毎日何気なく行くトイレ。
しかし、あなたの便のリズムは本当に適切でしょうか?
ワシントン大学(University of Washington)の研究チームは、1400人以上の健康な成人を対象に便通と健康状態の関連を調査し、最良な排便の回数を見出しました。
また、便秘や下痢が続くと、腎機能や肝機能の低下と関連する可能性があることも示しました。
研究の詳細は、2024年7月付の『Cell Reports Medicine』誌に掲載されました。
目次
- 1日に最適な排便は1~2回!便秘や下痢には要注意
- 便のリズムを整えるための習慣
1日に最適な排便は1~2回!便秘や下痢には要注意
研究では、1400人の健康な成人の参加者から排便や腸内環境、ライフスタイルに関する様々なデータを取得・分析しました。
その際、参加者の便の頻度は、「便秘(週2回以下)」「低正常(週3〜6回)」「高正常(1日1〜3回)」「下痢(1日4回以上)」の4つに分類されました。
そして分析の結果、排便の頻度は生理機能と健康に深い関係があると分かりました。
特に、排便の頻度が1日に1回から2回の人は、健康面で最良の結果を示していました。
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では、排便の頻度に問題があると、どうなるのでしょうか。
研究では、便秘の人は腎機能が低下しやすく、下痢が頻繁な人は肝機能の低下と関連していることが判明しました。
特に便秘の人は、腎臓に負担をかける微生物由来の毒素「3-インドキシル硫酸(3-IS)」が血液中に増加していました。
便が腸内に長くとどまると、腸内細菌が得られた食物繊維を使い果たし、代わりにタンパク質を発酵させて毒素を生成するのです。
この物質は腎不全のリスクを高めることが知られており、 慢性的な便秘が腎臓病の原因になり得るという警鐘が鳴らされています。
一方、下痢が多い人でも、腸内細菌のバランスが乱れ、肝臓の機能低下を引き起こす有害物質が血中に増加していました。
そして1日に1回か2回の排便は、腸内の老廃物を適切に排出し、腸内環境を最適な状態に保つために重要です。
適切な排便回数を維持することで、腸内細菌がバランスを崩さず、有害物質の吸収を防ぎ、腎臓や肝臓の負担を軽減する効果があると考えられています。
腸は、全身の健康と密接に結びついているのです。
では、便通を安定させ、健康を保つにはどうすればよいのでしょうか。
便のリズムを整えるための習慣
便秘や下痢は腎臓や肝臓に負担をかけますが、この問題を改善することは可能です。
便秘が続いた人が食生活を見直し、水分を意識して摂るようにしたところ、腎機能の数値が改善した例も報告されています。
また、頻繁な下痢を改善するために発酵食品を取り入れたところ、肝臓の状態が良好になったケースもあります。
では、便通を安定させるにはどうしたらよいのでしょうか?
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最も効果的なのは、 生活習慣を整えること です。
食事の面では、 食物繊維を意識的に摂る ことが重要です。
野菜や果物、全粒穀物、豆類などをバランスよく取り入れることで、腸内環境が整いやすくなります。
腸内環境を整えるために発酵食品を食事に取り入れることも大切です。
また、 水分補給も欠かせません。
水をこまめに飲むことで、便の硬さを調整し、スムーズな排便を促せます。
特に朝起きてすぐにコップ一杯の水を飲むと、腸の動きを活性化させる効果が期待できます。
さらに、 適度な運動 も大切です。
ウォーキングやストレッチを取り入れることで、腸のぜん動運動が活発になり、便秘の予防につながります。
ある60代の男性は、毎朝20分の散歩を習慣にしたところ、長年の便秘が解消されました。
加えて、ストレス管理も重要なポイントです。
腸と脳は密接に関係しており、ストレスが腸内環境を乱すことがあります。
リラックスする時間を意識的に作ることが、腸の健康を守るカギとなります。
今回の研究から、 便通は単なる「お腹の調子」ではなく、腎臓や肝臓の健康にまで影響を与える重要な要素であることが明らかになりました。
「便秘くらい大したことない」「下痢なんてすぐ治るだろう」と思って放置するのは危険かもしれません。
日々の便の状態をチェックし、 食事、運動、水分補給、ストレス管理などの生活習慣を見直すことで、健康的な腸内環境を維持することができます。
「朝食に果物を加えてみる」「散歩の習慣をつける」など、できることから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献
Your Poop Schedule Says a Lot About Your Overall Health, Study Finds
https://www.sciencealert.com/your-poop-schedule-says-a-lot-about-your-overall-health-study-finds
元論文
Aberrant bowel movement frequencies coincide with increased microbe-derived blood metabolites associated with reduced organ function
https://doi.org/10.1016/j.xcrm.2024.101646
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部