムが豊富な食品 / Credit:canva

これらを普段の食事に少し意識的に取り入れるだけでカリウム摂取量を自然に増やすことができます。

特にバナナは、朝食に1本添えたり、外出先での小腹満たしに使ったりと、手間をかけずに取り入れられる点が魅力です。

また、枝豆やサツマイモのように間食としても楽しめる食材を選べば、無理なく続けることができるでしょう。

そのため研究チームはこの研究成果を一般の人々にもわかりやすく伝えるため、インタビューで「バナナやブロッコリーをもっと食べたほうが、減塩を頑張るより効果があるかもしれません」と語っています。

ただし、注意点も忘れてはいけません。

腎臓に疾患を抱える方や、過去に尿管結石を経験した方は、カリウム摂取を増やす前に必ず医師に相談してください。
カリウムは腎臓で排泄されるため、腎機能が低下していると血中カリウム濃度が危険なレベルに上昇することがあります。
また、体質によってはカリウムの摂取増加が尿管結石のリスクを高める場合もあり、経験者にとっては再発防止の観点から慎重な判断が求められます。

さらに、ここで一つ重要な注意点があります。

今回紹介したウォータールー大学の研究は、ヒトを対象とした臨床試験ではなく、コンピュータシミュレーションによる解析に基づいています。

このシミュレーションモデル自体も、ヒトの生理データを直接基盤にしたものではなく、動物実験(主にラットのデータ)を人間向けにスケーリングしたものを使用しています。

そのため、今後はヒトを対象にした臨床試験による検証が求められる段階です。

とはいえ、今回の研究は従来の「カリウムが血圧に良い」という経験則を超え、性別による違いも含めた科学的な裏付けを持つという意味で、きわめて価値の高いものです。

また安全に、無理なく、血圧上昇の対策を日常生活に取り入れる方法として、十分な意義があるでしょう。

慢性的な健康問題に対する提言として、悪影響の心配はなく、誰でも簡単に日常で試せるというのは重要なことです。

明日の買い物から、バナナやほうれん草をひとつ多くカゴに入れてみませんか?

小さな工夫が、将来の大きな健康につながるかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

High blood pressure? Eat more bananas
https://uwaterloo.ca/news/media/high-blood-pressure-eat-more-bananas

元論文

Modulation of blood pressure by dietary potassium and sodium: sex differences and modeling analysis.
https://doi.org/10.1152/ajprenal.00222.2024

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部

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