スマートフォンが手放せない現代、あなたも気づけばInstagramやTikTokを眺め続けていませんか?
「SNSには中毒性がある」とよく言われますが、では本当に人間の体に影響を与えているのでしょうか?
この疑問に答えるため、英ダラム大学(Durham University)の研究チームは、SNS使用中と使用後の生理的変化を調査。
その結果、SNS使用中は心拍数が低下し、没入感が高まる一方で、SNSをやめた瞬間にストレス反応が急増するという驚くべき事実が明らかになったのです。
研究の詳細は2025年2月14日付で学術誌『Computers in Human Behavior』に掲載されています。
目次
- SNSを中断すると「体」に変化は起きるのか?
- SNSを中断すると発汗量が増え、ストレス反応が生じる
SNSを中断すると「体」に変化は起きるのか?

「ちょっとだけ」と思ってSNSを開いたはずが、気づけば2時間も経過していた─こんな経験はありませんか?
InstagramやTikTokは、まるで無限に流れる川のようにスクロールできて、私たちを引き込んでしまいます。
しかし、SNSの使用は本当に「中毒」なのでしょうか?
従来の研究では、SNSの長時間使用が心理的ストレスや不安を増加させる可能性が指摘されてきました。
例えば、Facebookを長時間使用すると自己評価が低下し、不安や抑うつ症状が悪化するという報告があります。
その一方で、SNSが「ストレス緩和」になる可能性も指摘されています。
例えば、SNSを使用することでストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑えられるという研究もあります。
このように、SNSは「ストレスを増やす」とも「ストレスを和らげる」とも言われてきました。
しかし、SNSをやめるとどのような生理的変化が起こるのかについては、これまで詳しく研究されていませんでした。
そこで研究チームは、SNS使用中と使用停止後の体の生理的変化を調べることで、「SNSが本当に依存症のような影響を持つのか?」という疑問に取り組みました。
SNSを中断すると発汗量が増え、ストレス反応が生じる
この研究では、18〜30歳のInstagramユーザー54人を対象に、次の3つのフェーズで心拍数と発汗量(皮膚の電気伝導性)を測定しました。
1:スマホでニュース記事を読む(通常時の生理反応を測定)
2:Instagramを15分間閲覧
3:SNSをやめて再びニュースを読む(使用停止後の変化を測定)
その結果、Instagram使用中は心拍数が低下し、発汗量が上昇していることがわかりました。
研究者によると、これは被験者がSNSに強く没入し、興奮と快楽を感じている状態を示していると言います。
ところがSNSの使用をやめた直後に心拍数が上昇した上で、発汗量がさらに増加していました。
これは身体的にストレスや不安感が高まっている状態を指しているのです。
特に、SNS使用後に「ストレスを感じる」と報告した参加者の数が増加し、一部の人は「もっとSNSを使いたい」という渇望感(クレービング)も示していました。

また興味深いことに、「問題のあるSNS使用者(SNS依存傾向が高い人)」と「通常のSNSユーザー」の間で、生理的反応の違いはほとんど見られていません。
つまり、これはSNSが特定の人にのみ依存的な影響を与えるのではなく、誰にでも同じような生理的変化を引き起こす可能性があるということです。
この研究は、SNSが「人間の生理的反応」に与える影響を科学的に解明した貴重な成果です。
SNSを使用している間は脳の報酬系が刺激されて、快楽や興奮が湧き上がりますが、SNS使用を中断した途端にストレス反応や渇望感が起きる可能性が、現代人にはあると考えられます。
これは依存症とよく似た反応です。
ただしSNSは気分転換になったり、社会とつながる有益なツールともなるため、適度に使えば、決して悪いものではありません。
大切なのは使用時間に配慮したSNSとの適切な付き合い方です。
日頃からSNSの閲覧時間が長くなっている方は、セルフタイマーなどを活用して、うまくコントロールするといいかもしれません。
参考文献
Scrolling Through Social Media Has a Unique Effect on Your Body
https://www.sciencealert.com/scrolling-through-social-media-has-a-unique-effect-on-your-body
元論文
The psychophysiology of Instagram – Brief bouts of Instagram use elicit appetitive arousal and attentional immersion followed by aversive arousal when use is stopped
https://doi.org/10.1016/j.chb.2025.108597
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部