不眠症は深刻な健康問題の一つです。
特に年齢を重ねると、睡眠の質が低下し、入眠までに時間がかかるだけでなく、夜間に何度も目が覚めることが増えます。
タイのマヒドン大学(Mahidol University)の研究チームは、過去に行われたランダム化比較試験(RCT)を網羅的に分析し、筋力トレーニングが不眠症の改善に役立つことを発見しました。
研究の詳細は、2025年3月4日付の『Family Medicine and Community Health』にて発表されました。
目次
- 不眠症に対処する
- 筋トレは不眠症を改善するのに役立つ
不眠症に対処する

睡眠不足はさまざまな健康リスクを引き起こします。
特に高齢者において不眠は一般的な問題であり、約50%が「なかなか寝付けない」「寝てもすぐに起きてしまう」とと感じています。
そのような睡眠の質の低下は、日中の認知機能や身体活動に影響を与え、さらにはうつ症状や生活の質の低下を招くことが知られています。
そのため、不眠症に対する適切な介入が求められています。
近年、運動が睡眠の質を改善する効果があることが注目されていますが、どの種類の運動が最も効果的なのかについては、明確な答えがありませんでした。
今回の研究では、GPSQI(グローバル・ピッツバーグ睡眠品質指数)を指標として、運動が睡眠に与える影響を評価しました。
GPSQIは、睡眠の質を総合的に評価する尺度であり、スコアが高いほど睡眠の質が悪いことを示します。
研究チームは、1996年から2021年にかけて実施された過去の25件(2170人を対象)のランダム化比較試験(RCT)を分析し、各運動が60歳以上のGPSQIスコアにどの程度の変化をもたらすかを検討しました。
筋トレは不眠症を改善するのに役立つ
分析された研究のうち、半数以上(54.55%)は、軽度から中程度の運動強度でした。
また1回あたりの平均運動時間は約54分で、1週間当たり3回の運動が48%、2回の運動が35%でした。
そして分析の結果、すべての運動がGPSQIスコアを改善することが示されましたが、その効果には差がありました。
例えば、ランニング、サイクリング、水泳などの有酸素運動を行った人は、GPSQIスコアが4.36ポイント改善し、睡眠の質が大幅に向上することが分かりました。

そして、筋力トレーニングが最も高い改善効果を示し、GPSQIスコアを平均5.75ポイント改善したことが明らかになりました。
この結果を受け、筋力トレーニングは睡眠の質を向上させる最も有効な運動であると考えられます。
もし、不眠で悩まされているなら、日常生活のルーティンに筋トレを含めると良いかもしれません。
ただし、夜遅くに行うと交感神経が活性化し、寝つきが悪くなる可能性があるため、タイミングには注意が必要です。
また、高齢者の中には、持病ゆえ、筋トレのような運動が健康に悪影響を及ぼす人もいます。
医師に確認しつつ、取り組むことも大切です。
参考文献
All exercise improves insomnia, but some types are better than others
https://newatlas.com/sleep/exercise-insomnia-age-related/
New Research Reveals the Best Exercise for Beating Insomnia
https://scitechdaily.com/new-research-reveals-the-best-exercise-for-beating-insomnia/
元論文
Impact of different types of physical exercise on sleep quality in older population with insomnia: a systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials
https://doi.org/10.1136/fmch-2024-003056
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部